50年前に留学して、いまでも鮮明に覚えている4つのこと
前回のコラムで(※こんなに違う、日米の大学生の住宅事情)、私がアメリカに留学中に、寮の食事で太ったことを書いて、もう50年も前のさまざまなことを思い出しました。
アイモンダイエって何だ?
私が留学して、1番初めに頭に入った言葉が、「アイモンダイエ」というものです。
I’m on a diet. すなわち「ダイエット中」ということで、細い女の子たちはサラダばかり食べていました。
日本ではもともと生野菜は食べず、野菜はお味噌汁や煮物に入っていたり、ほうれん草のおひたしのように茹でたりするものでしたが、あの時代の大学寮のダイニングに、すでにサラダバーみたいなものがあったのです。
ケーキにアイスクリームをかけて食べるというのは、日本では定着しませんでしたが、ハンバーガーやピザ、チョコレートやナッツが付いたドーナツなどは、私が帰国した後にどんどん日本に入ってきました。
大学寮のバイキング形式の食堂も、いまや日本のホテルやレストランではごく当たり前になっています。
日本の大学の食堂では、きつねうどん(たしか50円でした)とかカレーライスとか、一品ずつ頼んで食べていた(デザートという概念もそんなにありませんでした)者にとっては、食べ放題・飲み放題(アルコールはありません)のバイキングスタイル、フルーツやデザートも好きなだけ、には本当に驚いたものです。
中でも、フロリダから24時間でミシガンに運んでくるオレンジジュース(濃縮したもの)にはとりこになりました。
日本では、高級ホテルやレストランにしかなかったものです。これが朝から飲み放題です。
私が太った原因の1つですが、その当時は気づきませんでした。
ゲイ差別反対の集会
英語にまったく自信がない私は、セントラルミシガン大学(Central Michigan University)の大学院に9月から入学する前に、ミシガン大学(University of Michigan)の英語講座を5月から受講しました。
I’m on a diet. はそこで聞いたものです。
Ann Arborという町ですが、ゲイ差別反対の大きな集会とデモが開かれていました。
日本では、ゲイなんて言葉すらあまり聞いたこともありません。
それがミシガンの町で、たくさんの人が、とても奇妙な格好をして練り歩いていたのです。
その光景は、いまも頭の片隅に残っています。
やっといま、LGBTという言葉で、日本でも一般に認知され、マスコミでも毎日のように報道されていますが、アメリカではすでに50年も前に行動されていたのです。
世界各国からの留学生たちとの出会い
留学中に、他国から来た留学生にも出会いました。
ギリシャなどヨーロッパ、ニカラグア、アルゼンチンやメキシコなどの中南米、
ソマリアなどアフリカ、インド、ベトナムや韓国などのアジア、そしてアラビア各国などからの留学生です。
あの当時(1970年代)は、イランはパーレビ国王はなやかりし時代で、イランからの留学生がとても目立っていました。
私が帰国後、世界の国についての報道を注意深く読むようになったのは、これだけたくさんの留学生に出会ったからです。
彼らの国が、その後さまざまに変化していった報道にも、喜びや悲しみを感じながら接しています。
あれだけきらびやかなイランが、いまや何か真っ暗な国です。
ベトナム戦争で突然親と連絡がとれなくなり、送金が途絶えた学生もいました。いまやベトナムは発展に次ぐ発展です。
それにしても、ベトナム戦争中にベトナム人が留学しているなんて、アメリカならではですよ。
いまだって、アメリカと揉めているあらゆる国から、やっぱり留学生や移民が来ています。
養子縁組に対する考えかた
もう1つ、私が留学中に強く印象に残ったことがあります。養子縁組です。
英語学校の先生で、独身の中年女性が、韓国人の男の子を養子にしていました。
本人はもちろん、周りもまったく普通に受け入れていました。
戦後すぐ、アメリカ軍人のファミリーが、自分の子どもが3人いても、日本人や韓国人の子どもを養子にもらっていくということがありましたが、家族の中に親の違う子がいても、何とも思っていません。
私の友人のアメリカ人は、子どもができないので養子をもらったら、奥さんに子どもができて、それでも2人の子どもを何の分け隔てもなく育て上げました。
世界の先進国のうち、人口が減らず今後も増えていくのはアメリカです。これは、移民を受け入れているだけでなく、このような養子に対する考えかた、ひいては子どもを育てることに対する考えかたが大きく影響していると思います。
子どもは育てるのであって、育てることに意味があり、血筋を守るなんてことにこだわっているわけではないのです。
日本の人口減も、血というものが大きく影響しています。万世一系の天皇家というのが、日本の象徴です。
しかしながら、その天皇家の行く末はあまりに危ういものです。これが日本国という真の姿を写しているわけです。
日本は、ハンバーガーもLGBTもアメリカから取り入れたのに、養子はダメでしたね。移民もダメだと言ってますよ。
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。