学生ローンだけが残る? アメリカの「大学倒産」事情
「アメリカの専門学校に留学したい」という相談は少なくありません。
めざすは「葬式のプロ」!?
アメリカには「大学(College、University、Instituteなど)」と名がつくものだけで4,000校以上もあり、私たち日本人から見ると専門学校のようなところでも「大学」と呼ばれています。
料理、ホテル、ファッション専門の大学も少なくありません。変わったものでは葬祭学科というものがあります。
お葬式のプロになる課程です。
美容関係ではコミュニティ・カレッジ(公立の二年制大学)にあるくらいで、四大ではまず見つかりません。
こうした専門学校のような大学は、たいていは都会にあって、キャンパスらしいものはなく、1~3か月といったような短期のコースが多く、留学生のためのビザを発行できない場合もあります。
「営利の大学」と「非営利の大学」
最近はオンラインの大学も増えています。
これらオンラインの大学は、“for-profit”と呼ばれる「営利の大学」が多いのです。トランプ大統領も、for-profitの大学を経営していましたが、5年ほどでつぶれてしまいました。
じつは、このfor-profitの大学はつぶれてしまうことが多く、アメリカで大きな問題になっています。
アメリカの私立大学は、基本的に国や州から援助を受けていないため、学生からの授業料や寄付などで運営しています。
そのため、経営的には厳しいものがあります。寄付金を株式などで運用することもごく普通にやっていて、ハーバード大学などはたいへん大きな金額を投資しています。
学長が経営より教育にこだわりすぎると、小規模の大学などは、あわよくば閉学に追い込まれるなんてこともあり得ます。
とはいえ、for-profitではない、まぁちゃんとしたnon-profit(非営利)の大学は、卒業生から、日本では考えられないような大口の寄付があったり、別の大学と合併したりで生き残っていくものです。
For-profitの大学はそういうことはありませんので、即、倒産ということになります。
アメリカの大学の認可プロセス
さて日本では、「学校」というものは、専門学校であっても日本の文部科学省から認可を受けなければなりません。認可を受けるには、とても厳しい審査があります。
ところがアメリカでは、国が学校を認可するということはありません。したがって株式会社の学校すらあります。
そもそもアメリカは、国が成立する前からハーバード大学をはじめさまざまな学校がありました。
最初に合衆国として独立した13州からいまの50州になるまで300年以上かかっていて、州ごとに州法というものがありますので、日本のように国として統一するのがむずかしいのです。
では、国が大学を認可しないとなると、アメリカではどのようにして大学が「大学として」認められるのでしょうか。
これについては、以前に書きました(https://www.ryugaku.com/sakaecolumn/daigakuninka.html)ので、詳しくはその記事を参照していただくとして、要は、アメリカには6つの「認定協会(Accrediting Agency)」というものがあって、それぞれの協会がそれぞれの区域にある大学を審査・認定しています。
審査プロセス・基準ともにかなり厳しく、そもそも大学が創立されて10年以上経たないとまず審査対象になりません。また認定されても、10年ごとに審査が行われます。
認可されていなかった「トランプ大学」
審査の対象となるのはnon-profitの大学ばかりではありません。For-profitの大学も審査されます。
利益を追求しているから悪いというわけではなく、キャンパスの設備や、先生の質、授業のレベルなど、認定協会が決めた基準を満たしているかどうかが問われるのです。
For-profitで認可を受けている有名な大学には、ニューヨークにあるSchool of Visual ArtsやサンフランシスコのAcademy of Art Universityなどがあります。
最近の話題は、for-profitの大学がつぶれてしまい、学生ローンだけが残ったというケースが急増していて、そのローンを帳消しにするかどうかということです。
このローンを肩代わりするのは税金ということになるので、とても揉めています。
国が違えば大学のありかたも随分違いますね。
ちなみに、トランプさんの大学は認可されていませんでした。
この大学のことでは、訴訟問題にまで発展しましたが、まぁ、何でもありのトランプさんらしいですね。
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。