アメリカの大学で何を学ぶのか? ―専攻についての考えかた―

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日本の高校生が「アメリカの大学に留学したい」と思う理由の一つが、アメリカの大学は入学時に学部や専攻を決めなくてよいというものです。

アメリカの大学の「専攻」の考えかた

もともとハーバード大学などは、リーダーを養成することを目的としていて設立されました。

そのため、幅広くさまざまな教養と価値観を養うことを重視して、理系・文系という分けかたはしません。

専攻のことを英語ではメジャー(Major)といいます。

「ダブルメジャー」といって異なる二つの分野を専攻することも、アメリカの大学では可能です。

文学と物理学の両方を専攻することもできるのです。またマイナー(Minor)といって専攻の縮小版(日本では「副専攻」といったりします)を選ぶこともできます。

入学するときに専攻が決まっていなくてもかまいません。

アメリカの大学の願書には、希望する専攻を選ぶ設問がありますが、その選択肢の中には“Undecided”(未定)というものがあるくらいなのです。

アメリカの大学生の3割が専攻を変更

とはいってもアメリカの高校生たちも12年生(日本の高3)くらいになると、大学で何を専攻するか考え始めます。

親や友人からもどんどん意見が飛んできます。

ただアメリカの高校の先生は、日本の先生のように「できるだけ偏差値の高い大学をめざせ」とは考えませんし、専攻のアドバイスもそんなにしません。

専攻を決めて大学に入学する学生のうち、20%は1年以内に専攻を変更するそうです。

アメリカの大学生のだいたい3割が、最低1回は専攻を変えるといわれています。

最低1回ですから、2回、3回と変える学生もいるわけです。

アメリカの大学の卒業率が「6年以内」の理由

3年生の途中で「私は次の学期から物理学と音楽をダブルメジャーにする」なんていうのもかまわないのですが、あまり専攻を変えると卒業するのに時間がかかります。

単位だけはたくさんとっていても、専攻の必修科目をとり終えていないので卒業できない、なんてことになるからです。

アメリカの大学の先生は、専攻を変えても「あっそう」くらいで、「それじゃあ卒業まで年月がかかってしまうよ」とか、「就職に不利じゃないの?」なんて言いません。

ハッキリいって学生の勝手、どうぞ、ということです。

アメリカの各大学は「卒業率」というデータを出していますが、それがだいたい「入学して6年以内の卒業率」となっています。

日本の大学で卒業率といえば、当然4年間での卒業率をいうはずですが、アメリカの学生は1年休学してインターンをしたり外国に行ったり、働いたりなどなどいろいろあって、6年となっているのです。

そして専攻を変える学生が多いことも、卒業率が6年になっていることの一因です。

3年生や4年生になっても専攻を変える学生がいるので、不足の単位を補うためにサマースクール(夏期の集中講義)をとったり、卒業まで1学期とか1年延びたりということがあるわけです。

カリキュラムの理解に欠かせないスクールカタログ

まぁ、こんな話をしても、なかなか具体的な授業のとりかたをイメージできないでしょう。

でも、卒業するためにとらなければならない科目や単位数は、日本にいながらにして知ることができます。

というのもアメリカの各大学は、「スクールカタログ」という大学のルールブックを毎年発行していて、そこに科目のとりかたやルールを細かく記しているからです。

このスクールカタログには、たとえば「経済学を専攻する場合は、卒業までに合計123単位を取得し、ミクロ経済学とマクロ経済学を含めて経済学の科目を36単位とらなければならない」とか、それぞれの科目の講義要綱、卒業までのモデルカリキュラムなどが詳しく書かれています。

ほかにも、入学基準、学費と寮・食費、1年のスケジュール、退学条件など、大切なことがすべて網羅されています。

じつは日本の大学でも、大学のルールブックのようなもの(「要覧」とか「便覧」といいます)を入学後のオリエンテーションで配っているのですが、みんな一斉に入学して、みんな一斉に卒業するので、だれも読まないのです。

しかしアメリカでは、このスクールカタログを読めないとかなり困ります。

というのもアメリカの大学では、一人ひとりの学生が自分でカリキュラムを組まなければならないからです。

自分だけのオリジナル専攻をつくることもできる

アメリカ人は、志望校を決めるためにもこのスクールカタログを読みます。

その大学に入学して、たとえば音楽を専攻するなら、どんな科目をとって、どのようなカリキュラムを組めばいいのかがわかりますし、入学してから専攻をダンスに変更すると30単位増えるからたいへんそうだという予測もつきます。

Self-designed Majorといって、自分でオリジナルの専攻をつくることもできますが、そのルールもスクールカタログに書かれています。

ダンスと音楽を組み合わせて「ミュージカル」というSelf-designed Majorをつくれば、なんとか4年で卒業できるかもしれないということも、スクールカタログを読めばわかるわけです。

当研究所では、このスクールカタログの読みかたを、英語力アップを兼ねて教えています。

時間割の組みかたを習うと、「ひょっとしてこういう科目のとりかたをすると3年半で卒業できるわけ?」というようなことも理解できるようになってくるのです。

とくに日本の大学から編入する学生には、時間割の組みかたがとても重要になります。日本の大学で取得した単位を、アメリカの大学の卒業単位として生かしたいからです。

どの専攻がもうかるか?

「大学の専攻別の生涯収入」という変なデータがあって、低いのは教育学で高いのは化学工学だということですが、AIの時代になると、一夜にしてある業界が突然消えるなんてことがあるので、将来はどうなるかわかりません。

日本からアメリカの大学に留学するのなら、できるだけいろいろな科目をとってほしいと思います。

ものを考える力や、決断する力、想像力といったものが、ますます大切になる時代です。

アートや音楽もやってみるといいと思っています。

人間が100年以上は生きるといわれる時代、若いときにいろいろなことにチャレンジしているほうが、その後の人生を楽しめるはずです。

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栄陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院教育学修士課程を修了。帰国後、日本で留学カウンセリングを立ち上げ、留学指導を行い、これまでに7000人以上の留学を成功させる。留学関係の著作も多数。 » 栄 陽子留学研究所について