アメリカの大学から退学させられる子に、高校留学経験者が多いのはなぜ?
海外の高校に留学した子たちの進路
海外の高校で学んでいる人はそれなりにいます。
アメリカのボーディングスクール(寮制の高校)はあまりにも高額のため、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどが人気です。
とくに、公立でホームステイのシステムがあると比較的安い費用で留学することができます。
できるだけ子どもが若いうちに英語力をつけさせたい、と考える親にとっては魅力があります。
留学を終えると、多くの人は日本の大学の帰国子女枠を利用して日本の大学に入学します。
留学した国の大学に進学する人は少数です。
カナダは90校、オーストラリアは41校、ニュージーランドには8校しか大学がありませんし、これらの大学ではまるまる4年間、専門分野を勉強するので(生物学専攻であれば生物学を4年間学びます)、明確な目的意識が必要になります。
日本の子たちは、英語力を上げたり国際センスを磨いたりするために高校留学をしていますので、特定の分野を絶対に大学の4年間で学びたいとはあまり考えていません。
日本の高校生にしても、勉強したい分野よりも大学の名前で出願校を選ぶわけですから、それほど専門性にこだわっているわけではありません。
何しろ1つの大学の3つくらいの学部に出願したりするのですから。
大学の選択肢ならアメリカがNo. 1
さて、留学した国でなく、日本でもなく、もう少し英語力をアップでき(せっかくここまで上手になったのだから)、専門性を気にしなくてよいとなると、進学先としてはアメリカの大学が一番の候補となります。
アメリカには4,000校もの大学があります。さまざまなタイプの大学がそろっています。
また寮がしっかりついていますので、ホームステイ先の家族とのゴタゴタにも悩まなくて済みます。
おまけに理系・文系・芸術系の区別がなく、物理学と音楽を両方専攻することもできます。
留学経験者たちの油断
当研究所では、オーストラリア等の高校を卒業した人のアメリカ大学進学のお手伝いもしています。
初めて留学する日本の高校生と同じようにビシビシとカウンセラーはやっているつもりですが、どうやら初めて留学する子たちと比べると、カウンセラーの言うことを真剣に聞いていない傾向があることが最近わかってきました。
アメリカの大学では70点平均の成績を2学期続けて割ると退学になります。
将来の就職や大学院進学などを考えると、大学でよい成績を残さなければなりません。最低でも80点平均、できれば90点以上はとりたいところです。
そのほか、
・どんなクラスをとるか
・卒業までどういう順番で、どのようなボリュームでクラスをとっていくのか
・専攻を決めたり変更したり、2つの分野を専攻したりするにはどうするのか
・授業についていけなくなりそうなときはどう対処するのか
・ルームメイトやクラスメイトとどのようにつきあっていくのか
・日本で予習すべきことは何なのか
こういったことをカウンセラーは指導するのですが、留学を経験した子たちは、心のどこかで隙ができるようです。
本人も親も英語が通じるし、高校留学を乗り切ったという自信もあるのでしょうか。
カウンセラーが「退学になるよ」と言っても、上の空で聞いているのかもしれません。
余裕かまして「退学」という現実
高校では、クラスは基本的に学校側が決めてくれますが、アメリカの大学では自分で判断して履修科目を決めていかなければなりません。
初めて留学する人はそういうのが怖いので、できるだけカウンセラーから聞いたとおり、そろそろと自分がついていけそうなクラスを、それも少なめに登録したりします。
英語ができるとなぜか恐いもの知らずになるのか、ただ興味のあるクラスをとるという傾向になります。
アメリカ人は授業に出席しないということはありません。それは即退学への道につながるからです。
初めての留学生はイヤというほど当研究所のカウンセラーから言われているので、どんなことがあっても授業にしがみつき、先生に泣きつき、ボランティアのチューター(補講講師)をつけてもらい、毎日緊張の連続です。
それに比べると、英語ができる子は余裕しゃくしゃく、まして同じ大学に初めての留学で緊張しまくっている子がいたりしたら、その前で先生やアメリカ人学生とペラペラしゃべって、勢いあまって「授業なんて休んで大丈夫よ」といった具合で、近くの町に遊びに行ったりします。
高校時代と比べて自由に動けるようになりますから、ついつい調子に乗ってしまうのでしょうか。
挙句の果てには、大学から「もう戻ってくるな」という手紙を受け取ることになります。
人間って本当にむずかしいものですねぇ。
高校留学を経験してちょっと英語ができる子だからこそ、もっともっと念入りに大学進学準備をさせなきゃならないんです。
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。