アメリカの大学院への留学にあたって、志望校選びは非常に重要なプロセスです。まずは、以下に紹介するポイントで指針を立てましょう。
専攻したい分野があること
まず、自分が学びたい分野の学科がその大学院にあるかどうかをチェックします。これはインターネットでできます。英語のサイトでは Peterson’s や GradSchools.com などが代表的な大学院検索サイトです。
これらのサイトでは、分野別にアメリカの大学院を検索することができます。検索された大学院の数が多すぎて戸惑うことがあるかもしれませんが、志望校を絞り込んでいく要素はほかにもたくさんありますので、あわてる必要はありません。
地域
国土が日本の25倍もあるアメリカは、東部と西部、北部と南部では気候はもちろん、歴史的成り立ちも違いますし、そこに住む人の気質にも差異があります。
教育レベルが高いのは東部から北東部です。とくにニューイングランド地方(コネチカット州、メイン州、マサチューセッツ州、ニューハンプシャー州、ロードアイランド州、バーモント州)には、伝統ある名門大学が集まっています。マサチューセッツ州のボストンは、アメリカの教育の中心地です。地域的な希望がとくにないのであれば、まずはニューイングランド地方とその周辺の大学を見ていくとよいでしょう。
人によっては「温かいところがいい」「大都会がいい」といった希望もあるでしょう。ただし大都会は生活費も高くなるので、費用との兼ね合いも考慮しなければなりません。
学びたい分野によっても地域性が影響します。たとえばアートや演劇を学びたいのであれば、ニューヨークやボストンなどの都会が候補にのぼってくるでしょう。国際関係や政治学を学びたければ、ワシントンDCやニューヨークはインターンシップの機会も豊富にあるので、魅力的だと思います。スポーツマネジメントであれば、メジャーリーグやNFL、NBAのチームのある都市、生態学や森林学、天文学であれば、大自然に囲まれたところ、といったような地域的な希望によって志望校が絞り込まれていくでしょう。
規模
アメリカの大学院への留学をめざす場合に考慮する「規模」には、「学科の規模」と「大学そのものの規模」とがあります。このうち、とくに注意したいのが「学科の規模」です。
- 教員の数
- 学生数
- 専攻課程(Program)の数
- 科目(Course)の数
これらが、学科の規模を測るポイントになります。これらの数が大きいほど、その学科の規模が大きく、充実していることがうかがえます。とはいえ、少数精鋭を持ち味としている学科も少なくないので、規模とレベルとが必ずしも一致するとは限りません。
カリキュラム
志望校選びにあたって十分に考慮しなければならないのが、それぞれの大学院の学科のカリキュラムです。
- 学期制(2学期制/3学期制/4学期制)
- 卒業までにとらなければならない単位数
- 卒業までにかかる期間
- 必修科目と専攻科目、選択科目
- 教員のプロフィール
- インターンシップなど実習の時間数
- 修士論文や試験
- 設備
これらが、カリキュラムについて調べるポイントです。
とくに卒業までにとらなければならない単位数についていえば、30単位と60単位とでは大きく異なります。アメリカの大学院は単位制ですから、単位さえとってしまえば卒業できますが、60単位を消化するためにはやはり2年はかかるでしょう。30単位であれば、秋学期+春学期+サマースクールで1年で修了することもできます。
また大学と異なり大学院への留学を志す場合、学びたい分野と教員の専門分野とが合致していることは志望校選びにあたって重要になります。大学院生は「狭く深く」学ぶので、めざす課程で教えている教員の研究領域はよく確認しておきましょう。
難易度
さまざまな書類から多角的に出願者を評価し、合否を判断するアメリカの大学院の難易度というものは、なかなか測りにくいものです。偏差値のような数値もありませんし、同じ大学院でも学ぶ分野によって難易度は異なります。
難易度を測る指針としては、
- 大学の成績、バックグラウンド、TOEFL®テストやGRE®のスコアなどの入学要件
- 合格率
- 大学としての名声やランキング
などが挙げられます。このうち合格率はすべての大学院や学科が公表しているわけではありません。また、大学としての名声やランキングについていえば、アイビーリーグなどの名門校であれば、分野を問わずすぐれた課程をもっていますが、大学によっては、大学そのもののレベルはそれほどではなくても、分野によっては非常にレベルが高いということもあります。たとえばFlorida State Universityは、大学自体のレベルとしてはそれほどではありませんが、大学院の演劇プログラムは全米でも屈指の質と内容を誇ります。
費用
費用も、大学院選びにあたっての大きな要素です。有名な大学院、レベルの高い大学院ほど、学費も高くなります。
学費+寮費+食費の合計は、私立大学で年間2万5千~7万ドル、州立大学で2万~5万ドルくらいが目安です。州立だからといって必ずしも安くつくとは限りません。たとえばUniversity of Michiganなどは、州外の学生に対しては私立大学並みの学費を設定しています。
極端に学費が安い場合は、注意を要します。というのも、大学院教育としての最低限のレベルに達していない可能性があるからです。よく「○か月で修士号を得られる」といった宣伝を見かけますが、あまりに短期間で修士号を得られるという課程も注意が必要です。