セレブたちのスピーチも注目の的 -アメリカの大学の卒業式-
アメリカの5月は卒業式のシーズンです。
大学の卒業式は、だいたい屋外で、とても盛大に行われます。卒業するまでの勉強がとてもたいへんなので、とてもうれしいイベントです。
大学生活を締めくくるビッグイベント
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アメリカの大学では、入学式は行われません。1年度は2学期に分けられ、新学期が始まる9月と1月に入学でき、各学期が15~16週間しかありませんので、入学式だのガイダンスだのとしている時間もそんなにないからです。
卒業式には、家族みんなが参加します。おじいちゃんおばあちゃんも来ます。
卒業生が学長から卒業証書が入った筒(中はからっぽ。最終成績が出てから実際のものを送ってもらいます)を受け取るときは、家族みんなが立ち上がって、やんややんやの拍手です。
人気者は、クラスメートからの拍手喝采を受けます。スポーツ選手などもたいへんな人気です。
人生で最大のお祝いごとの一つが卒業式です。卒業生はみんなガウンにお決まりの帽子をかぶっていますが、家族や友人知人は、T シャツに短パンなんていう人もいます。
大学院生の卒業生には、子どもを抱いている人もいます。
まるでお祭り騒ぎです。みんな黒い服を着てシーンとしている日本の大学の卒業式とはあまりにも違います。
著名人のスピーチは卒業式のハイライト
さて、卒業式で話題になるのはゲストスピーカーです。
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IT業界の有名人は引っ張りだこで、Facebook社CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は母校ハーバード大学に、アップル社CEOのティム・クック氏はマサチューセッツ工科大学(MIT)に招かれました。
ハーバードのライバルであるイェール大学は、IT長者ではなく、2016年のMLBワールドシリーズで優勝したシカゴカブスのオーナーを招きました。
スピーカーの講演料は3~4万ドルほどが相場ですが、無料でスピーチする人も多いようです。でも大物を呼ぶほど、レセプションや安全対策などでとてもお金がかかります。
昨年、ニュージャージー州のラトガース大学がオバマ前大統領を招いたときは、スピーチは無料でしてくれたものの、警備などで143万ドル(約1.5億円)もかかったということです。
それでも大学としては大きなニュースになるし、学生や家族たちも喜ぶので、卒業式には各界からさまざまな有名人を招きます。
大学がその有名人と太いパイプがあるというアピールにもなります。
トランプ大統領がスピーチした大学とは
スピーチのテーマはさまざまですが、今年は政治の話はほとんど出ていないようです。
政治の話をすればどうしてもトランプ大統領の話題になってしまうので、もうみんな、ウンザリなのでしょう(政治議論が好きなUCバークレーなどでは、トランプ批判のスピーチが行われたようですが・・・)。
当のトランプ大統領は、アメリカ沿岸警備隊学校と、驚くなかれバージニア州にあるリバティ大学(Liberty University)でスピーチをしました。
警備隊学校のほうは、安倍総理が防衛大学でスピーチをするようなものですから当然のことですが、リバティ大学って、みんな知ってます? アメリカでは極右で有名な大学なんですよ。
ジェリー・ファルエル氏(テレビ伝道師として有名なファルエル牧師の息子)が学長で、キリスト教右派の代表的な大学です。学生は教会の礼拝に必ず参加しなければなりません。
トランプ大統領は、ほかの大学からお呼びがかからなかったのでしょかねぇ。。。その点、他の政治家はきらびやかですよ。
ペンス副大統領は海軍兵学校と母校のノートルダム大学(インディアナ州の名門です)、ヒラリー・クリントン氏は母校ウェルズリー大学、バーニー・サンダース氏は彼らしく学費が安いニューヨーク市立大学ブルックリン校、バイデン前副大統領はアイビーリーグのコーネル大学と名門リベラルアーツ・カレッジのコルビー大学に、それぞれ招かれています。
スピーチの内容は記憶に残らない?
スピーチのテーマは、現在起こっていることより、宇宙探査といった未来のテーマや、人間はかくあるべきといった永遠の真理について、また楽しいことやおもしろいことが喜ばれるようです。
バージニア大学のある教授は、「だいたい、だれも卒業式のスピーチの内容は覚えていない。自分もたくさんの卒業式に出席したが、スピーチについての記憶がない。土曜日に聞いて日曜日に忘れてしまうんだ」と言っています。
私も、自分自身や息子のためなど、ニューヨーク大学やハーバード大学ほかいくつかの大学の卒業式に参加しました。興奮したことは覚えていますが、たしかにスピーチの内容は何一つ覚えていません。 笑
それでもやっぱり、5月のアメリカでは、大学の卒業式のスピーチやスピーカーの話題で、メディアは賑わうのです。
あなたもアメリカの大学で卒業式を迎えてみませんか?
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。