留学のための「奨学金」、それって「借金」でしょう!?

アメリカの大学生が、当研究所にインターンとして勤めています。

インターン期間は3か月という規定なので、1年に4人の学生がアメリカ各地からやってきて、いろいろなお手伝いをしてくれます。

インターン生たちのさまざまな生きざま

インターンシップが終わると、アメリカに帰国して大学を卒業したり就職したりして、また当研究所を訪ねてくれる人も少なくありません。

ある学生は、インターンを終えてアメリカの大学を卒業後、イラクで3年間過ごし、ハーバードのビジネススクール(経営学大学院)に9月から入学することになったので、夏の間に平和で懐かしい日本に寄ったと言って、まさに映画に出てくる兵士のような写真を見せてくれて驚いたことがあります。

今年の夏には、インターンを終えて大学を卒業し、いくつかのロースクール(法科大学院)に合格したので、入学前に日本で楽しい時間を過ごしたいとやってきた人がいます。

成績はオールAです。University of Chicago、New York University(NYU)、University of California, Berkeleyなどに合格し、NYUに行くことに決めたそうです。

1年間の学費は約66,000ドル。生活費を含めると日本円で約1,000万円かかります。卒業までの3年間にかかる費用を全額、借りるということです。

彼は大学の4年間の費用はお父さんが負担してくれたのですが、今度は自分が背負うというわけです。

「そのお金、卒業後に返せるの?」と聞いたら、「ロースクールを卒業して弁護士になって最初の仕事が、自分の破産手続きだというのが、弁護士の卵たちの1番の笑い話」なんだそうです。

3,000万円の借金という人生の賭け

アメリカの弁護士は、若くてもかなり稼ぎますから、借金を返すことができるようですし、弁護士でなくても、ロースクールを出た人は企業で高給取りになるし、政治家や役人にも、ロースクール出身の人は多いのです。

先日、当研究所を尋ねてくれたイリノイ州の大学の学長も弁護士でした。

ロースクールの勉強はあまりにも大変です。もちろん、アルバイトをする暇はありません。

年に2回しかないBar Exam(日本でいう司法試験)を突破しなければならず、おまけに州によっては3回以上は受けられません。

インターンでいたときは、まだ何になるか何をするか決めていない、と言っていましたが、1年経って、22歳にして人生の賭けに出たようですね。

留学のために奨学金を「借りる」?

彼が訪ねてくれた同じ日に、いくつかの留学カウンセリングがあって、その中に「奨学金を借りて留学する」という話がありました。

毎月、12万円は借りて、両親が10万円負担するというものです。

ところが260万円では、留学にはちょっと足りません。

当研究所から留学した人のうち、大学からたくさんの奨学金(返済する必要のないものです)をもらって、費用が最も安く済んだ人で、今年、大学に支払う費用が約19,000ドルです(学費、寮・食費込み)。

それに医療保険、渡航費、教材費、お小遣いが必要になります。

またアメリカはヨーロッパにもメキシコにも近く、学生として安くいろいろな所へ旅行するチャンスもあります。

アメリカ全土を見て回るのも、大変ですが貴重な経験になるはずです。

そういったことを、お金が足らないという理由ですべてあきらめなければなりません。

また、卒業後にインターンとして残るのも、費用面でむずかしくなります。

借金を勧める日本の先生たち

外国でカツカツの生活を送るのは、精神的にもとても大変だから、1年行くのを延ばして、放送大学で単位を取得してその単位を移行すれば、留学は3年で済むので、ずいぶん楽になる、また自動車工場などで期間工として働けば1年で約300万円を稼ぐことができて、2年間働けば、もう1円もお金を借りる必要などない、と説明を始めましたが、お母さんは、「高校のほうで奨学金を勧めてくれて、手続きの準備に入っているんです」と。

まるでお金をもらえるとでも思っているような返事。「それって、18歳の子どもに500万円の借金を背負えって高校も国も奨励してるってことですよ。

お母さん、毎月5万円、10万円貯金しようと考えてみて。なかなかできないでしょう? この子は卒業してすぐに毎月5万円を返さなければならない立場に追い込まれるのよ」

と、まぁ私はキレまくり。何が腹立つって、高校が安易に奨学金の名のもとに学生に借金を勧めることですよ。

昔のように年々、給料が確実に上がる時代ならともかく、先生たちは何を考えているんだか。

「貸与型の奨学金」は「借金」に名を改めるべき!

日本の大学生の2人に1人がお金を借りていて、自己破産する人もいるというではありませんか。

この人たちは若くして貧困に追いやられます。まして外国に行くと、就職も日本以外の国でしたり、卒業後1年インターンをしたり、大学院に行こうとしたり、予定とは違うことが起きてくるのです。

最近は、貯蓄から投資へ、とかで、小さい頃からお金のことを教えるのが流行っていますが、まずは借金しないこと、借金したらどういうことが起きるかということを、一番に教えてほしいものです。

また、「奨学金」を「ローン」とか「借金」という名前に変えてほしいと思います。そうすれば、学校の先生たちも安易に勧めなくなるでしょう。

アメリカ人のロースクールへの借金は投資です(それでも怖い話だけど)。日本の18歳の留学への借金は、借金そのものです。

みなさんどう思います?

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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