【新卒入社の発想がない!】アメリカの若者たちが描く未来とは?

日本人がアメリカの大学に留学して驚くことの一つは、アメリカ人の大学生は4年生になっても、ほとんど就職活動をしないということです。

アメリカの大学生が就活をしないワケ

アメリカの大学は卒業まで勉強がとても大変で、就職活動なんかする時間がないということも一つの理由ですが、そもそもアメリカ人は、卒業したときに就職先を決めておかなければならないという考えがありません。

「常にどこかに所属していなければ不安」という日本人とは考えかたが大きく異なるのです。

またアメリカ人の学生は、有名企業や大企業に就職したいとも考えません。

有名な会社だってM&Aで買収されるかもしれないし、上司に認められなければすぐクビになってしまいますので、一つの会社に一生勤めて守ってもらおうなんて思わないのです。

それより生涯を通じて、自分をどのように高めていくか、(稼ぐお金の額も含めて)どのような仕事を究めていくかが大切で、会社で働くことは、その通過点にすぎないのです。

アメリカ人の学生に「親は何をしてるの?」と聞くと、「セールスマン」とか「バンカー」といった答えが返ってきます。

三菱やNTTといった会社名で答える人はいません。

言語学とITの深い関係

当研究所でインターンをしているアメリカ人の学生は、言語学が主専攻(メジャー)で、日本語が副専攻(マイナー)です。

「言語学なんてやっても、学者くらいしか生きる道ないんじゃないの? 博士課程まで行くわけ?」と私がつまらない質問をすると、「大学院には行くつもりだけど、学者ではなく、音声認識に関するプロの道を考えている」とのこと。

いつも未来のことを学生に話している私が、なんとウカツな質問をしたんでしょう!

これからはコンピュータにキーボード入力するのではなく、音声入力が主流になるということではないですか。

AIに話しかければAIが答えてくれるというわけで、ここに音声を認識するという大変な技術が必要になるわけですよ。

言語学をあなどるなかれ! 『マイ・フェア・レディ』(※)の時代とは違うんですから。

(※)『マイ・フェア・レディ』:1956年にブロードウェイで上演されたミュージカル。1964年に映画化されて世界的にヒットした。音声学の教授が、下町の少女を「レディ」に仕立てるために発音などを教えるうちに恋に落ちる物語。英語を正しく発音するために“The rain in Spain stays mainly in the plain.”というフレーズを練習するくだりが有名。

アメリカの若者を魅了する“Anime”

アメリカには、日本語学科を設けている大学が約130校、コンピュータ学科が充実していて、さらに日本語の科目がある大学が約100校もあります。

アメリカの学生が日本や日本語に興味を抱くのは、アニメやゲームがきっかけになることが多いのですが、日本語への関心が高まるうちに、コンピュータに手を出すようになるそうです。

つまり自分でも何かつくってみようということなのでしょうか。こうして、アメリカの大学には、コンピュータと日本語の両方を学ぶ学生がけっこういるのです。おもしろいでしょう。

日本でインターンを希望するアメリカ人学生が増えている

日本語とコンピュータが結びつくとは思いもよりませんでしたが、たしかに「日本のIT企業でインターンをしたい」というアメリカ人学生はけっこういるのですよ。ITなんてアメリカのほうが本場なので、なんだか反対みたいですが・・・。

じつは当研究所は、アメリカ人の学生が日本でインターンをすることのサポートを始めています。もちろんIT企業だけではありません。

日本の文化や歴史に興味をもって、業種にかかわらず日本の企業でインターンしてみたい・働いてみたいと考えているアメリカ人学生がけっこういるんですよ。

日本に興味をもってくれるなんて嬉しいではありませんか。そもそもアメリカのニュースに日本が登場するなんてホントに少ないんですから。

卒業まで就職のことは考えない

アメリカの若者は就職に関しても、まったくガツガツしているということがなく、日本でインターンして、またちょっとアメリカに帰って、しばらくブラブラしてから、日本で就職するかアメリカで就職するか考えよう、なんて感じで、日本人からするとじつに呑気なもんです。

日本からアメリカの大学に留学した人たちも、そういうアメリカ人の中で4年間を過ごして、毎日、死ぬほど勉強して、やっと卒業にこぎつけるわけです。

ちょっと目先がきいて、ボストンのキャリアフォーラム(※)にでかけてサッサと内定をとったり、夏休みに日本に帰ってきて外資系の会社と面接したりといった人は、それなりに就職のことも考えているんでしょう。

でも、田舎の大学に留学して、周りに日本人もあまりいないと、就職なんて頭にないままに卒業したり、アメリカに1年残ってインターンしたりといった留学生も多いのです。

(※)キャリアフォーラム:ディスコインターナショナルが主催する、海外の大学を卒業した人を対象とした就活イベント。アメリカ各地のほか日本でも開催される。ボストンのフォーラムが最大規模で、200以上の企業が集まる。

就活信仰から抜け出せない日本

それが、いったん日本に帰ったが最後、周囲から「何? まだ就職先が決まっていない? 何をしたいかわからない? そんなことではおしまいだ。

もう日本ではとっくに就活は終わっているぞ!」などとわめきたてられてしまうのです。

親や高校時代の先生に責めたてられて、私のところに来て泣く子もいるんですよ。

まったく、どこまで「みんなと一緒でなきゃダメ」という考えから抜けられないんでしょうね、この国の人は。

「就活の時期をはずしたら人生もうおしまい」なんてことあるわけじゃないですか。

当研究所からアメリカの大学に留学して卒業した人は、みんな各々の道にちゃんと進んでいますよ。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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