アメリカでは「大学院」のことを“Graduate School”と総称します。大学はこれに対して“Undergraduate”といいます。前者をGR、後者をUGと略記することもしばしばあります。
アメリカの大学院には、いくつかのきわだった特徴が挙げられます。
コースワーク
アメリカの大学院、とくに修士課程の特徴の一つが、学生たちは大学にいたときと同じく授業に出て、宿題を提出し、テストを受け、ペーパー(レポート)を提出し、そして単位を取得するということ。科目のことをCourseというので、このプロセスのことをコースワーク(Coursework)といいます。
このコースワークによれば、大学院生とはいっても実際の学習プロセスは大学5、6年生のような感じです。大学院の1年生が、大学4年生と同じ授業を受けることもめずらしくありません。
狭く深く学ぶ
アメリカの大学では、さまざまな分野を幅広く学びますが、それに対して大学院では、ある特定の分野を「狭く深く」学びます。心理学を例に挙げると、大学では心理学を全般的に学ぶのに対して、大学院では、臨床倫理学、発達心理学、児童心理学などの分野に特化して、それぞれについて掘り下げて学ぶことになります。
学生の自主性が重んじられる
大学に比べると、学習がより「学生主体」になります。大学院では、一人ひとりの学生が独自にリサーチ課題や目標を掲げて、それに向かって主体的にリサーチしたり論文に取り組んだりします。
インターンシップや実習の重視
分野によっては、インターンシップやプラクティカムといった実習がカリキュラムに組まれていて、その比重が大きいこともあります。
文系・理系の垣根がない
アメリカの大学院は文系、理系、芸術系といった分けかたをしません。
大学でアートを勉強した人が大学院でコンピュータを学んでもいいし、大学でビジネスを専攻した人が大学院でカウンセリングに挑戦してもかまいません。学生が自由に科目を組み合わせてオリジナルのカリキュラムをつくる“Independent Study”や、MBAとソーシャルワークの修士号を両方とれるような“Joint-Degree Program”もアメリカの大学院ではめずらしくありません。
年齢層の高さと女性の割合の多さ
アメリカの大学院では、いったん社会に出て、社会人としての経験を経てから学んでいる人が少なくありません。アメリカの大学院生の平均年齢は32.4歳で、有職率は87.1%です。また女性の割合が高い(59.9%)というのもアメリカの大学院の特徴です。(数字はいずれも日米教育委員会による)
専門性の高い分野は大学院でしか学べない
アメリカでは、医学や法学、カウンセラー教育学、公共政策学などの専門性の高い分野は大学院でしか学べません。大学では幅広くさまざまな分野を学んで「自分探し」をして、大学院で自らの専門としたい分野を本格的に学ぶ、というのがアメリカの大学・大学院のありかたです。
(○大学院への道p15の表を挿入)