意外と知られていない! 日本の大学からアメリカの大学に「編入」できること
(2021.2.1更新)
今回はアメリカの大学の「編入(transfer)」についてお話ししたいと思います。
大学から大学への「編入」とは?
日本では、「短大を卒業して四年制大学に編入する」のが一般的な「編入」の考えかたです。
ですから多くの人は、アメリカの「編入」も、「コミュニティ・カレッジ(公立の二年制大学)を卒業して四年制大学に編入する」ものだと思っています。
しかしアメリカの編入とは、「単位をある大学から別の大学に移行する」ことに過ぎないので、短大を出ているかどうかはまったく関係がありません。
アメリカの四年制大学を卒業するために必要な単位は、およそ120単位です。
だいたいこのうち60単位までは、他大学からの単位を認めてくれます。ハーバード大学も2年分の単位を認めます。
アメリカではある四大から別の四大に編入することはまったくめずらしいことではありません。
オバマ元大統領も、トランプ前大統領も、四大から四大に編入しています。
日本の大学生がコミュニティ・カレッジに入学?
しかもアメリカの大学は、日本の大学の単位ですらも認めてくれるのです。
ところが日本の大学では編入が一般的ではないため、日本の大学からアメリカの大学に編入できるということを知らない人もたくさんいます。
日本の大学に在籍した経験があるにもかかわらず、留学エージェントにコミュニティ・カレッジを薦められて、単位を認めてもらうこともなく、コミュニティ・カレッジに1年生として入学するなんていうケースも後を絶ちません。
本当はコミュニティ・カレッジですら、他大学の単位を認めてくれるのです。
日本人に大人気のDe Anza CollegeやFoothill College、Edmonds Community Collegeなども、他大学の単位の査定をしてくれます。
したがって日本の大学に1年でも行っていれば、コミュニティ・カレッジに編入できる可能性が大きいのです。
にもかかわらず、願書に「新入生として出願する」という項目にチェックを入れてしてしまうので、単位の査定もされないまま1年生として入学してしまうのです。
コミュニティ・カレッジのAdmissions Office(入学審査を行うオフィス)も仕事が雑なことが多く、日本の大学の成績証明書などはきちんと見てくれません。
アメリカの大学の学年はこう決まる
アメリカの大学では、学年は取得単位数に応じて決まります。例を挙げましょう。
すなわちアメリカでは、1年終えたら2年生になるというのではなく、たとえば30単位以上もっているから2年生ということになるのです。
単位取得のルール
アメリカ人の学生には、週に1日とか2日だけ大学に行って、少しずつ単位をとって、最後の2年だけフルに授業をとって卒業する人もいますし、最近はオンラインの授業が増えているので、オンラインでまず30単位取得してから本格的に大学に行くという人もいます。
卒業までに必要な120単位のうち、初めの60単位くらいは一般教養科目です。
残りの60単位は専攻科目と選択科目ということになりますが、専攻はメジャーと呼ばれる第一専攻と、マイナーと呼ばれる第二専攻(副専攻)があります。
第一専攻は30~45単位、第二専攻は15~20単位です。「ダブルメジャー」といって、2つの第一専攻をとることもできます。
たとえば音楽と物理学をダブルメジャーにするなんていうのもありです。また第一専攻だけを選んで、あとは全部選択科目として履修してもかまいません。
日本の大学で経済学部だった人が、アメリカの大学に編入してコンピュータ・サイエンスを専攻してもOKです。
より効率的に単位を移行するために
アメリカの大学にはRegistrar’s Office(レジストラーズ・オフィス)といって、日本の教務課のような部署があり、そこで世界の大学の単位を査定しています。
認めてもらえる単位が少なければ、そのオフィスと入学後に交渉することもできます。
そうはいっても、アメリカの大学の単位の仕組みがわかっていないと交渉もできません。
必修科目のルールや専攻の選びかたなど、各大学のホームページに詳しく書かれていますので、事前によく読んで理解しておくことがとても大切です。
一般に州立の大規模大学ほど科目履修のルールにうるさく、交渉の余地がありません。小さな私立大学のほうが、いろいろと大目に見てくれます。
最近は、「アメリカの大学への編入留学を考えているので、日本の大学の科目のとりかたをアドバイスしてほしい」という相談も増えていて、留学カウンセリングもやりがいがあります。
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。