バークリーだけではない、音楽留学のさまざまな選択肢
「バークリーに留学したい」という人は相変わらずたくさんいます。
UCバークレー(カリフォルニア大学バークレー校)ではありません。
ボストンにあるBerklee College of Musicという大学です。
日本人に人気の「バークリー」
日本の有名なジャズミュージシャンが卒業したということもあって、昔から「クラシックではなくコンテンポラリー音楽をやるならバークリー」と思われていて、日本の一流音大を出て、ここにあらためて留学したいという人もけっこういます。
バークリーはれっきとした大学ですが、四年制大学の学位をとるコースのほかに、1年コースや2年コース、オンラインのコースなどもあります。
ボストンにビルがあって、大学らしいキャンパスもなく、専門学校のような感じですが、ほんの趣味で歌をやっている人から、日本の音大レベルの人まで、「バークリーがすべて」みたいな風潮があります。
入学はそんなにむずかしくありませんが、オーディションは必須です。
とはいえ日本の音大のように高い能力が要求されるわけではありません。
出願に先立ってサマースクール(夏期に開講される講座)に参加しておくと、様子もわかるのでいいと思います。
卒業までに4,000万円かかる!?
日本の専門学校とも提携していて、2年+2年で卒業できるシステムもあります。
かつては、日本人同士でバンドを組んでいる光景もよく見られましたが、いまは日本人学生の数もすっかり減りました。
なにしろ、学費+寮・食費が1年度65,000ドルもするからです。
日本の音大もそれなりに高く、また入学するまでにレッスン料などが何年も膨大にかかるようですが、それでも65,000ドル×4年はちょっと高すぎます。
1ドル=110円として年に715万円、ほかに楽器代、保険、交通費、さらにボストンという都会でのおこづかいも並み大抵ではありません。
もろもろ合わせると1年で1,000万、4年間で4,000万円くらいかかってしまいそうです。
日本は、1990年代に比べて各家庭の収入が減ってしまったうえに、税金や社会保険がとても高く、2,000万円くらいの年収があっても、税金で800万円くらいとられてしまうので、教育に回すお金がなかなか捻出できません。
そのうえ将来はさらに収入が減るかもしれず、また寿命が伸びて老後にたくさんのお金がかかります。
いくら親が高収入でも、バークリーの学費を支払うことはむずかしくなっているのです。
日本が経済的に元気だった時代は、当研究所からもリベラルアーツの小さな大学に入学して音楽の基礎をつくり、英語力も鍛えて、3年生でバークリーに編入する留学生もそれなりにいました。
しかしながら、この学費の高さです。
2年の在学すらもむずかしいというのが現状です。
バークリーに行けば音楽界で成功できるか
ところでジャズやポップやロックという分野に学歴が必要なのか、という疑問もあります。
「これだけ音楽の才能があるのだからバークリーで奨学金をもらえないか」という相談も受けますが、私にしたら、それだけ実力があるなら、さっさとデビューすればいいのではないかと思うのです。
バークリーを出たから売り出せる、人気が出るなんていうことはまったくありません。
バークリーに奨学金つきで入学し、卒業したという実績があれば、何かのときに役に立つのではないかと思いたくなる気持ちもわかりますが、プライベートレッスンの先生をする以外はあまり役に立たないと思います。
音楽の道で食べていくのはむずかしいのです。
実力だけでなく、縁とか運とか、いろいろなものが絡まり合って、ヒョイと花が咲くものです。
それだって長く続くかどうかわかりません。
「バークリーがすべて」なんてことはあり得ないのです。
音楽留学の選択肢は一つではない
アメリカでは、音大に限らずどの大学でも音楽を専攻できます。
18歳で初めてピアノを弾くような学生でも音楽を専攻できるのですが、バークリーのような音楽の専門大学は「ともかく音楽しかしたくない」学生ばかり。
なかなか個性の強い人が多いのです。
日本で大切に育てられて、ちょっと音楽が好き、くらいだと、英語のハンデもあってアメリカ人の個性にぶっ飛ばされて、いきおい日本人同士あるいは留学生同士でくっついてしまうという傾向があります。
アメリカでは、ごく普通の大学で、「ダブルメジャー」といって2つの専攻をとることができます。
音楽+コンピュータとか、音楽+ビジネスなど、組み合わせかたも自由です。
学ぶことはクラシックが中心ですが、聴音や音楽理論を学ぶのは悪いことではありません。
1つや2つはロックやポップの科目もあります。
それでもバークリーに行きたければ、サマーコースに参加してもいいでしょう。
またコンテンポラリー音楽の分野では、ジュリアード音楽院(The Juilliard School)やノーステキサス大学(University of North Texas)、マイアミ大学(University of Miami)なども有名です。
そうした大学でもサマーコースをとれます。
またアメリカの大学を卒業したらOPTといって1年間インターンができますから、実力とチャンスがあれば、ニューヨークのクラブで歌うこともできますよ。
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。