MBAとビジネススクール
アメリカの大学院でビジネスを学ぼうという人の多くは、MBAの課程をめざしています。MBAとは、Master of Business Administrationの略で、日本語に訳すと「経営学修士」ということになります。全米で、そして世界で最も認知度の高い修士号が、このMBAです。全世界のMBAプログラムの数は2500以上にのぼると言われています。
そしてこのMBAの課程を設けているのが、アメリカでいえば大学院のビジネススクールです。「経営大学院」と訳され、プロフェッショナルスクールの代表格です。その嚆矢(こうし)はUniversity of PennsylvaniaのThe Wharton Schoolで、19世紀末にまでさかのぼります。
実践的なことを学ぶのがMBA
MBAの課程では、おおまかにいえば企業や組織のマネジャーになるための教育をしています。実践的なケーススタディを繰り返し、グループ単位で企業活動のシミュレーションやロールプレイングをしばしば行います。理論的なことも学びますが、やはり「ビジネスの実践」に力点が置かれています。商品やサービスの開発からマーケティング調査、プレゼンテーションを経るということを繰り返します。またさまざまな問題解決に対しても現場における有効性が重視されます。
MBAに学んでいる人の多くは、1~3年以上の職歴をもつ人たちです。働きながら通っている人も少なくありません。そのような人たちが、自らの経験を土台にしながら、相互に知見やアイデア、ノウハウを交換しあい、将来のビジネスリーダーたるべく切歯扼腕(せっしやくわん)するのがMBAの課程です。
また留学生が数多く学んでいるのも、アメリカの大学院のMBAの大きな特徴の一つです。一つの国、一つの地域だけで完結するビジネスのノウハウというよりも、世界規模で考える力、地球レベルで課題に取り組む視野が身につくということは、アメリカのMBAで学ぶことの大きな魅力であることには違いありません。
MBAの「分野」
MBAのカリキュラムは30~60単位のものが多く、期間でいえば1~2年かかります。全般的な経営学を学ぶものと、会計学、財務、マーケティング、人材管理、国際ビジネスといった分野を重点的に学ぶものとに大別されます。1年目にビジネス全般を学び、2年目に特定の専門分野を学ぶ、というのが最もオーソドックスな課程です。
専門分野については、スポーツ・マネジメント、Eコマース、ホスピタリティ・マネジメント、健康・福祉・医療マネジメントといったものもあります。管理職を対象としたExecutive Managementのプログラムは人気の高い分野の一つです。また起業学やNPO、社会企業、サステナビリティ・マネジメントといった分野も最近は注目を集めています。
授業に出席し、テストを受け、レポートを提出する「コースワーク」のほか、グループプロジェクトが必須となります。場合によってはインターンシップが必須になることもあります。
MBAへの出願
MBAの出願にあたっての審査対象は、課程によっていくらか異なりますが、だいたいは以下の通りです。
- 大学の成績(GPA)
- GMAT®のスコア
- TOEFL®テストのスコア
- エッセイ
- 推薦状
- 職歴(プロフェッショナル・バックグラウンド)
大学の成績は重視されますが、専攻は問われません。大学での専攻が何であろうと、MBAで学ぶことができます。
職歴=プロフェッショナル・バックグラウンドについては、必ずしもすべてのビジネススクールがこれを問うわけではありませんが、多くのMBAの課程は、1~3年以上の、何らかの職務経験を求めています。レベルの高い課程ほど、職歴を重視する傾向にあります。ただし職種・業種は問われません。アルバイトでもプロフェッショナル・バックグラウンドとして認められる可能性はありますが、何らかのかたちでマネジメントに携わっていると、より高く評価されるでしょう。
MBAではないビジネスの課程
MBAのほかに、大学で学ぶビジネスの課程としてはMaster of Science in Management(MSM)があります。MBAに比べて理論的な要素が強いというのが一般的な傾向で、アメリカで生まれ発展してきたMBAに対して、MSMはヨーロッパで発展してきました。
MSMの課程の多くは、出願要件としてプロフェッショナル・バックグラウンドを求めていません。またMBAの多くが2年の課程であるのに対して、MSMはその多くが1年の課程であるというのも違いとして挙げられます。大学院によっては、MBAとMSMの両方を取得できるDual Degreeのプログラムを設けています。