リベラルアーツ・カレッジが留学先として適している理由
「英語力がなくて、アメリカの大学の授業についていけそうにないので、コミュニティ・カレッジ(※)に留学しようと思うのですが・・・」という相談をたくさん受けます。
日本のいわゆる「留学エージェント」もそう勧めているようです。
かと思うと、ちょっと英語に自信があったりすると「UCLAとかハーバードとか、レベルの高い大学に留学したい」と言い出します。
なんだかどっちも極端な話です。
(※)コミュニティ・カレッジ:アメリカの公立二年制大学。卒業すれば四年制大学に進学できるが、地域住民のための職業訓練校としての役割も担う。
明日提出のレポートが真っ白
アメリカの大学のほとんどは1年間を2学期制としており、1学期はわずか16週間しかありません。
入学して8週間で中間テストがあり、その8週後には期末テストです。ものすごいスピードでテストに追われます。
おまけにこの短期間に大量の宿題が出ますから、学期中はもう息絶え絶え、聞くも涙、話すも涙の物語になります。
私が留学したのは50年近くも前のことですが、ペーパー(※レポート)の提出期限が明日なのに、目の前に真っ白な紙があるという夢をいまだに見ます。
幼少期からアメリカで生活していて、アメリカ式のカリキュラムや授業に慣れているのであれば別ですが、ごく普通の日本人がアメリカの大学で勉強するのはとても大変なことなのです。
コミュニティ・カレッジの学生像
したがって、もし英語に自信がないのであれば、周りの人が親切にしてくれる環境が整っている大学を選ばなければなりません。
英語に自信がなくて、アメリカに行っても右も左もわからない、ウソをつかれたりダマされてもわからない、というような人が留学エージェントのすすめられるがまま都会のコミュニティ・カレッジに行って、やっていけるのでしょうか。
カリフォルニアやニューヨークなどにある大型のコミュニティ・カレッジに通う学生の大半は、働きながら通学している大人たちです。
それぞれが忙しい中で通学しており、誰もノートを貸してくれたり、下手な英語を辛抱強く聞いてくれたり、宿題を手伝ってくれたりするわけがないのです。
みんな自分の生活に精一杯で、わけのわからん英語をしゃべる日本人なんか相手にしてくれません。
おまけにそういった都会の大型のコミュニティ・カレッジには学生寮がありません。
授業が終わればみんなさっさと職場や自宅へ帰ってしまうので、だれも勉強を助けてくれません。
本当は学生に教えたくない
一方で、UCLAなどの大規模大学となると、1クラスの規模が大きくて、先生とのコンタクトもありません。
だいたい100人とか200人規模の階段教室になります。
アメリカの大学の先生は、研究を続けたい人と、教育者になりたい人に分かれます。
前者は、研究設備の整った大規模大学に就職して研究を続けますから、本心は、大学生を教えるのが面倒なのです。
ディスカッションは、30人ずつくらいに分けられて、助手の先生が担当します。アメリカ人の学生は自己主張が強く、モタモタしている日本人なんか蹴っ飛ばされそうな雰囲気です。
こういう大規模大学に来ているアメリカ人学生は、みんな押しが強くて、悪い成績がつくと助手や教授に噛みついたりする人ですからね。
そんな人たちと肩を並べるためには、単に英語ができるだけではダメなのです。
日本でも、東京の大きな大学に地方からやってきて、友達がなかなかできずに困ってしまう学生がたくさんいるでしょう。
アメリカという外国の大学ならば、なおさらです。
就活で問われる大学の成績
冒頭にも述べたようにアメリカの大学の1学期はわずか16週間です。しかも2学期続けて70点平均以下で即退学になります。
アメリカの大学では「よい成績をとること」がきわめて重要です。大学院に進学するときも、就職のときにも、まず大学の成績が問われます。
ですから、みんな90点くらいを目標にして、必死に勉強するのです。16週間という短期決戦においては、最初のつまずきが取り返しのつかないことになります。
留学に適した大学とは?
したがって、英語力がある・ないにかかわらず、初めてアメリカに1歩を踏み入れる日本人に適しているのは、以下のような特徴をもつ大学ということになります。
・ 小規模(学生数がおよそ3,000人以下)であること
・ 学生寮があること
・ 1クラスの学生数が少ないこと
・ 先生がやさしくて親切なこと
・ チューター(マンツーマンで補講してくれる上級生)制度などの学習サポートが行き届いていること
このような特徴をすべてそなえた大学が、リベラルアーツ・カレッジと呼ばれる大学です。
先に、アメリカの大学の先生は研究者と教育者に分かれると書きましたが、リベラルアーツ・カレッジの先生は、みんなよき教育者であることに喜びを見いだしている人たちです。
研究をするために大学にいるのではありません。じっくり学生と向き合うことに仕事の楽しさを見つけているのです。
このリベラルアーツ・カレッジを未来の日本人留学生たちに紹介したのが、だれあろうこの私、栄 陽子です。お忘れなく。笑
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。