アメリカの多くの大学は、出願書類の1つとしてSAT®(エスエーティ)というテストのスコア提出を求めています。
留学生については、このSAT®スコアの提出を免除される場合も少なくありません。名門大学ほどSAT®の受験を留学生にも求める傾向があります。
このSAT®とはどんなテストなのでしょうか? 詳しく解説します。
もくじ
1. SAT®とは?
2. SAT®のテスト内容
3. SAT®のスコア
4. SAT®の受験方法
5. 留学生でもSAT®を受けるべきか?
6. SAT®への批判と今後の展望
1. SAT®とは?
SAT®は、アメリカの高校生が受ける標準テスト(standardized test)です。昔はScholastic Aptitude Testの略で、やがてScholastic Assessment Testの略になり、いまでは何の略でもなくSAT®と呼ばれています。
アメリカは高校までが義務教育です。国土が日本の25倍もあるアメリカでは、高校によってレベルが大きく異なります。
そこで全米の「標準」に照らして高校生の学力を測るテストとして、SAT®が用いられているのです。SAT®とは別にACT®という標準テストもあります。
アメリカの高校生はSAT®(あるいはACT®)を、高2の春学期もしくは高3の秋学期に受けます。全米各地で、年に7回の受験日が設けられていて、複数回受けることも可能です。とはいえほとんどの高校生は1, 2回しか受けません。SAT®のために受験勉強する、ということも滅多にありません。なおSAT®は日本でも受験できます。
SAT®は、大学進学を希望する人にとって、最もポピュラーな標準テストです。1926年に、カレッジボード(College Board)という機関(現在はNPO)が実施したことから始まり、100年近い歴史を誇ります。
2. SAT®のテスト内容
SAT®は、以下の2つのパートから成ります。
・Math
・Evidence-Based Reading and Writing
数学力、読解力、文章力が、それぞれ「セクション(section)」と呼ばれるパートごとに問われます。テスト時間は3時間で、問題数は154問、数学のいくつかの設問を除いて、すべて選択肢問題です。かつては作文のセクションもありましたが、2021年に廃止されました。
SAT®のセクションと問題数 | ||
---|---|---|
セクション | 問題数 | 時間 |
Reading | 52問 | 65分 |
Writing and Language | 44問 | 35分 |
Math(電卓不使用) | 20問 | 25分 |
Math(電卓使用) | 38問 | 55分 |
合計 | 154問 | 3時間 |
テスト時間は3時間ですが、途中に10分の休憩と5分の休憩を挟むので、合計で3時間15分になります。
個々のセクションについて解説しましょう。
Reading
5つの文章(passage)を読み、それぞれに付された10ないし11の問いに答えます。文章ごとの単語数は500〜750です。文章の内容はフィクション、社会科学、自然科学、歴史などです。
Writing and Language
4つの文章(passage)を読み、それぞれの間違いや弱点を特定し、改善します。文章ごとに付された問いは11問、それぞれの単語数は400〜450です。論旨を明確にする、より適切な語句に変える、などが問われます。
Math
代数や解析などが問われます。電卓を使っていいセクションと使ってはいけないセクションとがあります。選択肢問題が大半ですが、数値による答えが求められる設問もいくつか含まれます。
3. SAT®のスコア
MathとEvidence-Based Reading and Writingそれぞれのセクションが、200〜800の間でスコアが算出されます。したがってSAT®の満点は1600です。
1200以上であれば、まぁ好スコアだといえます。平均は1060です。アイビーリーグ級の大学をめざすのであれば、1500以上は欲しいところです。
Evidence-Based Reading and Writingは、私たち日本人からすると「外国語としての英語」ですが、いわゆる「国語」の問題です。ちょっと英語が得意、くらいではなかなか太刀打ちできません。そのため留学生の英語力については、SAT®ではなくIELTS™やDuolingo等で評価する、というのが一般的です。
4. SAT®の受験方法
SAT®は日本でも受験できます。全国のインターナショナルスクールなどがテスト会場になっています。
受験の申込はオンラインで行います。カレッジボードのWEBサイトでアカウントを作成し、その上でSAT®のページからテスト日程とテスト会場を選択します。
受験料は、SAT®の登録費(60ドル)と日本での登録費(53ドル)を合わせて103ドルです。
5. 留学生でもSAT®を受けるべきか?
留学生に対してSAT®のスコア提出を求めている大学もありますが、多くの大学は、留学生の英語力はTOEFL®テストやIELTS™等で評価して、SAT®のスコア提出を必須とはしていません。
また日本の高校の数学レベルが高いことは、アメリカの大学のAdmissions Officeの人たちはそれなりに知っていますので、数学力については高校の成績によって評価する場合がほとんどです。
アメリカの大学が入学審査する際に最も重視するのは、高校の成績です。SAT®もTOEFL®テストも、それ以上の重要性をもちません。このことはぜひとも知っておきたいところです。
帰国子女など、SAT®で高スコアをとれる見込みがあるのであれば、補足資料として提出してもいいでしょうが、そうでなければ、無理してまでSAT®を受ける必要もありません。
とくに最近は、コロナの影響もあってSAT®のスコア提出を免除する大学が増えています。このことについて、以下に少し詳しくお話ししましょう。
6. SAT®への批判と今後の展望
SAT®は「標準テスト」であるものの、受験生の人種や経済状況などによってそのスコアに偏りがあることで、長く批判されてきました。この批判に呼応するかたちで、SAT®スコアの提出を必須としない、とする大学も増えてきました。スコア提出を任意とすることをtest-optional、入学審査においてテストスコアを考慮しないことをtest-blindといいます。
この傾向に大きく拍車をかけたのがコロナ感染症の拡大です。多くのテスト会場が閉鎖を余儀なくされ、実際にテストを受けられない高校生が急増したため、じつに全米で8割近くの大学がSAT®スコアの提出を求めない、ということになったのです。
とくに衝撃的ともいえたのが、カリフォルニア大学(University of California)が、2024年までテストスコア提出を免除する、と発表したのも束の間、「今後は入学審査材料としてテストスコアを一切用いない」、とする方針を打ち出したことです。この「カリフォルニア大学」にはUCLAやUCバークレーも含まれます。
もともとSAT®を重視してきたのは私立よりも州立です。それが、全米で最大規模の州立大学システムがこのような決断をしたわけですから、そのインパクトは甚大です。早速コロラド州とアイオワ州が、同じ方針をとるようになりました。
コロナ感染症の拡大が、大学に「テスト離れ」を促したかたちですが、いまのところ、テストスコアを審査に用いないことによる大きな問題は起きていません。UCも、「高校の成績(GPA)」を評価すればそれで十分、ということのようです。
カレッジボードは、2024年にはSAT®をデジタル化すること(アメリカ国外では先行して2023年から実施)、そしてテスト時間を2時間に短縮して受験者の負担を軽減することを発表しています。なんとかテスト離れを食い止めようというわけですが、パンデミックが原因で一旦test-optionalとした大学が、コロナ終息後に「テスト必須」に戻るかといえば、それは疑わしいといえそうです。Test-optionalあるいはtest-blindの流れは、まだしばらく続きそうです。
以上、アメリカで最もポピュラーな標準テストであるSAT®について解説しました。コロナ感染症の拡大をきっかけに、テストのありかたそのものへの問い直しがされています。これからアメリカの大学に留学しようと考えている人は、まずは高校の成績をよくすることに力を注いでください。テストより重要なのは成績(GPA)です。コロナ禍において、このことが再確認されたわけですから。