留学は日本地図からの脱出 後編 ~発想を切り換えれば道も開ける~

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諦めないことが第一歩

留学したいという意思があるなら、やり方はいろいろ考えられるので、「お金がないから留学できない」なんて聞きたくもない。「親が援助してくれない。それに迷惑もかけられないなどと言うのは、自分に自信がないからお金を口実に諦めているのではないか。留学資金をムダにしない自信があるなら、親のお金をかっぱらってでも留学してもいいと思う。

今の日本では、普通の生活をしている親なら、留学資金ぐらいは出せなくはないから、「アメリカに留学して、こういう人生を歩んでみせる」と自信持って説得するとお金の問題は意外に簡単に解決する。

例えば、親に頼れないと言っている人でも、アメリカで一年半勉強して、あと六カ月で卒業できるが、それには一五〇万円足りないとなったら、はっきり言ってがらっと態度が変わる。親にお金がなかったら、じいちゃん、ばあちゃん、兄弟、親戚、もう誰でもいいから「とにかく一五〇万円貸してくれ、あと六カ月で自分は修士号を取れるんや」と手紙書いて、電話かけて頼む。

親も兄弟も「一年半もがんばって勉強したんだし、この際けちけちせんと卒業させたろ。一五〇万円ぐらい出してやろう。そのほうが賢明だ」となる。お金がない、親も援助してくれないのであれば、お金を貯める計画を立てれば解決する。月給が五〇〇〇円くらいしかもらえない中国の若者が、アメリカに留学しようと計画しても、どんなにひっくり返っても留学できるほどのお金は貯められない。世界を見渡したら、ほとんどの国がそういう状態だ。

今の日本なら働くところもあるし、それに世界一の高給がもらえる。アルバイトの日給にしてもアメリカより日本のほうが高いくらいなのだ。留学生は、勉強する条件でビザが出されているので、学外でアルバイトしながら大学に通うことはできないし、学内のアルバイトは許されるといっても、勉強が大変で、実際にはそんな余裕はない。でも、「お金ないから留学できません。なんて言って諦めるなんてもったいない」と思う。

高校時代に留学しようと決めたら、卒業後、就職してお金を貯める計画を立てる。大学の二部に通いながら貯金するのも一つの方法だ。最近の二部は、勤労学生が苦労して行くという悲壮なイメージはない。

例えば、二部の学校に二年間通って、昼間はアルバイトしてお金を貯める。アメリカの大学は一部、二部に関係なく単位を認めてくれるから、二年間で一般教養の単位を取っておくと、アメリカの大学に三年生から編入できる。

今は一ドル一二〇円そこそこだから、生活費と学費で年間三〇〇~三五〇万円くらいの予算で十分なのだから、三年生から留学して一年分は自分の貯金で、四年生の分を親に払ってもらうとか、あるいは学費ぐらいは自分で払うようにする。

日本の大学に通うお金なら親が出してくれるというので、その予算でアメリカの短大に行きたいという学生もいるが、世の中が高学歴社会になってきている中で、短大卒の肩書きでは将来が不安になる。

不況時には女性の採用から減らす傾向にあるなかで、アメリカの短大卒業では、日本では派遣社員かよくても受付嬢。お金をかけて苦労して勉強して、多少英語をものにしてもそれを生かせる仕事との巡り合いは難しい。

アメリカの短大を卒業して、日本でアルバイトや派遣社員をしてから、お嫁にいけばいいと考えているのだったらそれでもいいと思う。でも留学しようとする子は、どちらかというと世の中の片隅で清く貧しく美しく生きようという発想ではないだろう。

「自分をちょっとアピールしたい、人と違ったことをやりたい、実力相応に評価してもらいたい、あわよくば実力以上に評価してもらって、世の中を渡っていきたい」と考えている。そのためにはどうしたらいいだろうか、何ができるだろうかと考えて留学が候補に上がってくる。

問題が金銭的なことであれば、日本の大学に二年通ってアルバイトしてお金貯めて、親からの援助額を増やしてもらうよう説得する。アメリカの大学に三年から編入して、四大卒として帰ってきたほうが知識も英語も生かせる。親のコンセンサスがどうしても得られないから、日本の大学を受験しようか、留学にしようか迷っているのだったら、二年間は日本の大学に通い、三年生から留学することを考える。

アメリカの大学では日本の大学の単位を認めてくれるので、日本の大学に一年間通うとアメリカの大学の二年生に編入できる。二年生まで行けば三年生に入れるが、その反対は難しい。日本の大学の大半は、アメリカの単位を認めていないからだ。

親が強固に反対するようなら、日本の大学を卒業して働いてから、アメリカの大学院へ留学することにしてもいいだろう。方法はいろいろ考えられるから、おおらかに長い目で柔軟に計画したほうがいい。いずれにしろ、日本とアメリカ両方の大学を経験しておいて損はない。

アメリカは危ない! 何考えているの

日本人は「アメリカに行ったら英語がペラペラになって……」と過大な期待をするか、そうでなければ「アメリカは怖い、殺されへんやろか」と過大に心配する。

アメリカのニュースもハリウッドの映画も、日本中にこれだけ溢れているのに、極端な情報ばかりが横行しているから、留学となると「ニューヨークで鉄砲がパンパンパン」というメチャメチャな情報だけがクローズアップされる。

「あんた西部劇とちゃうのよ。アメリカ人はみんな鉄砲を腰につけて歩いてると思ってるんか」と、アメリカ人がみんな鉄砲を腰にぶら下げて歩いているわけではない、危なくないと説得するが、それでも、たいがいの人は「ホントー?」。

「アメリカは世界一の農業国や、数えたわけではないけど、人間より牛の数のほうが多いくらいなのだ。これがアメリカや」と、地平線の彼方までトウモロコシ畑の写真を見せて「あんたね、日本がどのくらいの大きさか知ってるか。カリフォルニア州ぐらいしかないんやで。アメリカはメチャクチヤ大きいから、地図で見たらニューヨークとか、ワシントンDCなんか点でしか描けん。鉛筆の先やで」と言っても、ピンとこないらしい。

アメリカには人口一万人、二万人の町がたくさんある。私が留学していたミシガン州のマウントプリザントは人口三万で、寮の窓から見えたのは一面の小麦畑。雪が降れば白一色だった。最寄りの大都会といったらシカゴで、高速道路を車で飛ばして一〇時間くらいの距離にあった。

そういうところに住んでる人は、時間とお金をかけてニューヨークまで買い物になんか行けないから、テイファニーだって通信販売をする。通信販売の商品を一日中紹介しているテレビ番組が社会問題を起こしているくらいなのだ。

アメリカが広いことも通信販売が盛んなことも、よく考えればみんな承知しているのだが、それぞれの情報が断片的で点でしかない。全体像をイメージできるように説明して、冷静に考えてもらうと、初めて「そうかあ、なるほど」と納得する。

留学生を送り出す私たちは、アメリカがあまりに田舎だから、むしろ留学生のノイローゼを心配している。学生たちには「写真や映画は一番きれいで、華やかなところを写しているのだから、そんなところがアメリカだと思っていたら冗談じゃない」と説明して送り出す。

それでも、留学した学生たちのほとんどは、あまりにも田舎に学校があるので驚いてしまう。何人もの留学生が、「何にもない田舎だ」と泣いて電話してくるくらいなのだ。

頭の中の地図を世界地図に切り換えなさい

「あんたら、いま着てる服でも、みんなほとんどアジアの田舎であんたくらいの年の子が、一時間一〇~三〇円くらいで働いて作っているのよ」と言っても、日本の生活が当たり前だと思っている若い子には、やはり、ピンとこない様子。

アジアのどの国でも、「一時間一〇〇〇円なんていらない、五〇〇円でいいから二年間働かせてくれたら、一家が一〇年は食える」という世界で生きているのが現実なのだ。だから日本で働きたいと考える。

「だけど、日本はけったいな国やから、ビザ取るのも難しいし、行ってもあんまり外国人に対して寛大でもないようだということで、みんな日本にこない。寛大に受け入れていたら誰だって日本で働きたいのよ。世界一賃金が高くて、それにある意味では過ごしやすそうな国やからね。だけど、世界一、移民を受け入れへんのが日本なんよ」。

日本の次に賃金がよくて、移民に対して日本みたいに厳しくなくて、おおらかに受け入れてくれる国はどこかというとアメリカになる。

実際にアメリカは山ほどの移民、難民を引き受けている。軽蔑する意味でも何でもなくて、昨日まで飲まず食わずでおかあちゃんは自分の名前も書けないというのが、五人も一〇人も子どもを引き連れてアメリカに押しかける。

実際に、キューバから何万人もの難民がフロリダに押しかけて、難民キャンプから出す出さないと大騒ぎになったが、結局アメリカは全員吸収した。

どういう難民にも、英語力、能力にかかわらず勉強する機会を与える。そういうことに対して、アメリカは一生懸命やる。これがアメリカの本当に偉いところである。

「そういうやっかいなこと押しつけておいて、アメリカは危ない国やなんて、日本人は言えた義理じゃない。そんなアホな話はないわよ」。

アメリカだって難民のことなど知らん顔して、一生懸命働く中産階級の人たちだけが生活していれば、国が借金だらけになってひいひいあえぐこともないのだ。

日本は世界中の貧困を一番うまいこと利用して、自分たちだけでぜいたくして、鎖国して楽しく暮らしている。これだけでも特異な国。

「海外に工場を移して、この会社は生き延びた、先見の明があった」と新聞が書いているのを見るたびに、「こういうことを平気で書いて、たいがい日本人の神経図々しい、まぁよう言うわ」って思う。

安い賃金でも喜んで働く人たちのいる国がたくさんあるからで、そういう人たちがいなかったらとっくに日本なんかつぶれている。工場を移転して、その国の経済を助けてあげているというのも、思い上がった考え。強者の論理というか、ずいぶん都合がいい話だと、私は思う。

貧乏な国、発展途上国の人たちを、悪い言葉で言うとうまく操っている。上手に立ち回って、いいところだけを吸収して採算をとる。そういうことには、すごく才たけている。「めちゃうまい」とつくづく感心する。

さんざんそういうことをしておいて、その国にどれだけ貢献するかというと、私は別に軍隊を持てという考えではないが、例えば、そういう国で紛争や大災害が起きても、自衛隊が助けにいくと決めるだけで、もう大騒ぎする。

世界から金出せと言われるのも無理ない。何かあったら日本は「金出せ、金出せ」って強要されると新聞は騒ぐけど、「あんなもの金出せって言ってるのと違う、せめて金でも出せって言うてるのよ」。

いずれ、アジアの国が経済力をつけて、賃金も高くなったら、日本が工場移転してもそんなに都合よくいかなくなる。自分たちさえ安全で、自分たちさえぜいたくできればいいという考えでは、どうにもならなくなる。

そうすると日本の生きざまはものすごく難しくなる。日本が生き残るためには、海外に投資して、そこで日本の若い人たちが働いて生産性を上げて、その国が儲かって、その一部を還元させてもらって日本の老人を養うしかない。

例えばスリランカは、国民の多くが出稼ぎにいく。スリランカでは、医者でも給料が数万円。それで北欧なんかへ出稼ぎにいって、そして帰ってきてまたスリランカで過ごして……とその繰り返し。ともかくたくさんの人が出稼ぎにいく。フィリピンも同じ。

日本は幸か不幸か、札束持ってるから、札束付き技術付きで出稼ぎにいく。そこでその国の人たちといかに付き合うかということが問題になる。

日本は八〇パーセントが中産階級だといっているが、こういう国は世界中で日本だけで、たいがいの国には階級制度があって、上と下の生活レベルの差はすさまじい。そうなると、一つの国でも階級によってまったく価値観が異なる。

大事なのは、日本のように大多数が似たり寄ったりの価値観を持っていないことを知り認めることである。そうでないと、とてもではないが協調し合えない。

世界にはたくさんの価値観があることを認めたうえで、自分の意見を堂々と言える人が、これからの日本を担っていくようになるだろう。いつもみんなと同じように考え、目立った行動はいやだというような人ばかりでは、本当に日本はつぶれてしまう。

日本からは見えない世界がある

「アメリカの大学を卒業しても、日本では大卒の扱いにならない、高卒と同じだから就職先がない」と心配する親もいる。私なんか「お父さん、お母さん、新聞読んだことないのか」ってあきれてしまう。

アメリカの大学を卒業しても、日本の大学卒と同じ扱いだから、日本の景気の悪いときはあまりよくないし、いいときはいい。まあ一部の会社は、絶対アメリカの大学卒なんて採用しないというところもある。

日本の一流大学を卒業している帰国子女がいくらでもいるから、アメリカの大学卒がそんなに売り物にできるわけではない。かといって、ハンディを背負うわけでもない。

「留学に反対や、日本にあるアメリカの大学の分校で勉強するのも、留学するのも一緒ゃないですか。先生、そうでしょう。英語やりたいんやったら、日本でもできるじゃないですか。日本にある学校で勉強すればいいじゃないですか」と言う親もいる。

「あんた英語もできないのにアメリカに行ってどうするのよ」と子どもをすごく非難する。「英語ができないから、留学なんて無理だ」と思い込んでいる子もいる。それもまた行きすぎで、もうちょっと中道を取れないだろうかと思う。

確かに日本でも英語の勉強はできる。熟語や単語を単語帳にメモして暗記していく。こういう努力の積み重ねで英語力はアップする。

それに外図書を扱っている大きな書店に行くか、インターネットをつなぐかすればハーバード大学(Harvard University)のビジネススクールの教科書だって、簡単に入手できる。だからといって、それを使って勉強すれば、ハーバード大学と同じレベルの授業になるかどうか。

それに英語を使う機会がほとんどなくて、頭の中で単語並べて覚えたのと、実際に使ったことがあるのとでは、天と地ほどの差がある。

初めてアメリカに行ったとき「ただいま」という英語が思い浮かばない。どういうのだろうと思っていると、ホームステイ先の女の子が帰ってきて "I'm home."。「行ってきます」は、"I'm leaving."。

それを聞いて「ははあ、なるほど」、頭で考えるのとでは大違いだった。

夕飯のときに「いただきますは、何て言うのだろう」とどきどきしていたら、ホームステイ先のお父さんが「ウジャウジャウジャ」とお祈りして、"Amen"と言って食べ始めた。お祈りする習慣のない家族は、何も言わずに食べ始める。

百聞は一見にしかずで、経験に勝るものはないと痛感した。アメリカで生活して、同じものを食べてまずいと思ったり、あるいは結構うまいではないかと思ったりする。脂っこいものを食べるので「おお、これじゃエネルギッシュになるわな」と変なところで納得したり、リッチな生活をしていると思い込んでいたけど、意外と質素な食事なんだとびっくりすることもある。

「アメリカのビジネスマンは土日返上でほんまよーく働く、九時から五時までしか働かないというのは、ウソなんや、ワーカホリック(workaholic)という言葉もあるし……」と、感心することもある。アメリカで生活してみるとよくわかるけど、日本に住んでいるとまったく見えてこないから、そういうことを認識している人は本当に少ない。

私は年に何回もアメリカに行っているけれど、それでも行くたびに「ヘェー、この人たちは、こういう形で幸せなんだ」と驚く。

「そりゃもう、いくら本読んだって、映画見てもダメ、経験してみて初めて納得できることがたくさんある」。

親が留学に反対するのは、本能的に心配なのだろうと思う。それと親も結構感情的で、まだ年の若い子どもと離ればなれに生活するのは寂しい。それが親としては耐え難い。

「かわいい子には旅をさせたほうがええということは、頭ではわかってるんやけど、なかなか感情的にはついていかれへんというところかな、親は」。

特に女の子の場合は、せめて二〇歳までは手元に置いておきたいというのが本音だと思う。短大でも卒業するくらいの年になれば、親も一通り安心する。

反対している理由をいろいろ言われても、本音がわかれば解決策は必ず見つかる。

「アメリカは危ないから反対と言うてるときは、だいたい本音ゃないのよ。アメリカはダメと言っているときにはオーストラリアでも、イギリスでもどこでもいやなんよ」。
第一、アメリカの多くの地域は危なくないのだから、反対理由にならない。

親子で本音で話し合って、譲れる部分は親の意見を尊重すればいいのである。危ないと本気で心配しているのであれば、「絶対都会の学校でなくてはいやだ」と言い張らずに、親が安心する田舎にある学校を選ぶ。

「どうしても留学する!」という確固たる意志を持っていれば、解決できることも多いはず。親を説得できるほどの意志があれば、留学しても大丈夫。絶対にやりとおせる。

(著書「アメリカ留学で人生がおもしろくなる」より抜粋)

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栄陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院教育学修士課程を修了。帰国後、日本で留学カウンセリングを立ち上げ、留学指導を行い、これまでに7000人以上の留学を成功させる。留学関係の著作も多数。 » 栄 陽子留学研究所について