社会人がめざすアメリカ留学

「アメリカに留学したい」という社会人は、けっこういるのです。

私の留学講演会でも、参加者の30%くらいが社会人です。

さまざまな社会人留学

最近の例をいくつか挙げましょう。

お店を親の代からやっていたが、世の中の変わりようが早く、もう上手くいきそうにないので、たたんで不動産も処分して留学にチャレンジ。

学歴が高卒なので、アメリカの大学に1年生として入学して、4年かけて次の商売のネタを考えよう、という人。

やはり商売をやっていて、お店をとりあえず人に貸して、学歴は四大卒だけどアメリカの大学に3年生として編入して、次の時代に備えよう、という人。

企業に入社して5~10年で、それなりにうまくいっていて、出世の道も開けているが、このままでいいのだろうかという危機感を抱いて、アメリカの大学院に留学しよう、という人。

ベンチャーをやっている人もけっこう相談に来るんです。まずまず成功している、悪いわけではない。

けれども、もう1歩踏み出して、アメリカに渡りたい。できれば向こうでビジネスを展開したいが、ビザがむずかしいらしい。

また、世界を見るにつけ、修士・博士なんてザラだとわかった(当研究所のカウンセラーもみんな修士号はもっていますからね)ので、アメリカの大学院にチャレンジしたい、といったケースです。

社会人留学の実現性

このように社会人の留学といっても、いろいろなケースがあるのですが、留学の実現性となると、現役の高校生や大学生に比べるとずっと低くなります。

転職の合間を縫って、ちょっと語学力をアップしようというような留学であればともかく、大学・大学院への留学となると、それなりの期間とお金がかかります。

「帰国してから仕事あるかしら」と不安にもなります。やっぱり、フィリピンへの語学留学1か月、のようなものが、社会人留学の大半になるのだと思います。

社会人がアメリカ留学を思い立つタイミング

そもそもいまの仕事に燃えていて、出世街道を駆け上っているような人がアメリカ留学を考えることはあまりありません。

配置換えだったり、左遷だったり、あるいは何か同じことの繰り返しで足踏み状態だったり、あるいは会社そのものが傾いたり、というときが、アメリカ留学を考える1つのタイミングです。

次いでリストラ、希望退職、停年といったときです。

当研究所から留学した最年長者は66歳ですが、そういえば最近、「停年を機に留学を」という人の相談がめっきり減りましたね。

やはり65歳まで働く、70歳まで働く、そうしなければ100歳までの老後資金が足らなくなる、という風潮が出回っているからでしょうか。

「短大卒なので、社内で四大卒と差をつけられてくやしい」という理由で、編入留学を希望する社会人もいましたが、そういうケースも最近はやっぱり減りました。

日本の短大そのものが少なくなったし、短大から四大に編入できる仕組みもできているようですから、その辺りが原因だと思われます。

MBA(経営学修士)をはじめ、大学院留学を希望する社会人はそれなりにいます。

国際関係やソーシャルワーク、心理学、教育学なども人気の分野です。建築やCity Planning(都市設計)、コンピュータサイエンスもよく相談を受ける分野です。

社会人留学のハードル

ところが日本人がアメリカの大学院をめざす場合、いろいろな問題が出てきます。

まず大学の成績です。

日本の大学できちんといい成績をとっている人がとても少ないのです。

めいっぱい科目を登録しておいて、出席せずにそのままほったらかしたり、試験のときだけつじつまを合わせたりする大学生がけっこういます。

アメリカの大学・大学院は成績がとても厳しく、大学院に進学するには大学のGPA(成績の平均値。4.0が最高点)は最低でも3.0(B平均)が必要です。

ですから、登録した科目が不向きだとなった場合は、すぐに「履修の取り消し」(Withdraw)をします。

大学によって、このWithdrawができるのは授業が始まって10日以内なんて規定がありますので、日本のように、ほったらかしたり授業に出なかったりなんてことをしたらたいへんなことで、1つ間違えば退学になってしまいます。

ともかく日本の大学の成績があまりよくない人が多いのです。

アメリカの大学院に、「さあどうだ!」と成績を提出できる人はそうそういません。

また、GMAT®とかGRE®という、アメリカの大学院に進学するためのテストがあるのですが、これらのテストでそれなりの結果を出すためには、英検の準1級くらいは欲しいところです。

推薦状は3通必要で、これまた、書いてくれる人を探すのがたいへん。

専攻によっては、大学でその分野の科目をいくつかとっておかなくてはならないといった条件があります。

心理学だと、心理学関連の科目を30単位くらいはとっておくのが望ましい、とかいろいろあって、そういった条件を満たすのに2年くらいの時間がかかるのです。

あの手・この手を教えるのがわが留学研究所が誇るカウンセリングですが、「エーッそんな手があるの?」というノウハウを駆使してもそれなりの時間がかかりますから、社会人には痛手です。

留学に「手遅れ」はない

社会人のアメリカ留学。人生100歳の時代ですから、30代・40代になってから新たなチャレンジをしても、決して遅すぎることはありません。

アメリカの大学院を足がかりに、次のステップを見つけようという人たち。世の中の変化に果敢に飛び込もうとする人たち、まだまだいるんですよー。

それがおもしろくて留学カウンセリングをやめられないんです。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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