苦労したのは外国語としての「英語」でも授業のレベルでもなく…高殿 裕さんの大学留学体験談

高殿 裕

Beloit College(WI)在学中 物理学専攻

自信を持って言える「留学してよかった」

「何で留学するの?」とよく友達に聞かれます。自分でもはっきりとした答えはわかりません。でも今、留学させてもらってぼくは幸せ者だと感じています。留学してよかったとぼくは自信をもって言うことができます。


問題なしの理数系、宿題が膨大なESL

ぼくは日本の高校を卒業して、その年の夏からアメリカへ留学しています。まだ留学を始めて1年足らずですが、かなりこちらの生活にもなじんできています。自分が通っている大学は、ウィスコンシン州のBeloit Collegeといって、中部の北にあり寒いところです。リベラルアーツ・カレッジで1,000人くらいの小さな学校ですが、質の高い教育を受けることができると思います。ここに通っているアメリカ人の学生も、教育については納得しているような気がします。ただ逆に、先生一人あたりの学生の数が少なくて教授の目がよく届くため、ごまかしが利かず大変な勉強量になります。何クラス取るかとかどんな教科を取るかにもよりますが、最初のセメスター(学期)は、本当に大変な状況に陥りました。留学生は12単位以上取らなくてはならないという原則があります。最初は12単位でも英語の問題が深刻なので辛いというのに、ぼくは18単位取りました。履修した教科は基礎物理学、微積、ESL(English as a Second Language)、そしてFYI(First-Year Initiatives)という教科です。

ぼくは日本で大学受験を経験し、いくつかの大学にも受かっていましたので、正直に言うと、そこで学んだ教科は簡単でした。これは日本の受験勉強レベルの高さにも関係があるのだと思います。実際、ぼくは物理学を専攻しようと進路を決めていて、数学、英語、物理学はきっちり勉強していたので、極端な話、授業を聞いていなくてもそれぞれ1日1時間の勉強で物理学と数学は問題なかったです。英語がよく分からなくても、式を見れば何を言っているか想像がつくので比較的理解しやすかったです。

ESLは外国語としての英語なので授業は考慮されていて難しいことはなかったのですが、宿題の量はとうてい無視できるものとは言えず、何回か先生に期限延長を頼みに行くことがありました。週に1回ジャーナル(Paper=論文の、くだけた感じのもの)を2枚、リーディングと文法とどれも最低3時間はかかるものが週3回ですから、決して楽とは言えませんでした。しかし問題なのはFYIという教科だったのです。


アメリカならではの授業「FYI」に苦戦

FYIとは新入生が最初の学期に取らなくてはならない必修教科で、セミナー形式の授業でした。この教科はこの学校特有のもので、これからの授業への態度会得を目的としたようなものです。ほかの学校でも独自にこのような目的の授業があるようですが、互換性はないので編入の時に移行はできません。この授業こそがおそらく、アメリカの大学授業の真の姿だとぼくは推測します。

授業は2時間すべて論議(ディスカッション)でおしまい、黒板は使いませんので、ノートの取りようがありませんでした。当然学生がクラスで発言していることは、英語が聞き取れず全くわからないので、何が論議の中心かすらもわからないことが半分以上でした。そしてプレゼンテーション、グループプロジェクト、リーディング、ペーパー、リサーチとアメリカ形式が盛りだくさんでした。はっきり言ってもうだめかと思っていたのです。1日に8時間この授業のための勉強に費やしました。そのせいで睡眠時間は1日平均4時間になってしまい、週末にまとめて睡眠をとる形になりました。1日11時間から15時間、毎日勉強なんて今までにしたことがなかったですし、これからもそんな機会はないと思っています。ここまで忙しいとほかのことを考える暇もありません。ホームシックにかかる暇もなければ時には食事とシャワーの省略を余儀なくされたときもあります。

でもやっていることそのものはすごく簡単なはずなのです。少なくとも日本の高校レベルを勉強していればその復習みたいなものですから。でも英語ができないと自分が答えを知っていても発言することができず、苛立ちを覚えることもよくありました。


嵐のような4か月が過ぎて・・・

こんな嵐のような生活も4か月で無事終了しまして、今は12単位と最小限におさえています。今学期はかなり楽な生活が送れそうだと思っていたら、緊張感が足りなくなっていたのか基礎心理学の試験でDをいただいてしまい、教授と面談をしなくてはならないという事態になってしまいました。はっきり言って英語の問題はかなり長くつきまとうと思います。生活で使う英語を習得するのはすぐにできてしまっても、いろいろなところで「あぁ、これが日本語だったらなぁ」と思うことも多いのです。


留学の成否は心のもちかた次第

これだけの苦労をしてもやはり留学という経験はかけがえのないものです。両親には多額の授業料を出してもらって本当に感謝していますし、日本にいたら絶対経験できないようなことをさせてもらっているので自分の生活には満足です。ぼくは日本の大学に行っていないのでどちらがいいとは言えませんが、ぼくはこの生活の方が合っているのではないかと思います。確かにキャンパスの外には遊ぶところもないですし、アメリカ人とどう接していくかや、さらには、来た当初の苦労は半端ではないことも事実です。それを通してか、人間的には確実に大きくなることができると思います。あとは自分次第です。日本と違って、周りが決定権をもつことは少ないので、楽しい生活にするのも、つまらない生活にするのも、自分の心のもちかた次第です。これから留学する人には、ぜひ積極的な心をもってアメリカの地を踏んでほしいと思います。

7月13日に夏休みで帰国してきた高殿君が、研究所に遊びに来てくれました。
徳渕カウンセラー、横関カウンセラーと一緒に研究所の前で記念撮影。



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