アメリカの大学に留学して〈芸術〉を学ぶことにはどんな意味があるのでしょうか。

アメリカの大学の芸術教育はプロの芸術家をめざす人はもちろん、初めて芸術を学ぶ人にも門戸を開いています。つまり芸術は専門家だけのものではないと考えられています。

ここではそんなアメリカで芸術を学んでみようという人が知っておくべき、アメリカの芸術教育の魅力、学べる芸術分野、出願時のポイントなどをお伝えします。

もくじ

Massachusetts College of Art and Design
Massachusetts College of Art and Design
アトリエの1コマ

アメリカ大学に「芸術留学」することの魅力

アメリカでは、専門の芸術大学だけでなく、一般の大学の授業の科目として美術、演劇、音楽などを学ぶことができます。ここでは芸術留学にはどんな分野があるか、芸術留学の魅力、出願方法などについてお伝えします。

芸術を楽しむ

アメリカの大学における芸術教育の特徴は、「芸術を楽しむ」という姿勢が根本にあることです。アメリカでは芸術は、人間性を豊かにするもの、日々の生活を豊かにするものとして位置づけられています。大学の芸術教育でも、芸術を特別な分野とみなすのではなく、人間としての素養・教養を育むためのものと考えます。

とくにリベラルアーツ・カレッジ* はプロを養成するというよりも、ゼネラリスト(=広い教養をもつ人)としての素養を身につけることを大きな目標としています。1人ひとりの学生の個性や才能を見いだし、可能性を広げようという教育です。

  • * リベラルアーツ・カレッジ: 専門的・実践的な教育よりも、さまざまな分野の学問を広く教え、全人教育、つまり幅広い視野をもち教養の豊かな人を育成することを理念とする私立四年制大学群の総称。全米に約600校あり、アメリカの大学教育の中心的役割を担っています(「留学用語辞典」より)。より詳しくは「アメリカの大学の「種類」」をご覧ください。

技術的なことばかりを指摘したり、学生同士を競わせるようなことはありません。学生たちがのびのびと、プレッシャーやライバル意識を感じることなく、芸術を楽しみながら、自らの可能性と個性を探り出していける環境が、アメリカの大学にはあります。

パフォーマンスを重視

アメリカは、パフォーマンスをとても大切にしています。パフォーマンスとは一言でいうと「表現すること」。スピーチや演技、音楽を通して表現する能力を小さいころから養われます。パフォーマンスをする機会も幼少時から大学生になるまでたくさん設けられています。

したがってアメリカでは、ごく普通の大学で、ダンスや音楽、演劇の専攻課程が設けられています。絵画や音楽、演劇はいずれもパフォーマンスに大きくかかわる分野です。しかも自分の専攻にかかわらず、これらのクラスの授業をとれるのがアメリカの大学の大きな特徴です。

幅広く芸術が育つ土壌

自己主張が大事なアメリカでは、自称芸術家がたくさんいます。ファッションや宝飾の世界でも、デザイナーの名前を気にします。一流の芸術家ではない人の作品も一般の人が買い求めます。生活のあらゆる面で感性を大切にする土壌が成り立っています。

アメリカでは、芸術とは、1. 自分を豊かにする、2. 家族や友人など近しい人を豊かにする、3. 見知らぬ人をも豊かにする、というのが芸術を志す人の考えかたです。なにがなんでもプロのピアニストになろうという人ばかりがピアノを学んでいるわけではありません。最初の2つ、つまり、自分と家族・友人を豊かにすることを大切に思っている人もたくさんいます。

プロの芸術家・音楽家をめざす人が学ぶ大学としては、日本の美大・音大のような専門大学がアメリカにはあります。また総合大学には独立した芸術学部・音楽学部を設けていて、それぞれの学部が、専門大学に匹敵するレベルと内容のカリキュラムをもっていることもあります。

一方で多くの大学では、「初歩」から芸術や音楽を学べるようになっています。このように、幅広い志向や目的、レベルに応じた課程があらゆる芸術の分野にわたって用意されているのが、アメリカの芸術教育の大きな特徴です。

プロをめざす人も素人も

アメリカの大学では、まったくの初歩から美術や音楽を学べますが、だからといって、アメリカの大学のレベルが低いということではありません。日本の美大・音大に負けず劣らずの名門大学もあり、世界中から選りすぐりのアーティスト・ミュージシャンの卵たちが集まります。

またアートといっても絵画や彫刻だけではありません。写真やグラフィック・デザイン、ジュエリーアートなども学べますし、音楽ではクラシックだけでなく、ジャズやポピュラー音楽で学位を得ることもできます。映画や演劇、ダンスもアメリカでは人気の専攻分野です。 

つまりアメリカの芸術教育は、

  • 初心者から上級者まで、レベルに応じてアート・音楽を専攻できる
  • バラエティに富んだ専攻課程が設けられている

というとても魅力的な特徴があるのです。

またアメリカの大学では、自分の適性をじっくり見きわめるための時間がたっぷりあります。入学してからでも進路変更が可能です。大学に入ってから芸術を志すのでは遅すぎる、なんていうこともありません。

たとえ天才的な才能がなくても、アメリカの大学に留学して、芸術の基礎を学んで感性を研ぎすまし、世界各地に人脈を広げ、芸術や音楽の分野について英語と日本語でしっかり議論できるようになれば、将来のさまざまな可能性が大きく開けていくことでしょう。

芸術留学で学べる多彩な分野

では、アメリカの大学で学べるさまざま芸術分野について見ていきましょう。

ビジュアルアート系

絵画 Painting

油絵、アクリル画、水彩画など、絵の具を使った絵画の描法を勉強します。色彩理論、キャンバスの表面加工なども学習内容に含まれます。静物画、風景画、モデル描写などのほか、色彩、フォーム、空間、コンポジションなどを形式的、印象的側面から学びます。

線画 Drawing

鉛筆とチョークを中心として、ペンやパステルなどを使った線画のテクニックを学ぶ分野です。写生のテクニック、描写の対象の観察力を高める訓練、質や形状の分析力の開発、遠近法、人物画、風景画、静物画などを、使用する画材(ペンなど)別に学びます。

写真 Photography

カメラとその周辺器材の使いかた、現像、照明、構図、色、コントラスト、特殊効果、写真芸術と写真の歴史を学びます。芸術的要素を強調した課程もあれば、その技術的な分野への応用をめざしたものもあり、カリキュラムの内容は大学によってさまざまです。アメリカで写真を専攻できる大学は 200以上あります。写真を専攻する学生もここ 10数年増加の傾向にあり、さらに多様性を帯びてくると思われます。

グラフィック・デザイン Graphic Design

グラフィック・デザインとは、コンピュータを使って絵を描いたり、既存の絵や写真をコンピュータに取り込んで加工したり、それらを配置・コラージュ・デザインしたりすることです。ポスターなどの広告、ロゴやトレードマークのデザイン、本や雑誌のカバーデザインやパンフレット等の出版・印刷分野、またインターネットをはじめとするデジタル・メディアに応用されます。線画や絵画の技法、美術史などの総合的な芸術の基礎のクラスに加え、レイアウトソフト、グラフィックソフトを使って実際にデザインをするクラスがあります。

ファッション・デザイン Fashion Design

Massachusetts College of Art and Design
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アトリエの一コマ

芸術表現の要素やテクニックを、衣服やアクセサリーのデザインに応用する勉強をします。学習内容は多岐にわたります。

列挙すると、ファッション概観、色彩、テキスタイル、美術概観、立体デザイン、構築技法、デザイン画の技法、パターン・ドラフト、デザイン・イラスト、アクセサリー・デザイン、インテリア・デザイン、ジュエリー・デザイン、衣服の歴史、美術史、広告デザイン、ディスプレイと展示のデザイン、写真、ファッション・スケッチ、メンズ・ウェア、子供服、ファッション・マーケティング、プロのデザイナーによるスケッチ評価、コンピュータによるファッション画技法、仕立て技法、ニットウェア、帽子デザインなどが学習の対象です。

この分野の代表的な学校は、やはりニューヨークに集まっています。5番街にある Parsons School of Design、州立で7番街にある Fashion Institute of Technology(FIT)、ブルックリンにある Pratt Instituteなどが有名です。

インテリア・デザイン Interior Design

部屋の中にあるインテリアをコーディネート・デザインする分野ですが、最近では「環境デザイン」の一分野として位置づけられるようになっています。建築や都市デザインとの結びつきも強く、テクノロジーの発達とともに、インテリア・デザインの世界でも、単なる空間技術の素養だけでなく、高度な技術や専門性が要求されるようになってきました。美的な面だけでなく、照明や音響、空調、そして環境への配慮といった側面も考慮しなければならなくなってきたということです。

こうした多様化・複雑化に伴って、インテリア・デザインという専攻を芸術の課程に設けている大学もあれば、建築や都市デザイン、環境デザインといった学科に設けている大学もあります。いずれもコンピュータを用いた 2D・3Dのデザインが積極的に取り入れられています。

建築 Architecture

建築の歴史と理論、建造物の技術的な仕組み、建築家としての責務や建築規定など、建築全般にかかわる勉強に加え、建築と文化、社会、環境とのかかわりなどを学習します。デッサンしたり設計したりといった実践にかなりの時間が費やされるのが特徴で、また工学的な要素が強い分野であるため、数学や物理学もしっかり学びます。

その専門性の高さから、5年間のカリキュラムが組まれているのが一般的で、1年目からしっかり基礎を学びます。インターンシップが必須となることも多く、ヨーロッパへの留学がカリキュラムに組み入れられていることもめずらしくありません。

ジュエリー Metal and Jewelry Arts

宝石や貴金属を使って指輪やネックレス、ピアスなどの宝飾品を作ったりデザインしたりする専攻分野です。これには、Gemology(宝石学)、研磨、切削、キャスティング(鋳造)や造形などが含まれます。コンピュータ・グラフィックスが必須になっている場合もあります。スタジオなどで制作に取り組む時間が学習の大半を占める、実践的な分野です。

パフォーミングアート系

演劇 Theater Arts

舞台芸術における、演技と演出、場合によってはそれに加えてステージ・マネジメントの勉強をする分野です。役者をめざす人と、演出家をはじめ裏方をめざす人が学びます。発声法、発話法、動作、即興、さまざまな演技のスタイル、演劇の成り立ちと歴史、個々の舞台の背景となる事柄のリサーチ、リハーサルの手法、舞台のセッティングとそのデザイン、演技指導、脚本の解釈などが学習内容です。

実践的な内容をより多く学びます。スタジオや舞台などで、実際に身体を使って演技をしたり、動きを勉強したりといった授業形態が主になります。演技をする人も演出をする人も、実際に観客を招いた舞台で公演し、学んだ成果を披露します。

ミュージカル劇 Musical Theater

※ ミュージカル劇については「アメリカ大学への音楽留学の魅力と出願」をご覧ください。

ダンス Dance

学問としてはアメリカでも比較的新しい分野で、演劇や音楽のプログラムの中に組み込まれた形で、ダンスの専攻を設けているところもあります。大学によっては体育やレクリエーション学のプログラムの中にダンスの専攻があります。ニューヨーク大学(NYU)には博士課程まであります。

カリキュラムの内容はさまざまですが、将来プロのダンサーになるためのものと、ダンスを研究したり教えたりするためのもの、この2つに大別されます。ダンスの歴史やコンポジション(振り付けや種々の動きかた)、ダンス・パフォーマンスの批評・分析などを学ぶほか、実際のダンス・パフォーマンスのプロダクションに参加して、公演をしたりします。

映画 Film

映画やテレビの製作を学びます。実際に企画して、脚本を書き、撮影・編集を経て1つの映像作品として作りあげる勉強です。映画を批評・分析する専攻として、Cinema studiesというプログラムがあり、またテレビを含めて、ラジオや新聞などのマス・メディア文化を論じる分野として Media studies、報道全般を学ぶ Broadcastingといったプログラムも、アメリカにはあります。「メディア」という側面から映像を学ぶ課程は、多くの場合「コミュニケーション学科」に設けられています。

製作関連のクラスは、脚本の書きかたに始まり、演出技法、撮影・照明、編集、音響にいたるまで、それぞれ個別に教えるクラスと、それら個々の要素を集積して完成された作品を作り、それを発表するクラスとに大別されます。

アメリカの大学で、映画製作の御三家といえば、University of Southern California(USC)New York University(NYU)University of California, Los Angeles(UCLA)です。これらの大学からは、世界的に有名な多くの映画監督が卒業しています。

音楽演奏 Music Performance / ジャズ Jazz

※ 音楽演奏、ジャズについては「アメリカ大学への音楽留学の魅力と出願」をご覧ください。

セラピー系

アートセラピー Art Therapy

芸術の表現や媒体を使って心の病や精神的な障害を癒すこと、そして、言葉ではなく芸術を通したコミュニケーション、もしくは言葉と芸術との組み合わせによるコミュニケーション、この2つの方法を模索し、向上させることを目的とした分野の学問です。

精神面でのケアへの応用がどうしても強調されてしまいますが、身体的な障害や、ケガの治療の際にもこの療法が使われる場面が多々あり、その効用は一般に認められています。

芸術の素養が必要であることはいうまでもなく、また、芸術以外にも、教育学、心理学、精神分析学など、セラピー一般に必要な技術や知識も身につけなくてはならないのがアートセラピーという専攻です。

この専攻で学ぶ中心内容は、芸術と心理学です。American Art Therapy Association(AATA:アメリカ芸術療法協会)によると、大学レベルであまり専門的なことを教えることを勧めていません。Art Therapistをめざしている人に対しては、できるだけ大学院での教育を受けることを勧めています。専門的な内容や、よりプロフェッショナルに近い内容は、アメリカでは大学院で学ぶことが原則です。これはアートセラピーに限ったことではなく、アメリカの高等教育における一般的な特徴です。

ミュージックセラピー Music Therapy

※ ミュージックセラピーについては「アメリカ大学への音楽留学の魅力と出願」をご覧ください。

ビジネス系

アート・マネジメント Art Management

芸術施設やそれにかかわる団体や企業を経営、運営するノウハウを学ぶ分野です。芸術全般の知識に加えて、マーケティングや財務、資金調達、人事、芸術イベントのプロモーションとその運営、広報や法律などを勉強します。多くの大学では、芸術と経営学を合体させたカリキュラムを構成していて、ケーススタディを数多くこなすのが特徴です。アート・マネジメント概論、パブリシティ、エンターテインメント産業の概観(著作権、出版、アーティスト管理など)、ボランティアとの協働、ラジオやテレビ、インターネットなどのメディアの管理などが具体的な学習内容として挙げられます。

これと関係するものとして、ミュージック・マネジメントやシアター・マネジメントという分野もあります。いずれも、日本でも最近注目されている分野です。

大学のタイプ別に見る芸術カリキュラム

リベラルアーツ・カレッジ、総合大学、専門大学それぞれの、大学のタイプ別の芸術教育の特徴を見てみましょう。自分の学びたいこと・将来の希望に合った進学先を決める参考にしてください。

リベラルアーツ・カレッジ: 芸術を教養として学ぶ

リベラルアーツ・カレッジの芸術カリキュラムの特徴は、たとえば「美術(Fine Arts)」を専攻する場合、油彩や水彩、インテリア・デザインやエッチング、陶芸などさまざまな領域を学ぶことです。幅広くいろいろな分野を学んで豊かな教養を身につける、というリベラルアーツ教育の理念が芸術のカリキュラムにも反映されていることになります。

たとえば、ペンシルバニア州のリベラルアーツ・カレッジの Ursinus Collegeでは、Artという専攻の中で、Studio Art(制作)か Art History を重点的に学ぶ(1つの専攻の中で重点的に学ぶ分野を Concentrationとか Emphasisといいます)カリキュラムになっています。たとえば Studio Artを Concentrationとして選んだ場合、絵画だけでなく写真や版画、陶芸やデザインを自由に学ぶことができます。また大学内の美術館での展覧やインターンシップの機会もあり、広くさまざまな角度から芸術に触れることができます。

ほとんどのリベラルアーツ・カレッジでは、入学に際してポートフォリオ(作品集)の提出やオーディションは求められず、初歩から芸術を学ぶことができます。日本で小さいころから芸術に親しんできた人には物足りなく感じるかもしれませんが、リベラルアーツ・カレッジは少人数制の指導をしていますので、個々の学生のレベルや才能に応じた指導が得られるはずです。

総合大学: 充実した設備で学ぶ

総合大学では、以下の学部(のいずれか、あるいは双方)に芸術学科が設けられています。

  • 一般教養学部: College of Arts and Sciences(CAS)
  • 芸術学部もしくは音楽学部

また大学によっては教育学部内に芸術の課程が設けられていることもあります。

一般的にいって、芸術学部・音楽学部のカリキュラムのほうが、一般教養学部のものに比べて専門性が高く、狭く深く学ぶようになっています。一般教養学部の芸術課程はリベラルアーツ・カレッジのカリキュラムに近いといえるでしょう。入学にあたっては学部ではなく大学そのものに入学するので、ポートフォリオやオーディションも課されません。

総合大学の特徴としては、設備が充実していることが挙げられます。リベラルアーツ・カレッジでもスタジオや練習室は整っていますが、総合大学のほうが、最新のテクノロジーが導入された録音スタジオや、映像や画像をデジタル加工するための高機能PC、ギャラリーやシアターといった設備がより充実しています。

専門大学: 狭く深く学ぶ

芸術や音楽の専門大学は、日本の芸大・美大に相当するものです。いわゆる単科大学です。大学名には Collegeか School、Instituteと付いています。また、音楽や演劇の専門大学の場合 Conservatoryと名の付く場合もあります。美術系の専門大学を Art School、音楽系の専門大学を Music Schoolと総称します。

芸術の専門大学の特徴は、「狭く深く」学ぶこと。幅広くさまざまな領域を学ぶのではなくて、油絵やインテリア・デザイン、版画や工業デザインなど、ある特定の分野を深く掘り下げて学ぶのが特徴です。分野にかかわらず制作に没頭することになります。

こうした芸術大学の設備はとても充実していて、個別のスタジオやコンピュータ・グラフィクス専用のコンピュータ室、美術館なみのギャラリーなどは、たいていどの Art Schoolにもあります。また「インテリア・デザイン図書館」とか、「工業デザイン図書館」といった分野ごとに独立した図書館がある場合もめずらしくありません。スタジオは基本的に 24時間オープンです。学生にしてすでにプロのアーティスト並みの生活を送ることになります。

芸術大学・音楽大学の多くは、大きな美術館やコンサートホールへのアクセスが便利な都会に位置しています。美術館やギャラリーがある都市には多くのアーティストが訪れ、ニューヨークなどには芸術に携わっている人がたくさん住んでいます。プロとして活躍している芸術家がゲスト講師として頻繁に招かれ、プロの世界と接する機会が多いのが芸術の専門大学の特徴です。

また多くの専門大学は、近隣の大学と提携していて、その大学の科目を学べるようになっています。芸術「以外」の科目をとることも、たいていの専門大学で推奨されています。

芸術を学んで得られる学位

芸術や音楽を専攻して、アメリカの四年制大学を卒業して得られる学位としては、以下の3種類があります。大学によってこれらのうちいずれか1つ、または複数の課程を設けています。

  • Bachelor of Arts(BA)
  • Bachelor of Fine Arts(BFA)
  • Bachelor of Music(BM)

このうち Bachelor of Artsは、芸術に限らず文系全般の専攻で得られる学位です。リベラルアーツ・カレッジや総合大学の中の一般教養学部で芸術を学ぶ場合の多くは、Bachelor of Artsを得ます。Bachelor of Fine Artsや Bachelor of Musicを得られるのは、より専門性の高い課程で芸術や音楽を学ぶ場合です。芸術の専門大学では、Bachelor of Fine Artsや Bachelor of Musicの課程が多く見られます。

個々の大学のカタログやホームページでは、この学位の名前でカリキュラムが紹介されています。“Bachelor of Arts in Music Program” や “Bachelor of Fine Arts Program in Painting” などです。学位の種類によって、その課程がより専門性が高いかどうかを推し量れますので、これを知っておくことは志望校選びにおいても役に立ちます。

芸術留学のための大学の選びかた

日本からアメリカへ芸術留学するパターンとしては、「高校を卒業してから」と「大学在学中に編入」の2つが考えられます。それぞれどのような観点から大学を選んでいけばいいかを見てみましょう。

日本の高校を卒業して入学

日本の高校を卒業してからアメリカの大学に入学して芸術を学ぶ場合です。留学先となる大学は、おもに英語力と学力、芸術のバックグラウンドによって指針をたてることができます。

まず、英語力や学力が低くて、芸術のバックグラウンドがない場合の留学先は、リベラルアーツ・カレッジが適しています。リベラルアーツ・カレッジは規模が小さく、1人ひとりの学生への指導が行き届いていて、落ち着いて勉強や制作に取り組むことができます。まずはこうした小さな大学で一般教養をしっかり学び、英語力をつけ、そしてアートや音楽の基礎をしっかり身につけたうえで、より本格的にアートを学びたいとなれば、総合大学や専門大学に編入するのもいいでしょう。

英語力と学力は十分にあり、芸術のバックグラウンドがない場合も、まずは小さな大学に入ってそこで芸術の基礎をしっかり身につけてから、より専門性の高い大学への編入を考えるのがよいでしょう。また日本の放送大学や美術の専門学校、音大・美大の生涯教育コースなどで芸術のバックグラウンドを身につけてから留学に臨むと、志望校の選択の幅も広がります。

芸術のバックグラウンドがある場合は、オーディションやポートフォリオが求められるような専門性の高い大学や課程をめざしてもよいでしょう。とはいえ総合大学は規模が大きいために、親身なサポートを得られにくいので、日本の高校を卒業したばかりの人は、相当の自主性・自律性が求められます。まずは小さな大学に留学して学生生活に慣れてから、大きな大学に編入するという道も検討すべきでしょう。

日本の大学から編入する

日本の大学からアメリカの大学に編入して芸術を学ぶという場合、日本の大学での学部が芸術学部であることは必須ではありません。日本の大学での学部が何であっても、アメリカの大学に編入して芸術を学ぶことができます。これはリベラルアーツ・カレッジや、総合大学の一般教養学部で芸術を学ぶ場合にとくに当てはまります。

アメリカでは大学同士の単位の互換システムがよく整っているので、ある大学から別の大学へ編入することはめずらしいことではありません。在学している大学に不満がなくても、たとえば大学で1年過ごしてみて写真を勉強したいと思ったけれど、その大学では写真の専攻がない、という場合は、写真を専攻できる大学に編入する、というのがアメリカの大学生の普通の考えかたです。

この単位の互換システムは、日本の大学からアメリカの大学に編入する場合にも適用されます。認められる単位数の上限は 60単位ほどが一般的です。日本の大学の単位であってもアメリカの大学で認められます。留学先の大学としては、上で説明した「日本の高校を卒業してアメリカの大学に入学する」と同様のことが編入留学について当てはまります。英語力・学力・芸術のバックグラウンドに応じて出願校を検討してください。

出願:ポートフォリオとオーディション

アメリカの大学へ入学するには、さまざまな出願書類を用意して提出します。願書、高校の成績、エッセー、推薦状、各種テストのスコアなどです。これらの書類については、芸術系だからといって特別なことはありません。詳しくは、「必要な書類と合格のポイント」をご覧ください。

専門大学など、レベルの高い大学では、一般的な出願書類とは別に美術系ならポートフォリオ、パフォーミング系ならオーディションが課されることがあります。芸術留学ならではの条件について見ていきましょう。

ポートフォリオ

ポートフォリオ(Portfolio)とは、出願者がこれまでに描いた絵や撮影した写真などの作品集のことで、芸術の専門大学への出願の際に提出が求められます。レベルの高い芸術課程をもつリベラルアーツ・カレッジや総合大学でも、出願に際して、あるいは専攻課程に入るために、ポートフォリオの提出を課しています。

ポートフォリオの内容については、それぞれの大学のガイドラインに従います。たとえば「12~15点の作品。うち3点は写生によるもの。できのよいものから順番にそろえて提出。作品は最近のもので、さまざまな媒体を用い、色や線、形や構図などの理解度やセンスを示すものが望ましい。それぞれの作品紹介、媒体の種類、完成した日付等の情報を明記すること」などとなっています。

多くの大学では、実際の絵や模型などの現物の提出を求めています。また作品をキャンパスに持参して面接を受けるような大学もあります。しかし留学生の場合は実際の絵や彫刻を持ってアメリカの大学のキャンパスまで行くことはなかなかできません。航空便で送るのもたいへんです。そこでネット上に作品の写真をアップロードして共有するのが一般的です。

芸術の専門大学などでは、このポートフォリオが合否に大きく影響します。できるだけ自分の個性、芸術センス、才能、感性が最大限に表現されたポートフォリオを用意することが大切です。自分自身が思い入れの強い作品であることは大切ですが、第三者、とくにプロの意見もできるだけ得るようにするといいでしょう。

アメリカの大学は「ユニークな資質」を求めているので、ポートフォリオのガイドラインを逸脱しない範囲で、できるだけ個性をアピールできるようなユニークな作品を集めましょう。

オーディション

音楽やダンス、演劇といった「パフォーミングアート(Performing Arts)」の分野では、専門大学などからはオーディション(Audition)を受けることが求められます。

音楽においては、自分が専攻を希望する楽器を演奏します。声楽の場合は伴奏にあわせて歌唱します。レパートリーは大学に指定されることが多く、たとえば「バッハの前奏曲とフーガ」「ロマン派の楽曲」「ドビュッシーのソナタ」というようにジャンルや時代が指示されるのが一般的です。

ダンスや演劇のオーディションでは、さまざまな体の動きやオリジナルの振り付けを披露したり、ソロあるいはグループで即興の演技をしたります。やはり大学ごとにガイドラインが設けられています。演劇の場合は、どの劇の、いずれの場面の、どの登場人物のどのセリフ、というように細かな指示がされることもあります。

オーディションは、その大学のキャンパスに赴いて受けるのが原則です。留学生の場合は、そのためだけに渡米することはなかなか大変ですので、録音・録画した音声、動画ファイルをネット上で共有することが一般的です。とはいえレベルの高い大学ほど、実地にオーディションを受けるほうがより望ましい、あるいは必須としています。

実地でのオーディションでは、通常 10~15分の時間が与えられ、自分のレパートリーや審査官からのリクエストに応じて、演奏したり演技したりします。必ずしも和気あいあいとした雰囲気ではありませんが、大学に自らをアピールする最大のチャンスです。

以上、留学して芸術を学びたい場合に必要な基礎知識についてお伝えしてきました。とはいえ、これだけでは具体的なイメージがわかないかもしれません。自分の場合はどうしたらよいのかなど、より詳しく聞いてみたい場合は、栄 陽子留学研究所の個別の「留学相談」の利用をご検討ください。

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