返済不要!留学生が知っておくべき奨学金あれこれ
値上がりを続けるアメリカの学費
アメリカの学費が値上がりを続けています。
以前からハーバード大学などは、そのうち天文学的数字にまで上がるのではないかと言われていましたが、現在ではなんと70,000ドル(※約700万円)です。
ちなみに、アメリカの大学は寮生活が基本なので、費用は“Tuition, Room and Board”と呼ばれ、「学費と寮・食費」がセットで提示されます。つまり生活費込みの金額となっているわけですが、それでも高額です。
ハーバード以外の大学、例えば西海岸の州立大学で有名なUCLAを見てみると、州外在住の人は61,000ドル、州内在住の人は27,000ドルになっています。(※州立大学は州の税金で運営されていますので、州内在住の人が入学基準や学費などの面で優遇されます。留学生は州外扱いになります。)
アメリカの一般家庭の平均年収は現在51,000ドルくらいですから、子どもが2人もいれば、ちょっとやそっとでは大学に行けないということになります。なので、アメリカ人は当然のごとく、奨学金を得たりローンを組んだりして、大学に行こうとするのです。
奨学金の申請
アメリカ人が申請する奨学金は二種類あります。国からもらう返済不要の奨学金か、将来的に返済が必要なローン制度です。
世帯年収が何千万円もあるという裕福な家庭では必要ないものですが、多くの家庭は、FAFSA(Free Application for Federal Student Aid)という、アメリカ教育省に提出する書類と、CSS PROFILEという、College Board(非営利の大学進学情報・テスト機関)に提出する書類を用意します。
これらの書類には親の年収から自動車ローンの支払いに至るまで、細かい質問がいくつもあって、それを基にいくら位の奨学金を出せるかが算定され、本人の志望大学に連絡されます。
大学側は、出願者の成績やエッセイ、推薦状などをもとに、まず入学させることを決めた上で、合格者の経済状況を考慮します。その際に、このFAFSAや CSS PROFILEの内容を参照するのです。
奨学金と学生負担額の具体例
大学の入学管理担当者は、国から貰える奨学金に加えて、将来本人が返せる可能性のあるローンを算出します。もちろん合格者の親が出せる金額も考慮に入れて、さらには大学側から出せる奨学金も決めます。
例えば次のようなものです。
この状態が在学中の4年間続いた場合、返済不要のものだけで19,000ドル×4年=76,000ドル、つまり約760万円以上の節約となります。こういう奨学金制度をあたり前のように活用してアメリカの学生は大学に通うのです。
大学が「この学生を入学させたい」と思えば奨学金の額も上がる
大学によっては、大学側が出せる奨学金の上限があります。成績がむちゃくちゃ良くて、ぜひ入学させたい学生だと、大学からの奨学金の額がもっと大きくなります。
親が卒業生だったり強い推薦状があったりすると、その大学に入学する可能性が高いので、大学は奮発します。すると先ほどの例が次のように変わります。
奨学金を申請していない学生でも、大学側がぜひ入学させたいとなると、大学がポンと奨学金を出すケースもあります。
逆に大学からの奨学金のオファーが少なくても、あるいはそれがなくても、どうしてもその大学に行きたくて、かつお金がない場合は、国や州のローン以外に私的なローンを借ります。ただし、返済履歴などがチェックされる上に、金額の上限もあります。
留学生でも奨学金のチャンスはある
私たち留学生にはFAFSAやローン型の奨学金は適用されません。奨学金を得るにはCSS PROFILEの提出や、留学生専用の申請書の作成が必要です。
CSS PROFILEは大学によって考慮される情報が異なるので作成には注意が必要です。また、留学生専用の申請書作成には専門の知識が必要となります。
当研究所では奨学金の申請も進学指導、留学準備の一つとして考え、留学カウンセラーの指導の下、生徒たちが奨学金を申請しています。その結果、毎年約90%の生徒が奨学金を獲得し、留学費用の軽減に成功しました。
言うまでもないことですが、アメリカ人の学生達が当たり前のように活用している奨学金、私たち留学生もぜひ活用すべきなのです。
昨今では円安がますます進み、留学費用が高騰しています。
そこで、当研究所でカウンセリングにお越しいただいた方に奨学金の申請方法や、個人の適性・レベルに合わせて奨学金が取りやすい大学などを紹介しています。留学費用を軽減することで、より多くの方に留学を実現するチャンスがあればと心より思います。
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。