大学留学で、学生が陥りがちな交換留学と認定留学の罠

留学のことは、日本の大学に入ってから考えればいい?

私の大学・大学院留学講演会(※毎月、東京とオンラインで開催しています 詳しくはコチラ)に参加する人の中には、大学生がとても多くいます。それも1年生や2年生が中心です。大学留学のことを知りたくてやってくるのですが、とくに彼らにとって関心が高いのが、編入留学と、交換留学、認定留学です。

さて、日本の高校は、大学受験一色です。受験こそが人生のすべて、という雰囲気すらあります。大学は、人生の通過点の一つに過ぎませんが、受験で人生すべてが決まるかのように、親も先生も本人も思っています。

ですから留学のことも、まず日本の大学に入学してから考えればいいと思っています。たしかに、どの大学も国際化をうたっていて、たくさんの留学プログラムを用意していますし、気の早い学生は、入学してすぐに留学のことを調べ始めます。

今回は、よく質問される交換留学認定留学について詳しく紹介していきます。

(交換留学についてより詳しくはこちらにまとめています。
 » 【参考記事】交換留学とは? 卒業をめざす大学留学との違いと注意点

日本の大学の「交換留学」とは?

「交換留学」という大学の目玉商品は、冷静に見てみると、なかなかエントリーがむずかしいのです。成績もさることながら、TOEFL®テストの点数も高いものが求められます。平均的な同級生よりかなり高いレベル、英検1級程を要求されます。したがって、在学生のすべてが交換留学できるわけではありません。実際に留学できるのはほんの一握りです。さらに交換留学はだいたい1年です。

この交換留学以外にもいろいろな留学ブログラムが用意されていますが、ほとんどが英語留学(語学留学)です。これは、アメリカの大学に在籍するものではありません。この英会話スクール自体が大学内の教室で行われることもあるので、あたかも大学に在籍するかのごとく勘違いされやすいので注意が必要です。

認定留学の落とし穴

さて、認定留学はどうか、となると、どういう仕組みになっているのやら、よくわかりません。その理由は後ほど記述します。とりあえず、一般的には「日本の大学に在学中に、留学先を自分で選んで1年間留学し、その間に取得した単位を、帰国後に日本の大学に認めてもらう」というのが認定留学のシステムです。

しかし、下記にあるようなケースで認定留学の"罠"にはまる場合があります。

Aさんは認定留学をしたいのですが、費用が足りず、アメリカの大学から奨学金を得たいと思っています。ところが日本の大学の先生からは「二重在籍になるといけないので、留学希望の大学に『1年だけ留学します』と伝えなさい」と言われました。
しかし、アメリカの大学は"1年しか学ばない人"に奨学金は出しません。卒業するという前提で、留学先の大学に「編入」をして、奨学金をもらって、1年でやめるのは本人の自由です。でも、はじめから1年だけという話では、奨学金どころか、入学すらさせないという大学もあります。

また1年間の留学というのは、卒業を目的としない学生ということで、アメリカではNon-Degree Studentと呼ばれています。この学生には、少し不利なところがあって、科目を登録するときにDegree-Seeking Student(卒業を目的として学んでいる学生)が優先されるため、人気のクラスを受講できないことがあるのです。

そしてここからが一番重要です。認定留学は、アメリカの大学で取得した単位を、日本の大学が認めるというものですが、日本のどの大学もはっきりした規定がありません。また、だれが責任をもって単位を認めるのか(※一応、教授会ということになっていますが)はっきりしていないのです。

大学2年生のときに留学するのなら、日本の大学の2年生が履修する科目と同じか、それに近い科目をとらなければ、単位は認められません。したがって、留学する前に履修科目が該当するかどうかを確認しておくことが大切です。

また、3年生になると、日本の大学では専門的な授業をとります。仮に法学部なら一般教養でなく、法律専門の授業をとっている時期です。しかし、アメリカでは法学専門の授業は、基本的に大学院にしかありません。したがって法学部で認められる科目をそもそもとれないケースもあるのです。

つまり、せっかくの認定留学なのに単位が認定されない可能性が山ほどあるということです。

日本の大学もいろいろと「国際化」に取り組んでいますが、その実態は大学によってさまざまで、ちょっと2週間くらい語学を学ぶ程度のものも少なくありません。制度を変えるのも時間がかかり、どんどん世界の動きから取り残されているような気がしますねぇ。

アメリカの大学を卒業したい、本格的な英語力や国際社会でのサバイバル力を身に着けたいという方は、今の大学からの編入留学や、一般的な大学留学という道もありますので、そちらも調べてみることをおすすめします。

交換留学のメリットやデメリットについて詳しくは、こちらも参考にしてください。
» 【参考記事】交換留学とは? 卒業をめざす大学留学との違いと注意点

 

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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