アメリカには4,000校以上もの大学があり、その中から自分に適した大学を探し出すのはたいへんなことです。とくに留学生の場合は、アメリカに行って直接キャンパスを見学することもなかなかできません。
志望校はじっくり時間をかけて慎重に選びたいもの。ここでは、留学生が志望校選びの際に手がかりとなるポイントをいくつか紹介します。
大学検索はこちらから:アメリカの大学データサイト
「アメリカ大学ランキング」
もくじ
- 1.ポイント1. 大学の種類:私立か州立か、リベラルアーツ・カレッジか総合大学か
- 2.ポイント2. 大学の規模:小規模大学か大規模大学か
- 3.ポイント3. 地域:東部? 西部?
- 4.ポイント4. 立地:都会・郊外、それとも田舎?
- 5.ポイント5. カリキュラム:何をどう学ぶ?
- 6.ポイント6. 難易度:むずかしい大学に挑戦? それとも...
- 7.ポイント7. 費用:どのくらいお金がかかるのか
- 8.ポイント8. 学生の構成:どんな学生がいる?
- 9.スクールカタログですべてがわかる!
- 10.最新の情報はホームページで!
- 11.キーワードは Comfortable and Challenging !
ポイント1. 大学の種類:私立か州立か、リベラルアーツ・カレッジか総合大学か
「アメリカの大学の種類」で解説しているように、アメリカの大学はリベラルアーツ・カレッジや総合大学、芸術大学など、いくつかの種類に分類することができます。それぞれの特徴を知り、どの分類の大学に留学するかを検討します。
また、共学か男女別か、というのも1つのポイントです。男子大学というのはほとんどありませんが、アメリカには約30の女子大があります(ほとんどがリベラルアーツ・カレッジです)。女子大では、学生同士のきずなが強く、お互いを助けあい、刺激しあう環境がつくられています。
とくにリーダーシップをはぐくむことに力を入れているのが女子大の特徴で、たくさんの卒業生が政界や財界、芸術の分野などでリーダーとして活躍しています。
たとえば、ビル・クリントン元大統領の妻で、オバマ政権で国務長官を務め、アメリカ史上初めて大統領候補となった女性、ヒラリー・クリントンさんは、マサチューセッツ州の名門女子大であるウェルズリー・カレッジを卒業しています。
州立を選ぶか私立にするか、ということについては、リベラルアーツ・カレッジのほとんどが私立であり、アメリカの大学の歴史は私立大学からスタートしましたので、「良質の大学は私立に多い」というのがアメリカでは常識になっています。
州立大学は州の税金で運営されているので、基本的には州民を優遇します。州立のメリットは学費が安いことですが、州民と州外出身者とでは学費が大きく異なります。州外出身者は、州民に比べて数倍高い学費を支払うことになります。
ポイント2. 大学の規模:小規模大学か大規模大学か
大学の規模はふつう在学生数で表されます。アメリカには在学生が1,000人に満たない大学から 3万人を超えるマンモス大学まであります。一般的にいって、Universityと名の付く総合大学は規模が大きく、リベラルアーツ・カレッジをはじめ Collegeと名の付く大学は小規模です。
マンモス大学のほとんどは州立大学で、アイビーリーグをはじめ私立の名門大学の学生数は 4,000~8,000人くらいです。
大規模大学と小規模大学には、それぞれに以下のようなメリット・デメリットがあります。
大規模大学のメリット
- 専攻学科や科目の数と種類が多い
- 図書館やスポーツ施設などが充実している
- 留学生を含めて学生のバックグラウンドが多様である(とくに私立の場合)
- スポーツに力を入れていて、全米レベルの選手権も行われる
大規模大学のデメリット
- 1クラスの学生数が多い
- 一般教養科目は教授ではなくTA(助手の大学院生)が教えることがある
- 教授と接する機会が少ない
- 個人指導が期待できない
- 大学院生の教育・研究のほうに重点が置かれている
- 課外活動でリーダーシップをとれる機会が少ない
- 親しい友だちができにくい
小規模大学のメリット
- 1クラスの学生数が少ない
- 一般教養科目でも教授が熱心に教えてくれる
- 教授やアドバイザーと親しくなれる
- 個々の学生が自分の能力やペースにあわせて学習でき、独自な調査・実験に取り組める
- 課外活動で活躍できる機会が多い
- キャンパスの雰囲気がフレンドリーで、友だちもつくりやすい
小規模大学のデメリット
- 専攻学科や科目の数や種類、教授の数が少ない
- 設備が大規模大学に比べて劣る
- スポーツにあまり力を入れていない
こうしてみると、大規模大学のメリットをそのままひっくり返したのが小規模大学のデメリットであり、大規模大学のデメリットの反対が、小規模大学のメリットであることがわかります。
規模の大小だけで大学の優劣を決めることはできませんが、アメリカでは一般的に「大学は小規模で、大学院は大規模で」というのが望ましいとされています。また「教育」に力を入れているのが小規模大学で、「大学院での研究」に力を入れているのが大規模大学である、というのも一般的な傾向です。
留学生にとって、親身でていねいな指導とサポートを得られることは、留学生活を乗り切るためにとても大切なことです。大規模大学ではそのような指導とサポートを得られにくく、よほどの英語力と行動力がなければ、落ちこぼれかねません。
自分に自信があり「あえて厳しい環境に自分を置きたい」というのでなければ、日本の高校を卒業してアメリカの大学に留学する場合には、まずは小さな大学に行くことを検討するのがよいでしょう(その後で大規模大学に編入することも可能です)。
ポイント3. 地域:東部? 西部?
国土が日本の25倍もあるアメリカは、東部と西部、北部と南部とでは気候はもちろん、歴史的成り立ちも違い、そこに住む人の気質にも差異があります。よく言われることですが、東部と西部では空の色がまったく違います。
教育レベルが高いのは東部から北東部です。とくにニューイングランド地方(コネチカット州、メイン州、マサチューセッツ州、ニューハンプシャー州、ロードアイランド州、バーモント州)には、伝統ある名門大学が集まっています。マサチューセッツ州のボストンは、アメリカの教育の中心地です。
地域的な希望がとくにないのであれば、まずはニューイングランド地方とその周辺の大学を見ていくとよいでしょう。
アメリカの大学は、国の歴史と足並みをそろえるように東から西へと展開していきました。西部の大学は一般的にいって私立よりも州立のほうがよく整っています。これは東部の大学のありかたと比べると大きく異なる特徴です。
西部へは、東からゴールドラッシュでやってきた人々、中南米から北上してきた人々、そして太平洋を渡ってきた移民など、さまざまなバックグラウンドや教育レベルの人たちが集まりました。州立大学は、そうした人々の必要に応じるために、すべての人が社会人として最低限必要な教養と技術を身につけられるように門戸を開きました。
なかでも、カリフォルニア州を筆頭に太平洋に面したオレゴン州とワシントン州は、他の西部の州に比べて教育レベルが高いといえますが、留学生に対しては主として語学教育に力を注いでいるという面もあります。
※ アメリカの各州ごとの地理や気候などの特徴、代表的な大学などを、姉妹サイト「アメリカ大学ランキング」の「アメリカの50州を知る」のページで紹介しています。ぜひ参考にしてください。
ポイント4. 立地:都会・郊外、それとも田舎?
立地とは、キャンパスのある場所が都会か、郊外か、田舎かということです。アメリカの国土のほとんどは「田舎」です。「大学では寮生活を通じて親離れをする」ことが重要だと考えられているアメリカでは、たくさんの大学が都会の喧騒から離れた小さな田園町にキャンパスをかまえています。
地域コミュニティの交流拠点として機能している大学も少なくありません。落ち着いて勉強に励み、学友たちと生活を共にし、自然を満喫する、それがアメリカの典型的な大学生活です。
一方、アート系を専攻する人にとっては、都会にある美術館やシアター、コンサートホールは大きな魅力です。芸術系・音楽系の専門大学の多くは、大都市にあるか、都市へのアクセスが便利なところにあります。
ポイント5. カリキュラム:何をどう学ぶ?
カリキュラムの観点から大学を比較検討するには、
- 一般教養課程
- 専攻課程
についてよく調べましょう。
アメリカの高校生の7割以上が大学入学の時点で専攻を決めていないので、専攻を決めておく必要はありません。大学に入っていろいろな科目をとりながら、自らの方向性を探していけばよいです。
カリキュラムだけで志望校を選別するのはなかなかむずかしいことですが、アメリカの大学の教育システムについて慣れ親しむためにも、しっかり時間をかけて調べてみるのがよいでしょう。
※ アメリカの大学の専攻分野については「アメリカの大学 『専攻』はどう選ぶ?」のページを、科目の単位や成績の仕組みについては「単位と成績の仕組み」をご覧ください。
ポイント6. 難易度:むずかしい大学に挑戦? それとも...
アメリカには「偏差値」というものがないので、日本と違い大学の難易度を見きわめるのは簡単なことではありません。
難易度を測るものとしては、
- 入学生のSAT®スコアの平均
- 入学生の高校の成績(GPA)の平均
- 合格率
- 要求されるTOEFL®テストやIELTS(TM)のスコア
といったものが指標とはなりますが、そもそもアメリカの大学はある1つの要素だけで合否を決めることはありません。とくに私立大学ではテストの点数やGPAといった数値「以外」の要素も重視します。大学を選ぶ際にTOEFL®テストの要求スコアだけで考える必要はありません。まずは行きたいという気持ちを優先しましょう。
※ SAT®については「必要な書類と合格のポイント」ページの「テストスコア」の箇所を、GPAについては「単位と成績の仕組み」ページの「アメリカの大学の成績」の箇所を見てください。
※ 栄 陽子留学研究所では独自の視点と研究に基づいて、アメリカの四年制大学の難易度を評価しています。各大学の難易度については、姉妹サイトの「アメリカ大学ランキング」を参考にしてください。
ポイント7. 費用:どのくらいお金がかかるのか
アメリカの大学の1年度の学費は、私立大学で 35,000~60,000ドル、州立大学は 15,000~45,000ドルくらいです。日本の大学と比べると学費は高額だといえます。
学費の上限を決めおいてそれを上回る学費の大学は対象からはずす、という考えかたもありますが、どうしても行きたい大学には、その学費にかかわらず出願したほうがいいでしょう。奨学金を得られるかもしれないので、合格校がそろった時点で、行くか行かないかを決めても遅くはありません。
※ 学費やその他の費用についての詳しい情報は「大学留学の費用」を、奨学金については「大学留学のための奨学金」をご覧ください。
ポイント8. 学生の構成:どんな学生がいる?
学生の構成というのは、その大学の学生がどのようなカテゴリーの人たちで構成されているかということです。
たとえば、
- 男女比
- 人種構成
- 留学生の割合
- 学生の出身地域
- Full-time Studentsの割合
などです。
このうち人種構成という項目は日本ではなじみが薄いかもしれませんが、「多様性」を重視し、学生の多様化に取り組んでいるアメリカの大学では、人種ごとの在学生の割合を公表しています。南部や西部には、ある特定の人種への教育に力を入れている大学もあります。都会の大学ほどマイノリティ(白人以外)の割合が高いというのも一般的な傾向です。
Full-time Students というのは、その大学の「学生であることを本分とする学生」のことです。これに対して、働きながら通学し、いくつかの科目と単位だけをとっている学生のことを Part-time Students といいます。留学生がめざしたいのは Full-time Students が多い大学です。Part-timeの学生が多い大学では、働きながら通っている人が多く、寮が整っていないこともしばしばあり、また学生の年齢層も高いので、高校を卒業したばかりの人には溶け込みにくいことがあります。
各大学の学生の構成は「アメリカ大学ランキング」の各大学のページで紹介しています。
スクールカタログですべてがわかる?!
スクールカタログ(school catalog)は、各大学が発行している大学紹介の冊子です。「カタログ」といっても相当のボリュームのあるもので、毎年あるいは2年に1回くらいのペースで刷新されます。
スクールカタログには、
- 大学の理念・歴史
- 年間のスケジュール
- カリキュラム
- それぞれの科目の講義要綱
- 成績評価のしかた
- 卒業するための要件
- 停学・退学になる条件
- 教員・職員の紹介
- 課外活動
など、その大学について知っておきたいほぼすべてのことが網羅されています。
これを読めばその大学の全貌がわかるだけでなく、複数のカタログを読み比べることで、志望校選びの指針をたてることができます。実際にアメリカまで行ってキャンパスを見学することがなかなかできない留学生にとって、アメリカの大学を知る大きな手がかりになるものです。
スクールカタログの内容は、それぞれの大学のホームページで確認できます。Catalogとか Bulletinという項目がカタログに相当します。
※スクールカタログについては「栄 陽子留学研究所のYouTubeチャンネル」の、「【留学生必読!】大学選びに必須の「スクールカタログ」とは?」でも紹介しています。
スクールカタログで英語力もつく!
スクールカタログはすべて英語で書かれています。読み慣れないうちは戸惑うことも多いかもしれませんが、自分の興味があること、自分が希望している専攻分野のことなどは、自然と読めるようになっていきます。英語「を」学ぶのではなく、英語「で」学ぶ第1歩を、スクールカタログを読むことで踏み出すことになるのです。
いくつかの大学のカタログに目を通していくうちに、重要なポイントを探し出し、その項目を重点的に読み、それほど重要でないと思われる事項についてはしっかり読まなくても大丈夫だというように、読むコツを習得するようになります。これは実際にアメリカの大学に入ってから教科書を読むときにも役に立つ読書法です。つまりスクールカタログを読むことは、留学生活の予習にもなるわけです。
最新の情報はホームページで!
大学のホームページそのものも、スクールカタログと同じく重要な情報源です。とくに最新の情報がアップデートされるのが早いのがホームページの大きな特徴です。
ホームページは、カタログと同様、英語で書かれていますが、どの大学のものも似たような構成になっているため、複数の大学のホームページを見ていくうちに必要な用語も自然に覚えられるようになります。
一般的な大学のホームページの構成は以下の通りです。
About | 大学の概略、統計データ、学費 |
---|---|
Admission | 入学要件 |
Academics | カタログ、カリキュラム、卒業要件、講義概要、年間カレンダー |
Student Life | 寮生活、行事、委員会・サークル活動 |
Athletics | スポーツチームの概要、試合スケジュール、勝敗表 |
Arts | ギャラリーなどの設備、演劇や展覧会の情報 |
Alumni | 卒業生への情報、同窓会案内、寄付金募集の案内 |
"About" ではその大学の概要がわかります。学長のあいさつ、大学の理念や歴史、統計データ、キャンパスマップ、就職先などが記載されています。
"Admission" は留学生にとって重要な項目です。出願のプロセスや入学要件、提出書類などについて書かれています。大学によっては、1年生として出願する場合(Freshman Admission)、編入生として出願する場合(Transfer Admission)、大学院生として出願する場合(Graduate Admission)、留学生として出願する場合(International Admission)の別に入学要件を記載しています。
"Academics" にはカリキュラムの概要が掲載されています。卒業までの必須科目や、選択科目、個々の学科(Department)や科目(Course)についての概要もここにあります。
キーワードは
Comfortable and Challenging !
大学を絞り込んでいくにあたって考慮しておきたいのが、その大学が自分にとって Comfortable and Challenging かどうかということです。
Comfortable とは「居心地がいい」ということ。自分にとって落ち着いて勉強しやすい環境であるかどうか、ということです。リラックスして、自分らしく充実した大学生活を楽しめる、そんな大学が望ましいことになります。
Challenging とは「やる気を起こさせる」ということ。勉強に、課外活動に、つねに刺激を受けながら打ち込んでいけるかどうか、ということです。すこし背伸びをするくらいの環境が望ましいということになります。
とはいえ、どの大学が自分にとっての Comfortable and Challenging な場所であるかの見きわめはむずかしいものです。 困ったときは、ぜひ栄 陽子の「留学講演会(無料)」に参加したり、「留学相談」を利用したりして、納得のいく大学選びにお役立てください。