アメリカの大学の入試とは? 〜イェール大学の事例より〜

(2021.2.1更新)

SAT®(エスエーティ)というテストについて、アメリカでちょっと騒ぎが起きています。

というのも、名門のイェール大学(Yale University)が、「出願に際してSAT®のエッセーのスコアを提出しなくていい」と言いだしたからです。

ハーバード大学(Harvard University)も同じことを、3月にアナウンスしています。

それぞれ、各高校のガイダンスカウンセラー(進路指導の先生)にも通知したようです。

※ SAT®:アメリカの大学の入学審査において用いられる標準テスト。カレッジボードという非営利機関が運営する。
国語と数学、エッセー(作文)の3つのセクションから構成される。2020年にはおよそ220万の高校生が受験した。
アメリカの大学に提出する標準テストには、ほかにACT®というテストがある。ACT®の年間受験者数はおよそ200万人。

SAT®とはどのようなテストなのか?

SAT®は、日本の共通テストとはちょっと違います。アメリカでは年に7回受けるチャンスがあり、何回受けてもかまいません。高校1年生でも受けられます。

日本のように「受験勉強して1点でもスコアを上げる」というテストではありません。

受験する時点での、ありのままの学力を測るものです。

アメリカの高校生は、1、2回くらいしか受けません。高校でもSAT®の指導はとくにしません。夏休みにセミナーがちょっとあったりするくらいです。

まぁ、アメリカ人にとってSAT®はそんなにむずかしくないテストなので、わりにみんないいスコアがとれます。

アイビーリーグ(アメリカの名門私立大学8校のグループ)あたりを受ける人は、簡単に満点近くとるのです。

数学なんか日本の中3〜高1レベルです。

SAT®の予備校

アメリカには、プリンストンレビュー(The Princeton Review®)とかカプラン(Kaplan, Inc.)とかいった、日本の予備校に似ているものもありますが、アメリカ人はあまり通っていません。

中国・韓国・台湾から留学生や、これらの国の二世・三世たちがたくさん通っています。

中国にもSAT®の予備校がいっぱいあって、テクニックでスコアを上げようと躍起になっています。

しかしそれだと、ありのままの学力がSAT®のスコアに反映されません。

そこでSAT®は2005年に大幅にリニューアルされました。そのときは数学と国語、エッセーあわせて2400点が最高点でした。

それでもまた、予備校などでスコアを必死に上げてくる人がいるので、2016年にまた、大幅に改訂されました。

こうして、いまは数学と国語それぞれ800点が最高点で、エッセーを受けるのは任意とすることになったのです。

アメリカの名門大学が求める学生像

SAT®の受験料は52ドルですが、エッセーを受けると68ドルになります。

今回イェール大学が「SAT®のエッセーの提出を求めない」としたのは、高校生たちの負担を少しでも軽くするためということもあるようですが、だいたいイェール大学は、大学独自のエッセー課題を設けていますから、そもそもSAT®のエッセーは必要ないはずです。

アメリカの大学は、入学審査において高校の成績を第1に重視します。

そして、推薦状や独自のエッセーも重視します。

アイビーリーグ級の名門大学が欲しい学生とは、高校生活4年間を通じて(アメリカは6・2・4制が多い)、

・ 勉学に励み
・ 社会や国家、ひいては世界にどのように貢献できるかを考え
・ 芸術に親しみ感性をみがき
・ スポーツに勤しみ体力づくりを欠かさず
・ リーダーシップを発揮し

さらにこれらのことに大学でも励み、他の学生によい影響を与える、そんな子なのです。

名門大学に合格するためのSAT®スコアとは?

イェール大学にとってSAT®とは、まぁ学力としてこの程度のスコアはとっておいてね、くらいのものに過ぎないのです。

やはり独自のエッセーや推薦状などをじっくり読んで、本人の資質をしっかり見極めたいということです。

そのためにアドミッションズ・オフィス(Admissions Office)という、入学審査を司る専門のオフィスあるのです。

一方で、カリフォルニア州をはじめとして、新しい移民が多い州の州立大学は、できるだけ公平かつ平等に教育のチャンスを与えるために、SAT®のスコアと高校の成績のみを審査して、合否を決めています。

アメリカでは、テストスコアを重視するのは、私立よりも州立、東部よりも西部の大学に多いという特徴があります。


※ GPA:Grade Point Averageの略で「成績の平均値」のこと。アメリカでは4.0が最高点。
※ 中間値:入学生の半数がとったスコア。このスコアより高い・低いスコアをとった入学生がそれぞれ25%いる。

当研究所では、アメリカ人の学生が2人、インターンをしています。彼らに、高校時代に受けたテストのことを聞いてみました。

留学生はSAT®を受けるべきか

日本人の場合は、日本の高校でよくできる人でも、帰国子女でない限り、SAT®の数学はよくできますが、国語は太刀打ちできません。

まぁ高校から日本に留学してきた中国人に、大学入試の国語で90%をとれ、というような話ですから、英検準1級くらいでも高得点はなかなか期待できません。

SAT®の国語は、「英語がどれだけわかっているか」というテストではないのです。

当研究所でSAT®でよい点数をとるのは、みんな帰国子女かインターナショナルスクールの子たちです。

アメリカの大学の多くは、留学生にはSAT®の代わりにTOEFL®テスト(※)を要求していますが、SAT®にチャレンジするのはよいことです。

国語のスコアがメチャメチャであっても、数学が満点であれば、出願大学に提出してもいいかもしれません。

アメリカの大学への出願は、いわば「売り込み合戦」ですから、利用できる場合は利用すると考えてよいと思います。

※TOEFL®テスト:英語を母語としない人を対象とした英語力テスト。Test of English as a Foreign Languageの略。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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