「長生きの時代」の大学時代の過ごしかた

アメリカの大学が日本の大学と違うのは、なんといっても専攻を変えることができるという点です。

これは、「自分は何をすべきなのか」「何が好きなのか」「何を求めているのか」を、アメリカの大学生は常に考えなければならないということです。

日本の大学は、履修する科目も就活次第?

日本の大学生の場合、学部を決めて入学すると、大学のほうで、どのクラスをとればいいのか決めてくれるので、「自分が何を求めているのか」なんてことは、あまり考える必要がありません。

クラスがおもしろくないな、自分に向いていないな、と思っても、学部を変えることは無理な場合がほとんどです。

いやなクラスでも、とりあえず卒業に必要なのでとっておこうという感じで、もっとほかのことを学んでみたいとは、そもそも思わないのが圧倒的なのです。

だいたい日本の大学生は、就活のための時間が必要なので、大学からも就活の時間を確保するためのクラスのとりかたを指導されます。

2021年以降は「就活ルール」も変わって、一斉入社というのもなくなるようですが、逆に「早くから就活しなければならなくなり、学生たちはいま以上に勉強より就活に向かうのでは」とも言われています。

アメリカの大学は、専攻を変えるのも簡単

アメリカの大学の入学願書には、希望する専攻を選択する項目がありますが、この選択肢の1つに「専攻未定」というものがあります。

つまり、まだ何をやりたいか決まっていなくてOKなのです。

1年生のときに音楽専攻と決めていても、3年生でコンピュータ専攻に変更したりもできます。

各大学は「スクールカタログ」というものを発行していて、このカタログには「コンピュータを専攻するなら○○のクラスと××のクラスは必須で、コンピュータの分野から32単位取得する必要がある」など細かいことが指示されていますが、そのことを把握してさえいれば、専攻を変えるのは簡単です。

そもそも専攻といっても第一専攻と第二専攻があるので、音楽と物理学を両方専攻することもできます。

こうなるとかえって大変で、自分は本当に何が好きなのか、何に向いているのか、いつも考えざるを得ません。

アメリカでは、大学名よりも成績のほうが重要

「音楽を専攻したら就職先はないよ」なんてことはだれも言いません。

だいたいアメリカの大学生は、卒業するまで、あまり就職のことを考えていません。

大学側も、就活・就職をうるさく言いませんし、親も言いません。

卒業してしばらくしてから就職のことを考えようという学生はたくさんいます。

またアメリカの大学では、自分の勉強したいことを考えなければならないと同時に、成績をよくしておかなければなりません。

将来の就職のためにも、そうすることが必要です。

というのも、就職希望の会社に成績表を提出しなければならないからです。

成績が悪いと、いい就職はできません。日本人には信じがたいことです。

日本では大学の「名前」が重要なのですから。

日本の常識が世界すべての常識ではないのです。

キャリアアップしたければ大学院へ

また、アメリカでは、自分のキャリアを上げていくために大学院に行くこともめずらしくありません。

なお大学院に行くにあたっても、最も重要なのは大学の成績です。

どんな有名大学を出ていようと、四大卒ではペーペーのエンジニアです。

工場長になりたいと思ったら、30歳を過ぎたら大学院でMBAを取得しなければなりません。

アメリカの会社は、ペーペー募集、課長募集、工場長募集というのが一般的なので、大学の成績をよくする、仕事では実績を上げる、必要に応じて大学院に行く、というのが当たり前なのです。

これからの時代、新卒社員を育てるのは無理!

日本の名門、トヨタ自動車の社員の半分は、途中入社だそうです。

日本も、新卒社員の中から順番に出世していくという方式はむずかしくなりつつある、ということです。

AI化が進む世界では、あっという間に、いらなくなる知識や技術がどんどん出てくるでしょう。

そんな世界で、新卒の学生を大切に育てていくなんて、もはや無理なのです。

16~17歳でわけがわからず理系・文系に決めて、大学でも、自分が好きかどうか・向いているかどうかではなく、ともかく大学の言われるままにクラスをとって、1日も早く就職先を決めて、やれやれ一安心、なんてことでは済みません。

・大学時代にいい成績をとる
・自分が何に向いているか考える
・専攻を変えることも考える

こういったことは、変化が激しく、寿命が伸びて長く働かなければならない時代に、とても大切なのです。

世界の政治の激しい変化、テクノロジーの凄まじい発展・変化、これらすべてに目をつぶって、小さな日本で大学受験のために青春の時代を過ごす、こんな日本の若者や親を見て、本当に日本の将来が怖くてなりません。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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