日本の大学生が「編入留学」を希望する理由
日本の大学からアメリカの大学に編入したいという学生は少なくありません。
「何をしたいのかわからない」のが受験生の本音
理由はいろいろです。
そもそも在学している大学が第1志望ではなかったとか、入学したら思っていたのと違ってまったく興味をもてないとか、就活の話ばかりで、みんなそろって黒っぽい服を着て就活するなんてイヤだとかです。
まぁ根本的な理由は、いまの大学生活がぬるま湯に浸かっているような気がするということだと思います。
コンパやアルバイトやデート、どんなに遊ぼうが、ドンチャン騒ぎしようが、大学生の特権ですから、それで日々が過ぎていきます。
しかし、大学受験という一大イベントの後に突然やってきた長い自由な時間に、「何をしていいのかわからない」という学生も多いのです。
もちろん一生懸命勉強すればいいのですが、そもそも理系・文系といったって、本人に強い根拠があって選んだわけではないのです。
親の仕事を継ぐというならともかく、17歳くらいで「勉強したいことを選べ」と言われても、そうそう選べるものではありません。
だいたい「何を学ぶか」よりも「どこの大学に行くか」のほうが彼らの関心事なのです。
そもそも同じ大学の複数の学部に受験できるようになっているではありませんか。
大学はもちろん、それだけ儲けるわけです。
まぁ受験なんて、どこかで建て前と本音が大きくずれているのです。
日本の大学生たちの不安とは?
そんな受験という大嵐が過ぎて、やってきた「自由」。
授業には出なくても大丈夫、サークルもアルバイトもやり放題、逆にそんなことしなくてもOK、という大学生活です。
こうなると、いままで目の前にニンジンをぶら下げられて走っている馬のような状況であっただけに、どうしていいかわからなくなってしまって、だんだん、このままじゃ自分はダメになってしまうんではないかと思い始めるのですね。
事実、大学に籍を置きながら専門学校に行っている人もいますよね。手に職を、ということでしょうか。
でも大学は卒業しておこうということのようです。
編入留学に理解を示す親たち
また、あれこれ模索した挙句、留学にたどり着く人もいるのです。
それもちょっとした語学留学ではなく、きちんとアメリカの大学に学生として入学し、卒業をめざす本格的なものです。
どうやら日本の大学の単位も移行できそうだ、というわけで、親に相談すると80〜90%の親は「そんなバカなこと言わず、いまの大学を卒業しろ」と言います。
昔は100%の親が反対したものですが、最近は1〜2割の親はOKを出してくれます。
世の中の激しい動きを自分の肌で感じている親たちです。
ただ日本の大学を出て大企業に就職しました、だけではまずいんじゃないの、と心のどこかで思っている親たちです。
アメリカの大学の柔軟な編入システム
アメリカでは、自分が入学した大学についてグチャグチャ言ったり親と揉めたりする学生はいません。
いくらでも転学(編入=Transfer)できるからです。
アメリカ人も、17歳くらいでは何を学びたいのかわからないので、適当に近くの大学に入ったりすることは多いのです。
大学に入ってから必死になって勉強して(勉強しないと退学になりますので)、だんだん頭が冴えてくるという学生もたくさんいます。
そうして、少しずつやりたいことも見えてきて、もっと大きな都会の大学でチャレンジしたいと思ったりしたら、その大学に編入してしまうのです。
60単位(だいたい2年分の単位)までなら、別の大学に移行できます。
ハーバード大学でさえもそうです。
したがって時間のムダになりません。
アメリカの大学には入学金はありませんから、費用のムダも生じません。
専攻は、入学してから決めても大丈夫だし、2つの分野(アートと物理学など)を専攻してもOKですから、学部ごとに出願料を支払うこともありません。
そもそも出願料が無料の大学も多く、有料でもせいぜい50ドルくらいです。
700以上のアメリカの大学に共通して使える願書(Common Application)もあって、その1つの願書で複数の大学に出願できます。
どうしてこうも日本と違うのでしょうねぇ。
留学は人生の転機、「逃げ」ではない
子どもから大人になるとき、親から離れて独り立ちするとき、自分で考えて自分で選ぶ、失敗する、またやる、という経験がとても必要だと思います。
みんなと一緒に受験して、偏差値と大学名で入学先を決めて、またみんなと一緒に就活して、といったことに疑問をもたいのでしょうか?
もたない人が正常で、たまたま疑問をもった果てに留学と言い出した人は異常で、「人生から逃げてる」なんて言われるんですよ。
おかしくありませんか?
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。