留学するのに“目的”を求めること自体がくだらないワケ

「目的なんかわからない」のがホンネ

留学するには目的をもっていなければならない、とか、何の勉強をするんだとか、最低限これだけの英語力が必要だとか、果ては留学のメリット・デメリットまで、、、、、、。留学するとなると、周りは何かとうるさいことです。

そもそも日本の高校や大学に進学するのに、いちいち目的なんか聞かれないし、「中学校で義務教育を終えた僕が、何のために高校に行くのかわからない」なんて言おうものなら、両親や先生から怒鳴られます。

大学進学だって、本当は理系か文系かもよくわからないし、ちょっと数学ができたから理系と言われ、いざ入試となると文系も受けたりします。そもそも一つの大学のいくつもの学部に願書を出せるようになっているではないですか。

学部というより、大学名や大学の偏差値で大学を選んでいるわけでしょう。最近では、理系のよくできる者は、みんなとりあえず医学部を受けるっていうではないですか。

あるテレビ番組で、若い勤務医が「なんで医者になったのか」質問されていましたが、「ウーン、なんでかな・・・」と答えに窮していました。学校や塾や親から言われたから医学部を受けたなんて人、けっこういるんじゃないでしょうか。

明日提出のレポートが真っ白!――退学寸前のスリルに満ちた留学体験

まあ、就職に至るまでみんなと一緒のことを一斉にすることに何の疑問もなく”、“何も言われない”という日本で、留学になるとなぜか突然に理由が必要になるんです.

私自身が留学したときの理由は、ただ皆と違うことをしたかったから。

当然まだ自分が何を目指しているのかなんて全くわからなかった状態でした。

でも、想像してみてください。留学くらいスリルに満ちたものはないじゃないですか。

クラスメイトはアメリカ人。英語“で”勉強しなければならない。食事はマズい。気候も違う。すべてが違う。自分で考えて行動しなければ何も出来ない。助けてももらえない。

英語力だって英検の3級か準2級程度だったと思いますから、頼りは目だけです。目で見て考え行動する以外に方法もなかったですよ。

明日レポート提出しなければならないのに、目の前の紙が真っ白のままという夢をいまだに見ます。当然レポートの提出が出来なければ成績評価は下がるし、最悪退学コース。(※アメリカの大学は成績が平均を2度ほど下回るとすぐに退学になります。)

どのくらい大変かわからなければ、学校から帰った夕方くらいから英語でA4用紙1枚1000文字のレポートを3つ書いてみてください。

内容は「今日友だちと話して思ったこと」、「学校の授業で思ったこと」、「今日読んだ漫画や本の感想文」などなんでもいいです。

3つ書き終わる頃にはきっと日の出を迎えてることでしょう。

そんな大変なことを毎日やらなきゃアウト、つまり退学になるから必死にやるんです。学校生活だって片言しかしゃべれないから、入学最初の頃はともかく、しばらくすると誰も相手にしてくれなくなるんです。だから毎日積極的に人と会話するよう“話題”を準備するんです。だから会話のための英語も勉強するようになります。

環境の激変って、本当に人を変えるんです。日本の学校では教科書を開いたらすぐ居眠りするような私が、メチャクチャ勉強に集中するんです。それも英語で書いてある教科書ですよ。だらだらした生活で時間にルーズだったのに、アメリカでは寝る時間もキツくなるから生活スケジュールもきっちりします。もちろんその他、掃除も洗濯も人間関係も!

振り返ってみれば、とにかくビックリするくらい人間がきちんとしちゃうんですよ。もう、一人立ちしている立派な社会人みたいなくらい。でも、そうでなければ留学自体やっていけなくなるので。

逆に言うと、それくらい生きる環境に激変がない限り、変われないという人間も多いんじゃないでしょうか。

留学とは目的を見つけるチャンス

そんな大変な留学にはある程度の英語力が必要だという意見、山ほど聞きます。でも英検協会によると、高校3年生の9割が準2級か3級なのだそうです(目標は準1級だそうです)。じゃあ普通の子たちが留学する意味はないのか、というと、もちろんそんなことはありません。

どんな人も環境の激変によって自分自身が変わることがあるのです。留学はそういった一つのチャンスなんです。

一度でいいからアメリカの大学にチャレンジしてください。ほとんどは、頭が狂うかと思うくらい毎日勉強して、周囲の声に耳をすまして、頭をフル回転させて生活して、いつのまにかに「私、こんなに勉強する人だったかしら?あれれ、いま私、心理学の本を英語で読んでる!!??」と驚きます。

目的なんていうものは、そういう生活の中でそれぞれが見つけていけば良いのです。そもそも親の庇護のもとでの温かい生活や、暗記とテクニックを駆使する受験勉強で人生や学問の目的なんかそうそう見つかるものではありません。

毎日これでもかと思うくらい本気で勉強して、一生懸命に考えながら生活して、時間を惜しむくらい精一杯生きて、そんな中で目的というか、いわゆる「個性」や「自分が本当にやりたいこと」が見つかるものではないのでしょうか。



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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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