日本とは大違い! アメリカの大学スポーツの実態
アメリカにはNCAA(National Collegiate Athletic Associationの略。「全米大学体育協会」と訳される)という組織があって、全米の大学のスポーツチームと競技の運営ルールを定めています。
1,100以上の大学が、このNCAAに加盟しています。
日本にもインターカレッジというものがありますが、アメリカの大学スポーツはプロ並みにすごいものがあって、オハイオ州立大学(Ohio State University)などは50,000人規模のフットボール競技場をもっています。
昔からノートルダム大学(University of Notre Dame)とオハイオ州立大学の試合は、全米の注目の的になっています。
アメリカの大学スポーツのDivisionとは?
アメリカの大学スポーツは、野球やフットボールなど種目ごとに3つのレベルに分かれています。
このレベルのことをDivisionといいます。
レベルが高い順からDivision I、Division II、Division IIIと呼ばれています。
「○○大学の野球チームはDivision I」とか「××大学のアイスホッケーチームはDivision II」という具合です。
Division Iのチームをたくさん抱えている大学を「Division I大学」といいます。
Division IIIもまた、インカレではありますが、日本の高校で部活をしていたのであれば、留学生でも活躍できるチャンスは十分にあります。
このDivisionも、NCAAのルールに則って決められています。
アメリカで野球やバスケットボールをやりたくて、Division Iの大学に留学したいと相談にくる人もいますが、もちろんトライアウト(実技の審査)に参加しなければなりません。
このトライアウトにはプロを目指す全米の一流選手がこぞって集まりますから、日本人では太刀打ちできないことが多いのが現状です。
またアメリカの大学は成績がよくないと入学できません。
Division Iで活躍しようと思うなら、英語力も英検の準一級くらいはほしいところです。
在学中も、成績が悪くなると試合に出してくれませんので、なかなかたいへんです。
裏金が飛び交うアメリカの大学スポーツ
NCAAのスポーツ種目のうち、参加大学が多いのは、
バスケットボール
野球
クロスカントリー
フットボール
です。
次いで
テニス
ゴルフ
陸上
サッカー
バレーボール
ソフトボール
レスリング
水泳
などが続きます。
バスケットボールやフットボールなどは、もうアメリカの国技みたいなものですから、それはすさまじい人気です。
学生の引っこ抜きのためにコーチが暗躍したりするウワサも絶えず、裏金をつかったコーチや監督が逮捕されたなんてニュースも最近ありました。
NCAAの種目のうち、参加大学があまり多くないのが
スキー
ラクロス
体操
などです。
参加校がさらに少ないのは
フェンシング
アイスホッケー
レスリング
ライフル
などです。
レスリングはありますがボクシングはありません。柔道も、もちろん相撲もありません。
アイスホッケーはそんなに多くの参加大学があるわけではないのに、日本からアイスホッケーでアメリカに留学したいという人がけっこういます。
現在も当研究所からアイスホッケーで留学している学生がいますが、残念ながらDivision IIです。
心身共にタフであること
前述したように、選手であり続けるためには、しっかり勉強して成績もある一定の水準をキープしなければなりません。
アメリカはシーズンごとにプレイするスポーツが違いますが、シーズン中の勉強はもう大変です。
70点を2学期続けて切ると退学ですし、退学にならないまでも、成績が悪いと試合に出ることができません。
コーチや監督も、せっかく集めた学生が試合に出られなくなるのを防ぐために、チューターと呼ばれる補講講師をつけたりと必死で選手を援助します。
もともと1週間に20時間以上は練習してはならないというNCAAのルールがあり、学生はみんな寮生活を送りますから、炊事や買い物、通学に時間をとられることがありませんので、勉強する時間は十分にあります。
スポーツのせいで勉強ができないという言い訳は成り立ちません。
シーズンの違いを利用して、2つのスポーツをする学生さえいますから、心身共にタフで、頭も冴えていなければならないのです。
コーチとの入学交渉
「強い選手なら留学生だってほしい」とコーチや監督たちは思っています。
ただ勉強についていけないと大変なので、あまりに成績が悪かったり英語力が低いと試合に出られませんし、そもそもAdmissions Office(入学審査を専門に行う部署)が首をたてにふってくれません。
当研究所も、スポーツにとても秀でている留学生の入学に関してコーチと交渉することがあります。
たとえば、その大学の入学生の高校時の平均GPA(成績の平均値)が3.0だとすると、コーチの力で2.8までなんとかしてほしいとか、TOEFL®スコアの基準は80だけど、それを61で入れてくれないか、といったような話し合いです。
GPAより、TOEFL®テストの交渉のほうが、可能性があります。
英語力はともかく、勉強ができないとにっちもさっちもいかないからです。
オリンピックの意外な常連、ハーバード大学
ところで、どの種目にも、Division Iにハーバード大学が入っています。
野球もバスケットボールも、アイスホッケーもです。
オリンピックに出る選手の多くはハーバードの学生だったという時代もあったようですが、文武両道をちゃんと実行しているわけですねぇ。
これまでにオリンピックで取得したメダル数は100を超えます。
「受験」だ「偏差値」だとばかり言っている日本の大学はなかなか太刀打ちできませんよねぇ。。。
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。