人気の交換留学と「卒業をめざす」留学、何が違うの?

子どものアメリカ留学にあまり賛成でない親御さんは、よく「日本の大学からでもアメリカに留学できるでしょう? 交換留学で行ったほうが安心よ。お金もかからないし」と言います。

留学相談でも「どっちも同じですよね?」と私に同調を求めてきます。

「4年間留学するのと交換留学するのとどう違いますか?」とか「日本の大学を中退して留学するのと交換留学するのは同じことですか?」という質問もたくさんあります。

今回はこの質問に答えていきたいと思います。

「わからない!」で始まるアメリカ大学生活

交換留学と、いわゆる「卒業をめざした」留学とは、ハッキリ言ってまったく違います。

アメリカの大学の1学期は、わずか16週間です。

新学期が始まるとすぐに授業がスタートし、8週間後にはすぐ中間テストになります。

TOEFL®スコアが高い人もそうでない人も、授業で先生が何を言っているのか、サッパリわかりません。

1日め「あぁわかんないなぁ」
2日め「あぁわかんないなぁ」
3日め「やっぱりわかんないなぁ」
という感じです。

交換留学の場合はそれでもOKです。

ともかく最後は日本の大学に戻るわけですから、ずっとわからなくてもいいのです。

退学にならないための留学サバイバル術

ところがアメリカの大学を卒業しようと思っている人は、そうはいきません。

3日続けて「わかんないなぁ」では、もう退学が迫っているようなものです。

8週間後には中間テストですから、ものすごいスピードで授業が進んでいくのです。

「わかんないなぁ」ではとても済まされません。

2学期続けて70点平均を切ると退学です。

おまけに将来大学院に進学するつもりであれば、最低で80点平均、理想的には95点くらいを目標としなければなりません。

クラスで勉強が1番できそうな子を探すこと。

その子の寮の部屋を見つけて、仲良くなっておくこと。

先生のオフィスに押しかけて相談すること。

「チューター」と呼ばれる補講講師をつけてもらうことなど。。。

こういったアクションをすぐに起こさなければなりません。

当研究所から留学する人たちは、渡米する前に担当カウンセラーからイヤというほど「留学サバイバル」のノウハウを伝授されます。

ともかく「あぁわかんないや」では済まされないのです。

先生のつぶやきがたいへんなことに!

アメリカの大学では、授業の初日に先生が「シラバス」と呼ばれるものを配ってくれます。

このシラバスには、授業のスケジュールや採点方法、宿題などが詳しく書かれています。

したがって、その内容に沿って予習をすることになります。

予習をちゃんとしていれば、先生の言っていることはわからなくても、一応、授業で何が扱われているのか想像がつきます。

単語を一つか二つでも聞きとれれば、「あぁ、あのことか」と、ちょっとわかったような気にもなります。

それで「なんとかついていける」なんて思ったら大間違いです。

授業が終わって、やれやれと思っているうちに、ほんのちょっと、先生がゴチャゴチャと何かつぶやいたりします。

こういうゴチャゴチャは、まず私たち留学生はキャッチできません。

「まっいいか」で終わらせたら、さぁたいへん。

じつは先生は授業の予定を変更していたりするのです。

「次の授業では、11/15の分を飛ばして11/18に予定していたことをやります」なんて言っていたりするのです。

ですから、こんなときはクラスでよくできる学生に確かめるか、先生に聞きに行くとかしなければなりません。

でも日本人はだいたい「先生にしつこく聞きに行くなんて・・・」と、ちょっと遠慮してしまうのです。

そしてまったく違う内容を予習してしまい、授業はチンプンカンプン。

どうしてチンプンカンプンなのかすらわからない、なんて状態になってしまうのです。

留学はみんな泣きながら乗り切るもの

卒業を目的として留学している学生たちは、チンプンカンプンになったらもう真っ青です。

なりふりかまわず、チューターやクラスメイトに頼らなければなりません。

もう入学して2か月も経っているのにチンプンカンプン。

テストは目の前。泣きたいし、本当に泣いてしまう学生もいます。

泣きながらでも、勉強しなければなりません。周りの人の力を借りなければなりません。

でも交換留学をしている人は、そこまで必死になることはありません。

1年後には日本の大学に帰るのですから。

日本の大学が実施している交換留学は、アメリカ人の学生と同じ条件で授業を受けるというものは少なく、語学留学のようなものです。

まず1学期めは英語を学び、英語力が上がったら、2学期めは一般の授業を聴講してよろしい、なんていうのもあります。

聴講なんて、テストを受けるわけでもなく成績もつかないのですから、ただ本当に座っているだけです。

欠席しても、何にも問題になりません。

交換留学生は、基本的にはお客様扱いなのです。

なので、アメリカの文化を気軽に体験をするという意味ではとてもいいことだと思います。

でも卒業を目的とする留学とは比べるものではありません。

ちょっと大変でも、「自分は英語力や国際社会でのサバイバル力がつく留学をしたいな」と思う人は、4年間の大学留学についても調べてみるといいですよ。今、日本の大学に通っているという人は、編入留学をするという選択肢もあります。

交換留学について詳しくは、こちらも参考にしてください。
» 【参考記事】認定留学、交換留学とは

 

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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