ホームステイからはじまる残念な留学
留学といえば短期と思うのは日本人だけ
留学というと「ホームステイ」をするものだと考えている人がたくさんいます。留学=語学留学(短期留学)という発想があって、語学留学ではホームステイが当然だと思い込んでしまう人が多いからです。
アジアやヨーロッパの人は、アメリカに留学してホームステイをするとは考えません。留学といえば「大学」や「大学院」へ留学することを意味し、基本的に大学の学生寮で生活するものだと考えています。
日本では、卒業を目的として大学や大学院に留学することを、わざわざ「正規留学」なんて言わなければならないほどです。
文部科学省による「トビタテ!留学JAPAN」にしても、せいぜい2週間から1年以内の留学で、やはり滞在方法としてはホームステイが中心です。
留学といったら1年以内の短期間で行うもので、ホームステイだと思われてしまうのは仕方がないのかもしれません。
留学するならどっち?ホームステイ vs 寮
こちらの動画で、現代の留学でのホームステイのリアルについてお話しています。
実は今の日本で一般的な、アメリカの素敵な家庭に受け入れてもらうホームステイのイメージはかなり昔のもの。
下でも解説していますが、きっとみなさんのイメージとは全く違うので、特に失敗のリスクが大きい長期の留学では、選ぶ前に実態を知ってから選択してくださいね。
現代アメリカのホームステイ事情
ホームステイというと、大きな家があって、子どもたちに囲まれた専業主婦のお母さんがいて、手作りのパイを焼いてくれて、といった家庭を想像しがちですが、いま頃そんな家はほとんどありません。
教育レベルの高い家では、お母さんも仕事をもっていて、なかなか他人の子を預かることができません。ともかく現代は、だれもかれもが忙しい時代なのです。
いまのホームステイは、昔の日本でいうところの「下宿」だと考えるのが一番あたっていると思います。部屋が空いているので貸している家、といった程度のものです。
同じ貸すなら留学生のほうが楽そうだと思っている家もあるかもしれません。
たまたまお母さんと娘だけで住んでいて、ホームステイをあっ旋する団体から「留学生を二人引き受けてくれませんか? 月に1,000ドル出しますよ」と声をかけられたのかもしれません。
その程度のイメージです。
ホストファミリーがスペイン語を喋っている
娘さんや息子さんがホームステイをしながら長期の留学をしているという親御さんから、「いまのホームステイ先が不安なので別のステイ先を紹介してくれないか」という相談が寄せられますが、その理由はだいたい次のようなものです。
・お母さんと子どもだけの家で、ほかにも日本人が住んでいる。
・いいファミリーだったけど、半年後にお父さんお母さんが離婚してしまって、お父さんだけの家に留まることになった。そもそも離婚しているという家庭に預けるのが不安。
・食事を満足に出してくれない。朝食がなかったり、夜もピザとか一品だけ。それなのに費用は高い。
・家族がヒスパニック系で、ほとんどスペイン語を喋っている。
・同じ年頃の子どもがいじめる。
・スポーツでケガをして、毎日病院に行くため、お父さんお母さんの車で連れて行ってもらうため、彼らの負担が大きく、だんだん雰囲気が悪くなって居づらい。
・休みの日は車がなくてどこにも行けず、ホストファミリーも遊びに連れて行ってくれないため、部屋に閉じこもっている。
等々・・・。
※当研究所ではホームステイ先の斡旋などは行っておりません。
ぜいたくすぎる日本人
離婚なんてアメリカ人なら当たり前、いまの日本でも山ほどあるのに何をいまさらって騒いで、、、、っていうところです。
ホストファミリーだって「娘と二人暮らしで部屋も空いているので、外国の女の子を一人あずかろう。お金も入るし。」と単純に思ったところで何か特段悪いことではありません。
スパゲティだけ、ピザだけ、、、アメリカの一般家庭ではそんなもの。栄養満点でバラエティー豊かな食事がでてくるホテルじゃありません。
日本だって家族が多いと、そんなにいろいろ作ってくれませんよ。カレーだけっていう夕食もあるでしょう。
だいたい日本人は、しょうゆ、ソース、バター、塩、ケチャップ、マヨネーズ、中華など、レパートリーが豊富で食に最もウルサイ人種。アメリカなんて、塩とケチャップとこしょうくらいがせいぜいです。
同じ年頃の子にいじめられることだって当然あるでしょう。ずっと年下の子にいじめられることもありますよ。アメリカ人なら、みんな親切でやさしくて、よくしてくれるなんてそもそも考えないことです。
子どもと大人の世界がハッキリ区別されているのがアメリカです。ホストペアレンツがどこにも連れて行ってくれないのもめずらしいことではありません。
アメリカの国土のほとんどは田舎ですので車が無いと移動もままなりません。日本のようにちょっと外に出ればコンビニがあると思ったら大間違い。
また、そんなに気軽に買い物に行くわけではありません。
大学留学は寮生活が基本
だいたい、人間の相性ってものがあるでしょう。私もアメリカ人の学生を預かった経験がありますが、とくに愛想がいいとかかわいらしいというわけでなく、会った瞬間に「あ、いい子だな」と感じて、やがて「いろいろ話したい」という思いが重なって、ようやくディナーに誘う回数だって多くなったものです。
ホームステイなんて、そういった人間の相性によってさまざまなケースがあるものなのです。
1か月くらいならともかく、長期にわたっての留学では、ホームステイをするにはいろいろな覚悟が要ります。
反対に親御さんのほうで、自分の息子や娘と同じような扱いにくい年頃の子を長期間預かったらどういうことになるか、あらかじめ考えてみなければなりません。
ホームステイをするなら、相手に多くを望まないこと、期待しないこと。
本来アメリカの大学に留学したら、基本的に寮生活です。
ハーバードなどは、4年間寮生活をすることが原則になっているのです。
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。