大混乱のビザ申請。大丈夫? 秋からの留学

「ハイブリッド授業」って何だ?

アメリカに留学するためのビザが大混乱です。

ビザは領事に発給権限があるので、東京のアメリカ大使館領事部と大阪領事館、福岡領事館、沖縄領事館のいずれかに申請します。

沖縄は、すぐに面接のアポを入れてくれましたが、いざ面接してみると、I-20(入学許可証)の原本を持ってこないとダメ、ビザを発行できないという返事。

コロナ感染症の問題が起きてから、3月下旬からは、I-20はオンラインで大学から送ってもらって、それをプリントアウトして持って行って申請していいということになっているのです。

どうして沖縄はダメ? 領事は知らないの?

大阪の領事館も、スムーズに受け付けてくれましたが、面接で、I-20に「ハイブリッドで授業を実施する」というRemark(但し書き)がないとダメ、という返事。

迷走する留学生への対応

トランプ大統領が、「秋学期からの授業をオンラインのみで実施する場合、学生ビザは発行しない」という命令を出して、ハーバードとMITが、そろってアメリカ政府を告訴するという騒ぎになりました。

カリフォルニアなどいくつかの州も集まって政府を告訴する準備を始め、日本のマスコミでも大きく取り上げられました。

しばらくしてあまりに反対が強かったのか、トランプ大統領はこの命令を取り下げました(わずか10日間の出来事です)。

ビザ面接の日程もめちゃくちゃ

したがって、いまは、秋学期が全部オンラインだろうが対面だろうが、ハイブリッドと呼ばれる両方を取り入れたものだろうが、学生ビザには何の影響もありません。

それなのに領事は、「ハイブリッドで行うと書いていないとダメ」と言うのです。

東京は、7月の初め頃はスムーズに行ったのに、すぐ、面接の予約がメチャメチャになりました。

早く予約を入れた人のほうが面接日が遅かったり、I-20に書いてある入学日の後に面接日を指定してきたり、一体どうなってんの??

という有様です。

領事によっては、やはりハイブリッドと書いていないと指摘してくる人もいます。

14日間の隔離は? PCR検査は?

このままでは秋の学期に間に合わない人がたくさん出てきそうです。

多くのアメリカの大学が、各州の規定により、入国者を14日間、隔離しなければなりません。

したがって留学生たちは、授業が始まる日の14日前に到着しなければなりません。

大学が寮の一部を隔離用に用意してくれています。

到着したらPCR検査を受けて、また1週間後に、もう一度PCR検査をするそうです。

8月半ばから9月にかけて、アメリカ中の大学キャンパスが大騒ぎになりそうです。

都会にある大学は、全部オンラインの授業です。

オンラインの授業をするのは、学生を守るためではなくて、年齢の高い教授を守るためだと言っている人もいます。

若い学生はコロナ感染症にかかっても軽症か無症状なので、ほとんどの人は大したことはありませんが、老人はたちまち重症になってしまいます。

それにオンラインの授業がすべてうまくいくわけではありません。

実験などは、オンラインでするのはむずかしく、実験の多い分野の学生たちは学費を返せとか大学をやめるとか騒いでいます。

UCバークレーは、唾液で5分ほどでわかるPCR検査を開発中で、秋の学期から学生を対象として、キャンパス内で検査を行おうとしています(唾液による検査は前からありましたが、やっと日本が使い始めました)。

大統領よりも強い領事の権限

トランプ大統領の行動に対して、アメリカ中の大学関係者は怒っています。

腹が立つので、I-20にハイブリッドとかオンラインとか但し書きをする必要なんかないという大学もあります。

しかしながら、そんなことをしたら、世界中のアメリカ領事がビザをおろさないという騒ぎになりかねません。

そうするとアメリカの大学は、留学生を迎えられないということになってしまいます。

大学の先生たちは、領事の判断についてそれほど理解していません。

昔から、「領事の権限は大統領より重い」と言われています。

ある領事が、朝に夫婦喧嘩をしてムシャクシャするから、今日の申請者のビザはみんな却下、とやっても、何も言えないのです。

どんなに理不尽でも、こちらは何の権利もありません。

各国にいる日本の領事だって同じです。いま日本は、アメリカからの入国はすべて拒否しています。

日本の永住権をもっている人もダメです。

中国国籍で日本生まれで、日本の永住権をもっていて、アメリカに留学中で、親のいる日本に夏に帰国したいと思っても、入国させてくれないのです。

みなさん、こんなことが起きているのを知ってました?

まぁ、ともかく今年の秋学期は大変なことになりそうです。

私たち栄 陽子留学研究所のカウンセラーたちも、日夜、新たな情報に振り回されながら、それでもみんな、明るくがんばっています。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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