初歩的なことで留学につまずいてしまった残念な話

4月というのは日本では入学シーズンです。

また受験の結果次第では、日本ではなく海外への進路を考えるタイミングでもあります。

ときに考えられない話も飛び込んできますが、とある日に受けた2つの相談があまりにひどいので、私はちょっとショックを受けました。

寮があるコミュニティ・カレッジを紹介してもらったのに・・・

1つは、これからアメリカのコミュニティ・カレッジ(公立の二年制大学)に出願するという話です。

コミュニティ・カレッジは入学日のギリギリまで願書を受け付けていますので、大丈夫といえば大丈夫なのですが、私たち日本人留学生は、願書を出してからも細かい手続がいろいろあります。

予防接種や健康診断を受けなければならず、ビザ申請や面接もあって、かなり時間がかかるのです。

それはともかくとして、相談に来られたご本人とお母さんは、あるエージェントから「最初はホームステイがいいですよ」と勧められたそうです。

でも、ホームステイはいい噂もあまり聞かないし、けっこうお金もかかるので、寮のある西海岸のコミュニティ・カレッジを紹介してもらったとのこと。

英語力については、日本の英検2級で入学できるところを選んでもらったそうです。

でも結局、そのエージェントは断ったので、当研究所に、その大学への出願手続を手伝ってほしい、また将来四大に編入するためにどんな科目をとるべきか教えてほしい、というのが相談の趣旨でした。

西海岸のコミュニティ・カレッジはとくに職業訓練所の要素が強く、寮のある大学は滅多にないはずだと思いましたが、スタッフが詳細を調べたところ、「寮」というのはキャンパスからバスで10分くらい行ったアパートで、住んでいるのはほとんどが留学生です。

また食事はついていません。

また入学後すぐに「プレイスメントテスト」という英語と数学のレベル分けテストを受けることになっていて、英語のスコアが低い場合は、1学期ないし2学期(つまり半年〜1年)は外国人のための英語の授業「のみ」を受けるということもわかりました。

学費は年間10,000ドル程度で安いのですが、その他の費用がかかるし、二年制のコミュニティ・カレッジを卒業するのに3年かかる可能性が大きいのです。

その大学の情報は日本語で書いてあったので、それを読んで出願を決めたのに、と母子ともどもガッカリしていました。

経済的にもちょっとむずかしいということです。この春に高校を卒業した子の話です。

大学卒業まで6年間?

別のケースでは、お母さんのみが相談に来られました。

息子さんはアメリカの大学に留学中です。その息子さんから、当研究所に聞いてほしいことが2つあるというのです。

1つは、来年もっとレベルの高い有名な大学に編入したいがどうすればいいのか、ということ。

本人はすでに日本の大学に2年行っていて、いまの大学にはかなり多くの単位を認めてもらって編入し、やがて1年経つのですが、持ってこられた書類を見てみると、なぜか1年生がとる科目ばかりとっているのです。

日本の大学と専攻が違うこともありますが、もう少しやりようがあるはずです。おそらく卒業に向けてどのように単位をとっていけばいいのかわかっていないと考えられます。

日本の大学に2年、そしてアメリカの大学に2年、それからさらに(本人曰く)レベルの高い大学に編入して2年で卒業しようということ?

卒業まで6年かかるということよね。

いま留学中の大学の履修科目を工夫して1年か1年半でサッサと卒業して、大学院でレベルの高いところを狙ったら?

本人が行きたいと言っている大学は年間800万円くらいかかるのよ、それをまた2年出すわけ?

本人が少し働いて大学院に行く方向で準備したら?

第一、来年に編入なんておそらく無理。

このようなことを矢継ぎ早に言いましたが、お金の話になったらお母さんはそんなに払えないとおっしゃる(そりゃあそうでしょう)。

びっくり! 日本円で学費を請求する留学エージェント

そして息子さんからのもう1つの質問です。

いまの大学の学費について、息子さんが支払っている額と、当研究所からその大学に留学している人たちの額とがどうやら違うようなので、聞いてみてほしいと言うのです。

「申し訳ないけど、うちから留学すると大学から奨学金(返済不要です)をもらえるので、学費+寮・食費で年間17,000ドルくらいなの。うちは全米の大学に、『日本人留学生に奨学金を出してくれ』と頼んで回っているから、<SAKAEの奨学金>なんて言われるものもあるのよ」

「お金は大学に直接支払うんですか?」

「当たり前でしょう(そんなことも知らなかったの?)。年に2回、学期の初めに支払うけど、最初だけは日本から親が大学に支払い、あとは本人が現地で銀行口座をつくって、自分でマネジメントするの」

「私は1年間の学費と寮費で○百万円をエージェントに支払いました。しかも来年度はもっと上がると言われていて、近々請求書が来るのです。なんとか、いまから栄研究所に変えてもらえませんか?」

私はもう頭の中がグチャグチャになって、スタッフにバトンタッチ。

日本の大学の成績表と、いま留学中のアメリカの大学の成績表を用意してもらい、あらためて時間をとって本人とスカイプで話し、いまの大学を早く卒業するためにどういう科目をとればいいのか、編入するのは無理だと思うけど、この1年にどんな成績をとってどんな準備をすべきか、を説明することになりました。

お母さんが気の毒です。

なんとか息子の望むことを叶えてやりたいと思っても、金銭的な問題もあり(どこの家庭でもそうです)、息子のやっていることが把握できずに、言われるままに振り回されて、とても不安になっておられるのです。

情報過多の時代に繰り返される「留学の失敗」

これまで何度も述べてきましたが、アメリカの大学は「寮生活」が基本です。

とくに留学生は、寮に住み、アメリカ人のルームメイトと過ごし、1日中キャンパスにいて、できるだけ早く気の合う友だちをつくって大学生活に慣れることが大切です。

なにが「ホームステイがいいですよ」ですか。語学留学じゃあるまいし。

第一、寮のない大学なんて、アメリカでは職業訓練所のようなものですよ。

アメリカの大学の学費や寮費を、日本円でとるなんて考えられません。いくら留学エージェントでもやりすぎじゃないでしょうか。

しかも聞いたら、けっこう知られたエージェントでしたよ。

こんなに情報が簡単に手に入る時代に、あまりに初歩的なことで留学につまずいてしまうなんて、本当に心からガッカリしてしまった1日でした。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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