コミュニティ・カレッジの悪口を書かなければならない理由

このコラムではコミュニティ・カレッジ(アメリカの公立の二年制大学)の悪口ばかり書いているようですが、書かざるを得ないのは、それほどヒドい話が飛び込んでくるからです。

日本の大学をやめてコミュニティ・カレッジに留学?

アメリカの大学に編入したいという大学2年生の子の相談です。

とある留学エージェントから、「大学の成績があまりよくないので、まずコミュニティ・カレッジに入学したほうがいい。

そのほうがいい大学に編入できる」とアドバイスされて、その子の友人もその方法で留学するとのことで、とても迷っているというのです。

日本の大学に1年でも2年でも通っていれば、アメリカの大学に単位を移行して編入できます。

卒業までの年月も短くなります。1年分の単位を移行できればアメリカの大学の2年生として、2年分の単位を移行すれば3年生としてアメリカの大学に編入できるのです。

もちろんコミュニティ・カレッジに行く必要はありません。

コミュニティ・カレッジは学費が安いことで知られていますが、留学期間が長くなれば、それだけ費用もかかります。

またほとんどのコミュニティ・カレッジは寮を備えていません。ホームステイであれアパート生活であれ、生活費がとても高くなってしまいます。

そんなにUCLAに行きたいのか?

そもそも「コミュニティ・カレッジからいい大学に編入できる」という話は、カリフォルニア州の独特のシステムを、日本の留学エージェントが都合よく宣伝に使っているもので、ニューヨーク州のコミュニティ・カレッジに行ったからといって、それだけでニューヨーク大学やコロンビア大学に編入できるわけではありません。

カリフォルニア州には、州内の各公立高校のトップ9%の生徒は、UCLAやUCバークレーといったUniversity of Californiaのいずれかのキャンパスに入学できるというルールがあります。

日本の都立高校や県立高校にも差があるように、カリフォルニアの公立高校も、その地域によって学力差がとても大きいのですが、高校のレベルにかかわらず、その高校でトップの子はUCLAに入学できる、という公平なルールです。

そういうルールがあっても、よくできる子が必ずしもUCLAやUCバークレーに行きたがるわけではありません。

私立のスタンフォード大学やリベラルアーツのポモナ・カレッジ、あるいは東部の大学に入学を希望する子もたくさんいるのです。

当研究所から留学して現在カリフォルニア州に住んでいる夫婦は、共にUCLA出身ですが、「私たちの子どもは自分たちよりずっとよくできるので、UCLAなんかに行く必要はない」と主張して、結局、お子さんはペンシルバニア大学に進学しました。

最近ニュースを賑わしているメーガン・マークルさんは、ロサンゼルスの私立高校から、ノースウェスタン大学(中西部の名門私立大学)に進学したという秀才です。

コミュニティ・カレッジからUCLAへの編入

さてカリフォルニア州の州立大学は、大きく3つのレベルに分けられます。

トップはUCLAやUCバークレーを含むUniversity of Californiaのグループ、次がCalifornia State Universityのグループ、そして一番下がコミュニティ・カレッジです。

コミュニティ・カレッジの学生の多くは、働きながら通っていて、年齢も高く25~30歳くらいです。キャンパス内に寮もありません。職業訓練所のようなコミュニティ・カレッジも少なからずあります。

そうであっても、カリフォルニア州では、コミュニティ・カレッジからUCLAやUCバークリーに編入できる道があるのです。

しかしながら編入するには複雑な条件があって、その条件をクリアして初めて審査の対象になります。ASSISTというWEBサイト(http://www.assist.org/)があって、このサイトに、在学中のコミュニティ・カレッジと、編入を希望する大学と専攻を入力すると、編入に先立って履修しておくべき科目が出てきます。

たとえばサンタモニカ・カレッジ(日本人に大人気のコミュニティ・カレッジ)からUCLAに編入して心理学を専攻したいという場合、ASSISTによると、以下の分野の科目をサンタモニカ・カレッジで修めておかなければなりません(選択すべき科目名も出てきます)。

・ 心理学概論
・ 統計学もしくは微積分学
・ 生物学
・ 化学もしくは物理学
・ 哲学

「コミュニティ・カレッジからいい大学に編入できる」は本当か

このようなカリフォルニア州に独特のシステムがあって、「コミュニティ・カレッジからいい大学に行ける」という話になるのですが、そういうことを言っている留学エージェント自体が、このような複雑な編入システムをよく知らないまま、自分たちの“商品”を売りつけているように思います。

もしUCLAに編入できても、学費と寮・食費あわせて年間55,000ドルかかるという説明すら、留学エージェントはしていないようなのです。

現に当研究所には、UCLAに合格したけど経済的にムリという相談も来ています。

ましてや日本の大学に2年間在学している学生が、コミュニティ・カレッジに留学するなんて、あり得ない話です。

だいたい2年間のコミュニティ・カレッジの費用(年間300~400万円)とUCLAに行く費用を合わせたら2,000万円以上になりますが、エージェントはそんな説明もしていないのでしょう。

さらにコミュニティ・カレッジへの入学の前に、語学学校に行かされるケースもたくさんあるのです。

英語が苦手でお金もない、大学の成績もよくない、といった学生が、留学エージェントにとって都合がいいだけにすぎない「コミュニティ・カレッジからいい大学に編入できる」という宣伝文句によって、次々とコミュニティ・カレッジに留学している現実に、まったく、本当に情けない思いがします。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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