英語学校に入ったら、いつまでも大学生になれない!? 留学のよくある失敗談

相変わらず、「カリフォルニアのコミュニティ・カレッジ(二年制の公立大学)に留学したものの、どうにもならない、お金がかかりすぎる」という相談が多いのです。

当研究所の東京のオフィスに親御さんが来るだけでなく、ボストンのオフィスにも本人からの泣きが入ります。

いつまでも大学生になれない?

最近多いのは、「日本の高校を卒業してすぐ、4月にカリフォルニアの英語学校に行った。9月から指定されたコミュニティ・カレッジに入学するはずが、コミュニティ・カレッジに着いたら英語のテストがあって、要求されるスコアが出せずに、また英語学校で英語を勉強するようになった」という相談です。

いつになったら本当の大学生になれるのかわからず、また、英語のクラスは日本人ばかりで(英語学校にアメリカ人はいません)、一向に英語が上達しない。

おまけにホームステイ先から学校まで1時間半もかかり、バスが1時間に1本しかなくてとても困る。

車を買いたいが英語学校ですでにお金が随分かかっていて、「車を買うお金は出せない」と親から言われている云々といった話です。

意外! アメリカの交通の便の悪さ

日本人は渡米して初めて、アメリカでは車以外の交通手段が発達していないことを知ります。

ロサンゼルス辺りの都会でも、車を持っていないと、この上なく不便です。

アメリカの大学生は、普通は学生寮に住みます。

アメリカの大学は「寮生活」が基本なのです。

学生寮のないコミュニティ・カレッジは、職業訓練所に近いものです。

仕事に就くために必要な知識やスキルを身につけるために、いくつかの授業をとっている「パートタイム」といわれる学生が多く学んでいます。

「子どもが18歳になったら家を出て寮生活をし、親離れをする」というのがアメリカです。

社会人として独り立ちする前に大学で寮生活をして、いろいろな人間関係を学ぶのです。自分で考えて決断し、自分の力で生きていく練習をする場が大学です。

ハーバード大学など名門の私立大学は、卒業までの4年間、寮生活を送るのが原則です。

州立大学の名門UCLAでも、1年生のほぼすべてが寮生活を送っています。

3年生くらいからアパートなどを選ぶ学生がいますが、それでも全学年の約半数が寮で暮らしています。

ホームステイが好きな日本人

でも、日本人はなぜかホームステイが大好きなのです。宣伝などで刷り込まれているのでしょう。

いまだに、とても温かいアメリカのファミリーが自分を守ってくれると思っているようです。

アメリカの家庭でも、お母さんは仕事をしています。とても他人の子の面倒を見る暇はありません。

一方、日本の昔の下宿のように、「空き部屋があるので貸したい」という家はアメリカにもあります。

ただ最近は民泊が盛んで、交通の便のよい場所にある家は、ホームステイを受け入れるより民泊で貸すほうが収入がいいのです。

なので、ホームステイを受け入れる家は不便な場所に限られつつあります。

できないからコミュニティ・カレッジ?

また日本の高校の先生の中には、生徒から留学の相談を受けると、「何が目的かも、何を勉強したいのかもわからず、成績も悪いし英語力も低いから、コミュニティ・カレッジくらいしか入れないぞ」と言う人もいます。

「コミュニティ・カレッジは、アメリカのできない子が行くので、お前もできないから、そこがいいだろう」という理屈になるようです。

まぁ、できないから、できない子が集まる学校に行くというのはわからないわけではありません。

でも、英語もわからない、外国での生活にも慣れていないのであれば、先生や学生が親切で優しい大学のほうがいいのです。

寮制の大学だからこそ、留学生でもついていける

寮制の大学では、アメリカ人の学生でもアルバイトをしていません。

親から学資を出してもらうか、奨学金やローンで学費をまかなっています。

したがって1日24時間、学生として寮生活を送っています。

同じキャンパスで暮らしていますので、下手な英語を話す留学生の相手になってくれたり、宿題を手伝ってくれたりします。

もともとアメリカにはチューター(補講)という制度があり、よくできる学生がチューターをしてくれます。

留学生にはとても助かります。

また、小規模の大学ほど、クラスも少人数で、先生も学生も優しいという特徴があります。

「レベルを下げればついていける」のではなくて、周りの人が親切にしてくれるところほど、ついていけるのです。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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