ハーバード大学に合格するための受験勉強をする人が99%落ちる理由

(2021.1.27付記)

東大受験が失敗しそうになってきたからハーバード

留学を相談されるかたのうち、ハーバードへの進学を希望する人は本当に多いのです。

しかも、そういう学生に限って、いろいろとそれなりの理由をつけてきますが、よくよく話を聞いてみると最終的には「東大に入学できそうにないから・・・・」というタイプが少なくありません。

大体こういう学生は、小中学校ではちょっと勉強ができてそれなりに偏差値の高い高校に進学したけれど、学年が上がるにつれて東大はおろか早稲田・慶應も危なそう……というのが典型です。

東大の定員は約3,000人。いくら偏差値が高い高校でも、学年でトップ10%くらいでないとなかなか入学できません。

早稲田・慶應にしても、トップ30%くらいでないと可能性が低いでしょう。

偏差値が高く、全国的に「超有名校」といわれるような高校に行っても、多くの高校生は世間でいう一流大学に行くのはなかなかむずかしいものです。

かつての「神童」が一発逆転にかける

そもそも小学生や中学生のときによくできた子どもというのは、親がよほど勉強させたか、塾の指導がよかったのか、他の子どもより少し成長が早かったのか、といった子たちです。

背の低かった子どもが、高校生になって急に背が伸びてきたりするでしょう。

背が伸びたりホルモンのバランスが変化したりするペースが人によってまちまちであるように、勉強がよくできる年齢も、みんなそれぞれ違うのです。

「十で神童、二十歳すぎればタダの人」って言葉があるじゃないですか。

レベルが高いといわれる中学校や高校に行ったばかりに、逆に劣等感に悩まされるということは多いのです。

そこで、かつてはよくできたという高校生たちの目前に、「ハーバードに行く」という目標が出てくるわけです。

みんなと違うところで、自分を賭けようということです。なんとか、どこかで「一発逆転を」ということですね。

ハーバードに合格する学生とは

でも、残念なことにアメリカの大学は一発勝負というのがないのです。

まずアメリカの大学は一斉の入学試験がありません。

出願者たちのいままでの長い成長過程をじっくり見て合否を決めるというシステムです。

もっとも重視されるのが、高校の成績。

大学に出願する際には、願書と共に高校4年間(※日本の小中高は6・3・3年制ですが、アメリカは6・2・4または8・4というように4年制の高校が多い)の成績表を提出します。

そして、ハーバード大学に合格した学生のGPA(※)は、3.75以上が93%、3.5〜3.74が5%、3.25〜3.49が2%です(2020年度。College Boardより)。

日本でいうと、中学3年生から高校3年まで5段階評価の成績ですべての科目(※主要教科のみでなく、保健体育や美術を含めたすべての科目)の評定平均が4.75以上ということになります。

簡単にいうと、成績が基本的にオール5。もし4があっても1年に1つか2つくらいということです。

(※)GPA:Grade Point Averageの略で「成績の平均値」のこと。最高は4ポイント。アメリカの高校における3.5のGPAは、日本の高校の5段階の評定平均で4.5に相当する。アメリカの大学が合否を決める際に最も重視するのがこのGPA。

「勉強ができる」だけではハーバードに合格しない

アメリカの大学は、高校のGPA以外にも、さまざまな観点から合否を判断します。

その高校生が、どんな夢を抱いて、どんなことを学び、考え、どのように成長してきたのかを評価するためのエッセー(作文)がその1つです。

ボランティアや部活といった課外活動も評価対象になります。

さらに、周りの先生たちがその高校生をどう評価しているのかを知るために、推薦状も重視します。

面接もあります。

こうしてさまざまな要素を細かくていねいに見て、合否の判断を下すのです。

ハーバードに入りたくて必死で勉強してきて、それだけで精一杯というような高校生はそもそもハーバードはあまり欲しくないのです。だいたいオール5の高校生が世界中から願書を出してくるわけですから、それ「以外」のところで差別化しないと、合格のチャンスがありません。

ハーバードが望む高校生のイメージとは、普段から高校で抜群の成績を誇り、何かしら世界レベルの大会やコンクールで優勝の実績をもつ。

大人顔負けの社会貢献活動などをしていて、そういうことをもっと深く追求するためにしっかり勉強ができる環境を望んでいる。

そんな学生です。

そういった学生はハーバードに入ってからも伸びしろが十分にあり、かつ他の学生にもいい刺激を与えてくれます。

つまり、ハーバードに受かるために「いまからわざわざ勉強をする」高校生ははじめから論外なのです。

「そんな学生どこにいるんだ!?」と思われるかもしれません。そりゃそうです。滅多にいません。

だからハーバードなんですし、日本人だって毎年数名受かるかどうかなのです。

ハーバードに受かるための受験塾

ハーバードをはじめ、アメリカの一流大学をめざして指導する塾が日本にありますが、中3や高1くらいでその可能性のある生徒に指導していると思います。

「その塾を訪ねたら、とりあえず関連会社の英語塾を紹介されて、そこでTOEFL®テスト(※)の勉強をするように言われたので、そのようにしています」という人の相談を受けることもあります。

このケース、要はその塾に体よく断られたわけです。

そもそも、ハーバードはTOEFL®テストやIELTS(TM)といった、英語力を判定する試験のスコア提出を要求していません。

英語はネイティブ並みで当たり前ということです。

テストということでは、SAT®(※)というテストをアメリカの高校生は受けますが、ハーバードに入学している人は90%以上のスコアを取得しているのが当たり前です。

このSAT®の科目はアメリカ人にとっての国語(英語)と数学です。

数学は日本の高校生でも何とかなりますが、そもそも英語が母語に近いレベルでもないかぎり、アメリカ人の国語は勉強すればできるとか、ガンバればできるというレベルではありません。

片言の日本語しか喋れないインドや中国の人が日本の高校に留学してきて、3年後にセンター試験の国語で9割をとれ、というようなものです。

できると思いますか?そもそも日本人ですらセンター試験の国語で9割とるのはむずかしいですよね。

(※)TOEFL®テスト:Test of English as a Foreign Languageの略で、英語を母語としない人が受ける英語力テスト。多くのアメリカの大学が、留学生に対してTOEFL®テストもしくはIELTS(TM)というテストのスコア提出を出願要件としている。

(※)SAT®:アメリカの高校生が受ける標準テスト。ハーバード大学をはじめ多くのアメリカの大学が、出願者の学力を測るためにSAT®のスコア提出を求めている。

レベルに振り回される日本人

私は、この仕事をしていて、有名な学校や偏差値が高い学校、レベルが高い学校というものにずっと振り回されている親子をたくさん見ます。

それも、少子化が進むにつれて、ますますヒドいように思えます。

昔は高校を受験する頃になると、偏差値やレベルを気にし始める家族はそれなりにいたと思いますが、いまや幼稚園ですら、どんな小学校に入れればいいのかといった話題で持ち切りなんですよね。

日本の社会構造がそういうものになっているのはわかりますが、こういうことばかりにこだわっている人を見ると、ちょっと病気のような感じがしてしまいます。

そもそも「レベルの高い大学」が素晴らしい人生を保障してくれるわけでもないのです。

大抵の人は「レベルの高い大学へ行けば有名企業に入社できていい給料をもらえて出世もするだろう」と考えています。

ただ、人間は「好きでもないこと」を「一生続ける」ということはできませんし、嫌いなことを一生続ける人生なんか幸せであるはずがありません。

無理して頑張っても、かならずどこかで限界が来てしまうものです。

学校のレベルにこだわる人ほど勉強が好きじゃない、または、できないもの。

本当に重要なのは「どの有名大学に合格するか」ではなくて「何をする、何を学ぶためにどこに行くか」のはずです。

解散してしまった某アイドルグループみたいですが「ナンバーワンよりオンリーワン」、自分自身の生きかたを見つけるための留学をしてください。

そのためにはまず親子で腹を割って話し合ってみるといいでしょう。

将来自分が、どう生きていきたいのか。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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