何歳がベスト?「子どもを早く留学させたい」親の期待と思惑

なぜ親は子どもを留学させたがるのか?

子どもを何歳で留学させるか、というのはなかなかむずかしい問題です。

帰国子女のタレントなどが、外国人と同じようにペラペラ英語でしゃべっているのを見ると、1日も早く留学させなくては、と考えるのも無理はありません。

でも、彼らの中には、漢字が読めなかったり、敬語などがわからなかったりして、苦労している人もいるのです。

自分が英語の単語や構文を覚えるのに苦労したことがあって、おまけにいまでも英語は苦手という親御さんも多く、何とか子どもには苦労させないで英語力を身につけさせてやりたいと思うものです。

最近は、日本の将来が危ないという説に沿って、早くから子どもを外国に出そうという人もいます。

何しろ、少子化のスピードがあまりに早く、コロナ感染症のために2020年は85万人に満たないと聞きます。

どんどん人口が減り、空き家が増え(九州1つ分の面積に相当とか)、地震の上に地球温暖化で台風、洪水などの自然災害が多い日本の50年後は恐ろしいと思うようです。

中には、とても裕福で、資産も一緒に海外に移すという人もいますが、それはとても少数です。

また、親と子どもの二代にわたって遊んで暮らせるだけの資産があればいいですが、やはり彼の地で仕事をしなければなりません。

英語圏の国で日本人が仕事をしていくのは、それなりにキツいものがあります。

義務教育は日本で受けたほうがいい理由

私の経験から言うと、中学校を終えるまで、すなわち義務教育を終えるまでは、日本でキチンと教育を受けたほうがよいと思います。

何しろ日本語はとてもむずかしいのです。One, two, threeで済みません。

1枚、1個、1羽、1軒、ひーふーみー、数えればキリがありません。

九九なども、習う時期を逸したら、個人で習得するのはなかなかむずかしいと思います。

子どもへの過度の期待は禁物

もちろん、英語の塾に行くなどはまったくかまいませんが、あまり多くを期待しないことです。

いつの世も、親は子どもに多くを期待します。

私のようにはさせたくない、ということでしょうが、まぁだいたい親以上にはならないと思ったほうがいいと思います。

今の30代・40代のお母さんは、きっと小さいときにいろいろと習いごとをしたと思います。

でもほとんどの人は、その道のプロになっていません。

しかしながら、いろいろな経験をしておくのは悪いことではありません。

知らないよりは知っているほうがいいし、知っているからこそ好きとか嫌いとかも言えるわけです。

私も母の希望でたくさんのお稽古ごとをしました。

お茶やお花やバレエに日舞、たしかフィギュアスケートにも通っていたことがあるように思います。

いまやスケートはできない、踊りはできない、お茶もお花もキライ、でも、その世界のことを少し知っているので、その道の人に会ったり、小説の舞台で出てきたり、ニュースになったりしていると、ちょっと興味をもちます。

また、その世界独特の言葉もちょっぴり知っています。

ですから、本人が嫌がったり、あまり才能がないと思わない限り、英語のレッスンを受けるのはかまいません。

5歳の英語は、5歳なりの英語

この頃、小学生なのに英検2級をとった子どもを親御さんが連れてカウンセリングに見えます。

すごいなぁ、と感心してしまいます。

でも大切なのは、バランスよく成績がよいことです。

勉強もバランスよくするのが大切で、英語さえできれば、という考えはすべきではありません。

5歳の子どもがアメリカで1年暮らしたら、やはりアメリカの5歳の子どもの言葉しか覚えません。

そんなものは、日本の中学1年生が習う程度の英語です。

何語で子どもの頭を一人前にするのか、しっかり決めておかなければなりません。

世界は激動する。でもあせらずに

インターネットの発達で、ここ10年くらいの世の中の変わりようは、ちょっと怖いくらいです。

たしか10年ちょっと前までは、国際電話の料金もとても高かったものでした。

いまや顔も見れてすべてタダ。このスピードを考えると、今後10年、20年先の世界はどうなっているでしょう。

いまの小学生が、バリバリ働くようになる頃には、日本でオンラインで働いて、会社の本社はシンガポールで、中国資本で、年に数回、世界のあちこちで親睦を兼ねてミーティングをする、なんて働きかたもありですね。

もちろん、言葉はすべて英語です。

だから早く子どもに英語を、という気持ちはよくわかります。

でもあせらないで、冷静に冷静に。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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