もがいて、泣いて、自分に勝つ。留学の本当の醍醐味

広大なキャンパスで「泣きたい」

私がこの研究所を立ち上げたのは、日本の若者が留学によって、自分に自信をもって生きることができる教育を得てほしいという思いからでした。

英語ができない・英語力に自信がないという日本人を、アメリカの広大なキャンパスをもつ寮制の大学に、有無を言わさず放り込んでしまうという方法です(入学前の1〜2か月間、英語集中講座に参加するのはやぶさかではありません)。

ルームメイトはアメリカ人。クラスメイトのほとんどもアメリカ人。

英語の授業ではなく、英語「で」授業を受ける。食事も甘いもの・油っこいもののオンパレード。

ラーメンは食べられません。1日中マクドナルドみたいなもの。

キャンパスはただただ大きく、公共のバスも電車もありません。

目の前真っ暗。泣きたい。気が狂いそう。どうするの。

こうなるってSAKAEで散々言われてきたじゃないの。

留学はサバイバルゲーム

3日、3週間、3か月と、少しずつ冷静になり、「これはサバイバルゲームなんだ」と頭のスイッチを切り替えて生きていくようになります。

どうやって生き延びるのか、SAKAEで習ったことも思い出していきます。

1人でも、「お前の言ってることはこういうことか。いいか、ゆっくり言うぞ」なんて相手をしてくれれば、もうすごくラッキー。

どんなにIELTS™のスコアが高くても、現実になるとなかなか通用しません。

アメリカ人と同じペースで勉強についていくのは無理です。

SAKAEでは、そんな中でついていくためのサバイバル方法を教えているのです。

人間は興味をもっている分野、よく知っている分野、好きな分野のことは、言語が違ってもけっこうわかります。

自分の知識を総動員して、推測することができるからです。

お料理が好きな人は、何語でも調理方法を理解できます。

幸い、アメリカの大学の授業は予習中心です。

予習をして、先生の話を聞いたりディスカッションをしたりします。

したがって、SAKAEでは「予習の予習」をします。

また、英語のハンデがあるので、予習をどうやってうまくやるのか指導します。

カリキュラムも自分で考えて、自分で決める

アメリカの大学は単位制で、卒業は3年でも3年半でも5年でもOKです。

また、理系・文系・芸術系・スポーツ系に分かれておらず、2つの分野を専攻することもでき、物理学と音楽を専攻する人もいます。

途中で専攻を変えることもできます。

このため学生は、スクールカタログというものをキチンと読んで、自分で基本的な計画を決めて先生に相談します。

日本の大学も卒業まで124単位と決まっていて、スクールカタログに似たような、いろいろな資料をくれるのですが、専攻は変えられず、卒業は必ず4年。

しかも大学としては卒業までに就職させなければならないため、カリキュラムもすべて大学が決めていて、選択の余地はあまりありません。

そのため学生は自分で計画することなく、大学側の説明通り動いていればいいので、いろいろな資料も形だけになります。

アメリカの大学は、就職の世話もしてくれませんし、卒業に時間がかかっても、何度専攻を変えても何も言われないし、奇異な目で見られることもありません。

ともかく自分で考えて自分で決定しなければならないのです。

SAKAEではこのスクールカタログを読むことから、指導を始めます。

小学校で算数を習って「算数」という言葉が、かけ算を習って「かけ算」という言葉が自然に頭に入ってきたように、スクールカタログを読むことによって、自然にアメリカの大学での勉学や生活に必要な言葉が頭に入ってきます。

そうやってアメリカの各大学のホームページをちゃんと読んで、大学選びができるようになっていくのです。

留学の一番の成果は、自分への自信

さて、そうやっても、どうやっても、やはり、アメリカ人のルームメイト、クラスメイト、本番の授業は、衝撃的です。

どんな人間にも火事場の馬鹿力が備わっています。追い込められて、泣いて泣いた後に、少しずつ真っ暗な道を歩いていく力が出てきます。

アメリカ人は陽気で親切です。

みんな寮に一緒にいますから、泣きつけば、宿題も手伝ってくれます。

テスト期間中はアメリカ人も目を真っ赤にして徹夜。寮中に明かりが灯っています。

そういう中で生き延びると、本当に自分に自信が湧いてきます。

やった、やれる、という自信です。

だれかに勝ったという自信ではありません。

自分自身に勝ったという自信です。

日本では受験という競争があって、いつも人と比べることを強いられます。

でも、本当の自信は自分に勝つことで、他人と比べることではないのです。

50年近く、私はこういうやりかたで、世界のどこでも1人で生きていける人間を育てたいと思ってやってきました。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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