新学期はどうなる? 模索が続くアメリカの大学

大学寮の「密」はどうなった?

アメリカの大学は、この秋から大学を再開することにさまざまな問題を抱え、かつそれを解決するさまざまなアイデアを出しています。

アメリカの大学では基本的に寮生活ですので、1人でもコロナウィルス感染者が出たら大変なことになります。

教室だけでなく、寮も2人部屋というが一般的なので、広大な田舎のキャンパスでは人間同士は「密」です。

3月にはほとんどの大学でオンライン授業になり、多くの学生がキャンパスを去りました。

一部の学生(とくに留学生など)が寮に残っているのみで、「密」は避けられたわけです。

大学関係者が2人感染

さてこの秋、キャンパスをオープンしてたくさんの学生が戻ってくるということは、コロナウィルスに感染していてもまったく気づいていない学生も戻ってくる可能性が高いということになります。

学生だけではありません。先生がたやカフェテリアのおばさんまで戻ってくることになります。

ある大学では、キャンパスで働いていた人のなかで2人がコロナウィルスに感染していたことがわかり、その人たちを10日間隔離したそうです。

その人たちが働いていた、あるいは居たと思われる場所はすべて消毒しているそうです。

学生ならびに全大学関係者に細かく経緯をE-mailで知らせてきています。

多くの大学はたくさんのインフォメーションをオープンにしてホームページに載せ、またE-mailで学生に知らせています。

アメリカでは連邦政府が発するルールと州が発するルール、あるいはもう少し小さい郡が発するルールに違いがあり、大学も振り回されています。したがって、ホームページを何度もよく見るよう注意を喚起しています。

新学期に向けた各大学の対応

Southern New Hampshire Universityは、今年、新入生の留学生はすべて入学させないとしています。

California State Universityグループは、今年秋学期の授業はすべてオンラインにすると決定しています。

早く授業を開始して、早く秋学期を終わらせようとしている大学も多く見受けられます。

2019年にはインフルエンザでも45,000人も亡くなっていますので、冬は早く閉めて各家庭で長い休みをとってもらおうという考えです。

University of Notre Dameは8月10日に始まり、サンクスギビング(感謝祭)の休みもなく、11月に大学を閉める予定です。

学生が戻ってきたときに全員、コロナウィルスの検査をして、もし陽性の人が見つかったら隔離する部屋を用意するそうです。

ミネソタ州のBemidji State Universityは8月24日にオープンしますが、授業はオンラインのコースが多くなります。

また寮は全員2人部屋に1人で住ませることにしたそうです。

ニューヨーク州にあるIthaca Collegeは逆に、少し遅く10月4日にキャンパスをオープンすることを決めました。

それまでたくさんの時間があるので、新しい形の大学のありかたを整えることができると考えています。

2割の学生が大学に戻れない?

まだ方針が決まっていない大学もあります。

決まっていても状況次第では変わる可能性もあります。

田舎の多くの大学ではコロナ感染者が出ることも少なく、また、「Black Lives Matter」関連の、黒人差別に対する暴動も起きていません。

しかしニューヨーク市やデトロイト市内にある大学は大変です。

そもそも今年9月の入学審査さえまだ終わっていない大学もあります。

大学に戻らない、または戻れない学生も、留学生だけでなくアメリカ国内にもたくさんいます。

おそらく20%くらいの学生が戻ってこないのではないかと考えられています。

入学希望者も減っています。

したがって、入学申請の締切日を7月まで延ばしている大学もたくさんあります。

名門校も「Wait List」(いわゆる補欠リスト)の学生をもう一度ひっくり返して、いつもより多くそのリストから学生に入学許可を出している傾向があります。

何しろ大混乱ですが、とにかく学長のリーダーシップにかかってきます。

日本の文科省のようにいろいろな許可を出す組織はアメリカにはありませんので、学長の決断で決められます。

情勢の注視と「決断」のとき

我が栄 陽子留学研究所の9月入学組はまだ、いつ行くか、いつビザ申請をするか、何も決まっていません。

この混乱が落ち着くのを見極める必要があるのですが、混乱が夏までに収まるとは限りません。

そのときはどうするか、私、栄 陽子の決断をみんなが静かに待っています。

入学する大学の州がバラバラのため、大学によって各々の判断も必要です。

みんな第1希望校は決まっていますが、場合によっては第2希望校に行くことがあるかもしれません。

私の決断を踏み台にして、各々の学生が決断しなければなりません。

すべてのニュース、すべての情報から目が離せない毎日が続いています。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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