留学するなら知っておきたい。アメリカの大学の種類
アメリカの大学に留学する際に迷うのが「志望校選び」。というのも、アメリカには 4,000以上もの大学があり、それぞれの大学がそれぞれの特徴をいかして、個性的な教育を行い、個性的なキャンパスをつくりあげているからです。この多様性は、アメリカの大学の大きな魅力であり、またアメリカ留学のメリットでもあります。
このページでは、そんな個性豊かなアメリカの大学をいくつかのグループに分けて、それぞれの特徴を紹介します。留学先の大学を選ぶ前に、いろいろな大学の特徴をつかんでおきましょう。
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「アメリカ大学ランキング」
もくじ

- 1.私立大学
- 1-1.私立総合大学
- 1-2.リベラルアーツ・カレッジ
- 2.州立大学・公立大学
- 2-1.州立大学
- 2-2.公立大学(コミュニティ・カレッジ)
- 3.芸術大学・音楽大学
- 4.工科大学
- 5.その他の大学
1.私立大学
アメリカでは一般的に、州立よりも私立のほうに質の高い大学が多く見られます。
たとえば、「アイビーリーグ(Ivy League)」と呼ばれる名門大学 8校(ハーバード、イェール、ペンシルバニア、プリンストン、コロンビア、ブラウン、ダートマス、コーネル)はいずれも私立大学です。
私立大学は、大きく「私立総合大学」と「リベラルアーツ・カレッジ」に分類することができるので、それぞれの特徴を見ていきましょう。
1-1.私立総合大学

アメリカの私立総合大学には、アイビーリーグの名門 8大学をはじめとして、スタンフォード大学やシカゴ大学、マサチューセッツ工科大学やノースウェスタン大学といった、世界に名だたる名門大学がたくさん含まれています。
中規模から大規模の大学が多く、学生数は 5,000~10,000人くらです。州立大学のように学生数が 3万人を超えるなどということはありません。
私立総合大学は、メディカルスクール(医科大学院)やロースクール(法科大学院)、ビジネススクール(経営大学院)といった、専門性の高い大学院課程を設けています。これは私立・州立にかかわらず総合大学(= University)の一般的な特徴です。
もともと私立総合大学の多くは、後述するリベラルアーツ・カレッジとして設立されました。アメリカで最初にできた大学であるハーバード大学(1636年創立)もそうです。
それらのリベラルアーツ・カレッジが時代の要請にしたがって、医学や経営学など、専門性の高い課程を増設していき、規模が大きくなり、現在の総合大学に発展してきました。
近年ではとくに ITや環境、先端科学の研究・開発で世界をリードしています。ノーベル賞受賞者も数多く私立総合大学から巣立っています。
1-2.リベラルアーツ・カレッジ

リベラルアーツ・カレッジは、アメリカの大学教育のルーツです。いまでも全米に600校ほどあり、質の高い教育を提供しています。
リベラルアーツ・カレッジでは、幅広くさまざまな分野を学んで、異なる価値観を認めながら、バランスのとれた人格を形成することが大切だとされています。
専門性の高い分野を学ぶよりも、まず自分の将来の生きかたを模索し、その基礎をしっかりつくろうという教育です。
学生数はだいたい 1,000~2,000人くらいで、3,000人を超えることはめったにありません。あえて規模を大きくするこなく、アットホームでフレンドリーなキャンパスを築き上げています。
1クラスの学生数は 10~20人程度。先生も接しやすく、わからないことや悩みごとがあったときは、いつでも相談にのってもらえます。
また、リベラルアーツ・カレッジの多くは、豊かな自然に抱かれた美しいキャンパスをかまえています。学生たちはそこで寮生活を送ります。高校を卒業して親ばなれし、自分の力で考え、決断する力・自立する力を養います。寮生活では協調性やコミュニケーション力も磨かれます。
リーダーシップをはぐくむこともリベラルアーツ・カレッジが力を入れていることの1つです。卒業生たちは、政治・経済・文化・スポーツ・科学・教育など、さまざまな分野で先頭に立って活躍しています。
2. 州立大学・公立大学
アメリカの州立・公立大学は、私立大学に比べると歴史が浅く、リベラルアーツ・カレッジような教養よりも「実学」(工学や農学、看護学など)に力を入れています。
大きな州立大学は、研究機関としても大きな役割を果たしています。公立大学としては、二年制のコミュニティ・カレッジが、「だれでも望めば学べる」というアメリカの教育理念を体現しています。
2-1. 州立大学

農業や工業、林業など、より実践的な分野を開拓して、世界の実学の発展の牽引になったのがアメリカの州立大学です。
州立大学の大きなミッションは、州民たちに、望めばだれでも学べるチャンスを与えるというものです。できるだけ学費を安くして、また入学基準も低くして、門戸を大きく開いて州民を迎え入れています。
一方で、たとえば UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)や UCバークレー(カリフォルニア大学バークレー校)のように、「超」難関の州立総合大学もあります。これらの大学では、大学院課程がとても充実していて、最先端の研究が行われています。
1つの州にたくさんの州立大学がありますが、それらの州立大学のレベルは、大学名から推し量ることができます。
一般的にいって「University of 州名」という名称の大学のうち、その中心校が、その州では最もレベルが高い州立大学です。
たとえばミシガン州でいえば、University of Michiganの Ann Arbor校が州ではトップの大学です。
次いで「州名 State University」という名称の大学、その次に「University of 州名」の大学のうち中心校ではない大学や、「方角 州名 University」「方角 州名 State University」「University of 方角 州名」「町の名前 州名 State University」「University of 町の名前」と続きます。
大学名から見る州立大学の一般的なレベル
1 | 【University of 州名】の中心校 | University of Michigan- Ann Arbor University of North Carolina - Chapel Hill University of Wisconsin - Madison など |
---|---|---|
2 | 【州名 State University】 |
Arizona State University Iowa State University Michigan State University North Carolina State University など |
3 |
【University of 州名】のその他の大学 【方角 州名 University】 【方角 州名 State University】 【University of 方角 州名】 【町の名前 州名 State University】 【University of 町の名前】 |
University of Michigan - Flint University of North Carolina, Charlotte University of Wisconsin - Green Bay Eastern Michigan University Southeastern Oklahoma State University University of Northern Texas Kent State University University of Houston など |
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州立大学は州の税金によって運営されていますから、学費や入学審査の面ではその州の住民が優先されます。
州民には学費が安くても、留学生など州外の人は州民の 3倍以上の学費になることもあります。その場合は費用の負担が私立大学なみになってしまいます。とくに名門大学ほど学費も高くなります。
また、州立大学には、学生数が3万人を超えるようなマンモス校もあります。
大きな大学ほど、スポーツが盛んです。「ビッグ10」と呼ばれるスポーツリーグに所属する強豪校の多くが、州立のマンモス大学です。いずれも巨大なスタジアムやフィールドを設けていて、試合は全米に放送され、その興行収入は日本のプロスポーツをしのぐほどです。
2-2.公立大学(コミュニティ・カレッジ)
コミュニティ・カレッジ(Community College)は、二年制の公立大学です。全米に1,100校ほどあります。
コミュニティ・カレッジは、その名の通り、おもにその地域(コミュニティ)の住民のための教育を行っています。「望めばだれでも学べる」というポリシーがあるので、入学審査は基本的に行われません。その地域に住んでいれば、無審査で合格できます。
職業訓練に力を入れているのもコミュニティ・カレッジの大きな特徴です。自動車整備士や土木工、電気技師、看護師など、さまざまな職種の基本的な技術を教えています。そうすることで地域の雇用促進に貢献しているのです。カルチャースクールのような側面もあります。
コミュニティ・カレッジの大きな魅力は、なんといっても学費が安いこと。地域住民であれば年間 3,000~4,000ドルほどで学べます。留学生でも、年間の学費は 10,000ドルくらいです。留学生に奨学金は出してくれませんが、それでも 四年制大学に比べるとずいぶん安くなります。
コミュニティ・カレッジは規模が小さいところが多く、学生数はだいたい 1,000~3,000人です。在学生のほぼすべてが地域住民ですので、ほとんどのコミュニティ・カレッジでは寮を設けていません。みんな自宅から車で通っています。
また、働きながら学んでいる人が多いのも、コミュニティ・カレッジの特徴です。コミュニティ・カレッジの学生の平均年齢は 29歳といわれています。日本の高校を卒業してそのままコミュニティ・カレッジに留学すると、ちょっと違和感を覚えることになるかもしれません。
3.芸術大学・音楽大学

アメリカにも日本の音大や美大と同じような芸術の専門大学があります。その多くはニューヨークやボストンなどの都心にあり、そこにはプロの芸術家をめざす人たちが集まります。
出願の際は、音楽や演劇の場合はオーディションを受け、美術系をめざす人はポートフォリオと呼ばれる作品集を提出します。
また、そこでは音楽全般や美術全般を学ぶのではなく、バイオリンやグラフィックデザインなど、ある1つの分野を選んで入学審査を受け、その分野について集中的に学ぶことになります。
ニューヨーク市にあるアート系の大学では、Pratt Institute、Parsons School of Design、そして音楽・ダンスの名門 The Juilliard Schoolなどがよく知られています。また Fashion Institute of Technologyというファッション専門の大学もあり、世界中から学生を集めています。
ボストンにもすぐれた芸術系の大学がいくつかあります。Berklee College of Musicという大学は、ジャズの大学として有名で、日本からもたくさんの人が留学しています。
4. 工科大学

アメリカで産業拡大が始まる1820年代までは、リベラルアーツ教育を主眼とする大学しか存在しませんでした。しかし、工業・科学の発達に伴い、徐々に理系・工科系の大学の必要性が唱えられるようになります。
そして1824年に Rensselaer Polytechnic Instituteという工科大学がつくられたのを皮切りに、次々と工科大学、あるいは工学部や理学部が設けられていきました。
マサチューセッツ工科大学(MIT [Massachusetts Institute of Technology])やカリフォルニア工科大学(CalTech [California Institute of Technology])などが有名な工科大学として挙げられます。両方とも世界有数の名門大学ですが、とくに後者は、小さいながらも30名以上のノーベル賞受賞者を輩出しています。
5.その他の大学
ここまでの分類のほかのカテゴリーに属する大学もあります。いずれも特定の目的をもった大学です。
- A. 国立大学
- アメリカにはほんの数校ですが、国立大学があります。いずれも軍人を育てるための士官学校です。
- B. 職業分野ごとの大学
- 調理や看護、会計など、特定の職業分野を教える大学も、少数ながらあります。
- C. 特定の人種への教育に力を入れている大学
- 黒人やヒスパニック系、ネイティブ・アメリカンなど、特定の人種への教育に力を入れている大学もあります。2021年に副大統領になったカマラ・ハリスさんは、いわゆる「黒人大学」のハワード大学で学びました。
- D. 宗教・宗派ごとの大学
- 特定の宗教・宗派の理念にもとづいた教育を行っている大学です。
- E. オンライン専門の大学、営利大学
- オンラインのみで運営している大学もあれば、「営利」の大学(学生からの学費によって利益を得ることを目的とした大学)もあります。
ハーバード大学から始まったアメリカの大学。いまではアメリカ社会の、そして世界の多様なニーズに応えるために 4,000もの大学が門戸を開くまでに発展しました。大学教育の選択肢の多さでいえば、アメリカは間違いなく世界一です。
ところで、アメリカの大学には「偏差値」というものがありません。では、4,000もある大学からいったいどうやって志望校を選べばいいのでしょうか?
まずはここまで述べたような全体像をつかんだら、次に「大学選びのポイント」のページを読んでみてください。
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