楽しければそれでいいじゃない! AI時代の留学論

AI(人工知能)ブームです。AIにとってかわられる仕事がいっぱいあるようです。

まぁ予想は予想であって、本当のところはどうなるかわかりませんが、産業革命が人間の肉体的苦痛をずいぶん解放したわけですから、AIが人間の脳をラクにしてくれるのであれば、AIが人間に代わってやってくれる仕事も多くなることでしょう。

AIとロボットが活躍する未来

銀行なんて、ほとんどの業務で従業員が必要なくなるらしいですよ。

融資の審査もAIがやってくれるので、「お願いだからあと1,000万円貸してください」なんていうセリフは、昔のドラマにしかなくなるわけです。

また、お金の借りかたにしても、クラウドファンディングとか、昔の頼母子講(たのもしこう:民間の貯蓄・融資グループ)みたいにグループでお金を集めて、グループ内の必要な人に貸すなんてことになるとか。

もともと顔の見える範囲で集まって、お金の貸し借りをしていたのが成長して、銀行になったわけですから、まぁ昔に戻るということでしょうか。

今度は顔が見えなくても志を同じくするとか、インターネットでつながるとか、場所が遠く離れた人でもつながれば貸し借りができるということですよね。

ロボットの進化もめざましく、アメリカのボストンダイナミクス社は、ついに3Dプリンタでロボットをつくったそうですから、そのうち、掃除ロボとか、秘書ロボなんてものを個人でオーダーできる時代になりそうです。

先生がいない学校

そういう時代には、まじめに一生懸命学ぶというのはダメで、自分のしたいようにするというのが1番いいようです。

日本でも、若くて成功している人たちは、「日本の学校教育はどうしようもない。何も考えないロボットのような人間をつくっている」と言っています。

ロボットは何も考えないし、夢や目的ももっていません。

これからの人間は、自分で考えて、ロボットにちゃんと命令を出したり、目的を与えたりする人でないといけないのです。

日本のように、みんなが同じところをめざして競い合うというのは意味がないということですね。

では、学校教育の主眼を「自分で主体的に考えること」に置くアメリカではどうかと思ったら、そのアメリカですら、学校には行かないで、すべて自分たちで創意工夫する組織をつくっているんです。

マサチューセッツ州にある町では、子どもたちがいっぱい集まって1日過ごすのですが、何かを教えるという先生はいません。

「いまの学校教育で教えている知識はすべてインターネットに載っているので、興味をもてば検索すればいいだけのことだ」というのが彼らの主張です。

字も教えないので、早い子だと4、5歳から、遅い子だと15歳くらいで自分で字を覚えようとするとかで、それで何の問題もないそうです。

そこに通っている子どもたちの親の多くは大学や学校の先生なんですって。

おもしろいですねぇ。

ベーシックインカムは何を変えるのか?

じゃあ自分で考えたくもないし、したいこともないし、人とつながりたくもない人はどうすればいいか、というと、だいたい「ベーシックインカム」がキーになると考えている人が多いんですね。

このベーシックインカム、アメリカではサンフランシスコで実験的に始めています。「毎月、国や州や市から、たとえば10万円あげるから、好きなように生きて」という方式です。

そんなふうにお金をあげても、働きたい・何かしたいという人がけっこう多いという結果が出ているようですよ。

昔から人間は、「適度なお金、適度な緊張、適度な尊敬がないと生きていてもおもしろくない」といわれます。

だれからも頼られない、相手にされない、いつもぬるま湯に浸かっているような生活だとイヤになるものです。

とはいえ、一定のお金をもらって、仮想空間でスリルを味わったり興奮したりすれば、前述の3つがそろわなくてもいいと思う人が増えるかもしれません。

留学そのものを思いっきり楽しむこと

要するに、これからの時代は、将来のために勉強したりいい学校に行ったりいい会社に入ったりしなくても、いま自分が楽しいと思えることに思い切り集中すれば道が開けるというのが、「AIで人間が幸福になれる」説の根拠になっているわけですが、日本人には簡単にいきませんね。

いまだに、毎日のカウンセリングでは、「留学したら就職がない」だとか、「有名大学に留学できなければ意味がない」だの、AIと何の関係もない話ばっかりですよ。

エキサイティングな人生を求めてアメリカの大学まで行ってみようなんて若者がもっと出てこないものでしょうかねぇ。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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