コロナ対策に苦悩するアメリカの大学~今後の規制の行方と留学への影響は?~

コロナ感染症の広がりかた、日米の違い

アメリカの大統領がついにコロナに感染して、ブラジルの大統領と同じように、「コロナなんてたいしたことない」と強気で行動していますが、なかなか、治療薬も絶対これ、といったものが出てこないし、コロナ感染症の流行も収まっていません。

当研究所のボストンのスタッフが、「一体、日本と何か違う」と盛んに嘆いていますが、やっぱり、アメリカ人はマスクが嫌いですしねぇー。

部屋に土足で上がるでしょう? 飲み食いが大量で、太りかただって日本人と比較になりません。

PCR検査を阻む「費用」の壁

この秋、アメリカではキャンパスをオープンした大学のうち約250の大学が、到着した学生にPCRの検査をして学期が始まりました。

しかし以降、定期的にテストを続けている大学は6%くらいしかないそうです。

PCR検査の費用が高いのが1つの理由です。普通は1回100ドルです。

これを学生がもつのか大学がもつのか、どちらにしても大変なことです。

ブロード研究所というところが、マサチューセッツ工科大学とハーバード大学の協力を得て、ニューイングランド地方の小さな私立大学を含む約100校に定期的にPCR検査を提供していますが、それも1回25ドルです。

イリノイ大学アーバナシャンペーン校では、大学独自に開発した、唾液でできる検査を定期的にしているということです。

それは10ドルですが、5万人以上もの学生がいて、教職員も1万人以上もいますから、大学としては毎週100万ドル以上の負担になるということです。

キャンパスをオープン→陽性者が続出

検査をしたからといってコロナ感染症を防げるわけではありません。

とくに学生は多くが無症状ですから、陽性者が出たら、何でもないのに隔離しなければなりません。

どの大学も寮の一部が隔離部屋になっていますが、食事を部屋まで運ばなければならなかったりで、大学側には大変な負担です。

8月末から9月にかけてオープンした大規模大学では、そもそも最初にPCR検査をしたら、ワッと陽性者が出て大変だったところが多いのです。

ウィスコンシン大学マディソン校は、2週間、大学を封鎖しました。

学生たちはキャンパスに残ることができましたが、クラブ活動やジムでのエクササイズなどはすべて禁止、食事はテイクアウトオンリーとなりました。

バージニア州のジェームズマディソン大学は、対面授業を中止し、帰宅を余儀なくされた学生もいました。

その後、寮に住む学生を対象に、健康であるかないかにかかわらず、ランダムにテストを行うことになりました。

その点、数千人規模の小さな私立大学は、比較的うまくいっています。

手洗いやマスクなど、うるさく、隅々まで徹底して、大きなクラスはオンラインにして、陽性者が出ると、隔離コーナーに2週間送り込むといった具合です。

アメリカの学生に特有のパーティ習慣

大規模大学は、そもそも「パーティ大学」などと呼ばれ、学生たちは寄ってたかって飲むのが好きです。

またフラタニティとかソロリティと呼ばれる、よくできる学生や、特定の共通項がある学生のクラブ独自の建物があります。

各々独立していて、大学寮のように規則が行き届かないので(何しろ個人の自由が好きな人たちですから)、今回のコロナ感染症では裏目に出て、学期が始まった途端、陽性者がいっぱい出て、騒ぎになりました。

私もアメリカにいたときに初めて飲み会に参加してビックリしましたが、彼らは誰かの部屋にビールやワインなどを持ち込んで、食べるものもなく、立ったままでどんどん飲むのです。

ものすごく早く酔いがまわると思います。

つまみくらいあったっていいのにと思いますが、まあ、せいぜいポテトチップスですよ。

日本のように酢の物なんかありませんから、太るのも仕方ないですね。

飲んで酔っ払うと声も大きくなって、当然、マスクなんてはずすでしょう。

もともとマスク嫌いのアメリカ人は、マスクのことなんか忘れてしまいますよ。

日本人は食事をしても、食べたらすぐマスクするじゃないですか。

今後の規制の行方と留学への影響は?

この「お酒を飲む」という行動は、今回のコロナ感染症に関して、大きなキーだと思いますよ。

ヨーロッパもなかなかコロナ感染症の拡大が収まりませんが、みんな昼からワイン飲んでるでしょう。

飲みながらのランチは時間も長いし、おしゃべりも弾むし。

その点、アラブ諸国は意外や意外、そんなに広がっていません。

アフガニスタンなんて、感染者がすごく少なくて、平均年齢が若いからだと言われていますが、私は「イスラムはみんな禁酒だからじゃないの?」って思っていますが、まあすべて私の推測です。

デキサメタゾンなんて、一般にどこでも使っていて、決して高価でもない薬です。

コロナ感染症も、一応、治りそうだということがわかってきて、なんとかワクチンもできそうだということになってきたからか、最近はアメリカへの入国も、PCR検査を受けて3日以内に陰性の証明を出せば隔離しなくていいことになっています。

1月にアメリカの大学に入学する人たちも、これでなんとか行けそうです。

人気記事

» 栄陽子の留学コラムトップへもどる


▼ 読むだけでアメリカ留学に役立つ資料をお送りします。

留学資料を無料でとりよせる

著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

» 栄 陽子留学研究所についてはこちら