障害が学習を妨げてはならない。アメリカの大学の懐の深さ

 

アメリカの大学から保護者への手紙

アメリカの大学に留学中のとある学生について、大学側から当研究所のボストンオフィスに連絡がありました。

A君の様子がおかしいので、病院で検査をしてもらってはどうかというのです。

どうやら発達障害ではないかと大学側は考えていて、どのようにしたらよいか相談をしてきました。

本人は、多少の自覚はあるが日本では何の検査もしていないし、両親が望まないとも言っているとのこと。

そこで、先生が、両親宛に手紙を出してよいか、という相談です。

学習の違いは法律で守られている

先生は次のような手紙を両親に送りました。

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To the Parents of A.

私の名前はN.D.で、留学生のための英語の指導をするディレクターです。

A君は英語のコミュニケーション能力が非常に高い勤勉な学生です。

しかし、彼は物忘れと、新しい情報を思い出すことができないことが原因で、授業についていくのに苦労しています。(中略)

これまでに私はA君と、彼の物忘れを克服するさまざまな方法について話し合いました。

複数の方法を試し、役立つ方法もいくらか見つかりましたが、私は、A君の言葉を思い出す能力に問題があることに気づき始めました。

コミュニケーションをしていて、彼が突然、言いたい言葉を見つけることができずイライラすることがあります。

これは英語の習熟度の問題、つまり使いたい英単語を特定して選択できないというより、失語症(aphasia)のような病状と見受けられました。(中略)

A君は、自分の脳と、物事を覚える能力に何か重大な問題があると感じていると私に言いました。

A君の説明によると、ご両親にはA君が大学に合格できない、または大学を退学になるのではないかという懸念があったため、彼に医学的検査を受けさせたくないとのことです。

そこで私がご両親に説明したいことは、アメリカには「学習の違い」(learning differences)がある人たちを保護する法律があるということです。

もしA君が記憶に関する何らかの問題を抱えていることが判明した場合、大学でのA君の成功を支援するために、私たちはサポート態勢を整えることができます。

この問題についてのA君の懸念を踏まえると、この健康上の謎を解決することによって、A君が心の平穏をもつのは、彼にとって有益だと思います。

記憶が困難なことが、何か身体的なことに起因するかどうかを判断するために、さらなる医学的検査をしたいというA君の希望を、この手紙を通じてサポートできればと思っております。

Thank you for your taking the time to read my letter. Please let me know if you have any questions.

Best,
N.D.
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ハーバードやUCLAも

もちろん、ご両親は夏休みにA君が帰国してすぐに病院で検査を受けさせ、アスペルガー症候群ということが判明しました。

それからは大学側の協力のもと、いろいろなヘルプを受けて、何とか大学生活を送っています。

ちょっと日本では考えられないお話です。

アメリカでは発達障害は広く認知されていて、さまざまなサポートが用意されています。障害のある人に手を差し伸べないのは差別だという考えです。

どの学校にも支援する仕組みがつくられています。

ハーバードもUCLAですらそうです。

日本でも最近、発達障害という言葉が定着してきましたし、小学校などでも、特別支援学級が設けられるようになっています。

大学も発達障害をもつ学生への支援に乗り出しています。

そうはいっても、日本の大学の先生が学生の様子を事細かに見て、心配してくれるなんていうのはちょっとイメージできません。

アメリカの大学の懐の深さをあらためて思い起こされるエピソードでした。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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