迷走する日本の入試改革と、振り回される高校生たち

日本の大学入試で民間の英語テストを使用することが突然、廃止になって大騒ぎです。

リーディングの隣でスピーキング?

なぜ文部科学省が民間のテストを採用することになったのか、その経緯は忘れてしまいましたが(たしか四技能を測るため、ということだったと思いますが)、そもそもお役人及びその関係者は、TOEFL®テストなんて受けた経験があるのかと不思議でなりませんでした。

カンニングを防ぐために質問がオンラインで個別の受験者に流れてくるので、同室にいる受験者が全員違う問題を解くことになります。

すなわち、Aさんはリーディング、隣のBさんはスピーキングといった具合です。

Bさんはコンピュータに向かって話しています。

みんな耳に大きなヘッドフォンをつけて、コンピュータに向かって、クリックして解答していくのですが、4時間という長丁場で、教室の雰囲気が普通のテストとは違います。

だいたい普通のテストはみんなが同じ質問を解きます。

会場の音も、みんなに同じものが流れます。

受験料が最も高い民間テストは?

初めてTOEFL®テストを受けると、たいていの人はビックリしたり会場の雰囲気に圧倒されたりして、スコアはズタズタになります。

また、テストを申し込むのも英語の細かい指示がむずかしく、身分証明書にパスポートなどが必要で、費用もドル建てのためクレジットカードが必要です。

ちょっと高校生にはキツイものがあります。

TOEFL®テストを受ける人は何となく少なくなってきているようでしたが、今年になって受ける人が増えてきたので、やはり民間テスト採用の影響かと、当研究所の中でウワサしていたところでした。

英検とIELTS™は、同じ方式のテストで、スピーキングも先生とお話しするスタイルをとっているので、一般にはなじみやすいものです。

テスト費用もそれぞれ違います。TOEFL®テストが一番高いのです。

新しい英語テスト、GTEC(ジーテック)

TOEFL®テスト、IELTS™、TOEIC®、英検などは、非公式ですが、相互の点数を互換できる尺度があります。

当方のカウンセリングのときに、どのスコアを持ってきても、だいたいこのくらいの英語力というのがわかりますので、問題ありません。

ところが、数年前からGTEC(ベネッセコーポレーションが主催)というテストのスコアを持ってくる人が多くなりました。

これはサッパリわかりません。また、うまく互換ができません。

それでもかなり持ってくる人が多いので、こちらでいろいろ推測して、こんなもんかなと思ったり、最近では本腰を入れて、いったいIELTS™の何点にあたるのか調べなければと考えたりしていました。

今回の件で、そもそも文部科学省が民間テストを使うのはベネッセとのなれ合いだという意見をけっこう目にしました。

初めて、なるほどと思いました。GTECというのも文科省が採用した民間試験の1つだったのですね。

なぜこんなテストが出てきたのか不思議だったのですが、なるほどテスト業界もビジネスですから、新しいものが出てきても当然のことですが、まぁビジネスのために高校生たちが振り回されるのも困った話ですね。

もちろんベネッセと文科省のなれ合いという話に何の証拠もありませんので、あくまでウワサなのですが……。

英語ができる人は、どのテストでも結果を出せる

いま、アメリカ留学のために受ける英語テストは、TOEFL®テストよりもIELTS™に傾きつつあります。

IELTS™は、もともと英国留学のために使われていたものですが、最近ではアメリカの大学でも採用しているので、TOEFL®テストよりも受けるのに親しみやすい(英検などと同じ方式なので)こともあって、IELTS™を受ける人が多くなりました。

基本的には、IELTS™のスコアが高い人は他のテストを受けてもやはりスコアが高いのは当たり前です。よく「留学」となると突然TOEFL®テストを教える学校に行ってワーワーやっていますが、英検の級数が上がるとTOEFL®テストのスコアも上がります。

前述のように、TOEFL®テストの方式が他のテストとあまりに違うため何回か受けなければなりませんが、ちゃんと上がってきます。

ひとこと言いたい、英語テストの乱立に対して

何年後かに、民間テストを採用するかどうか、費用の問題や受験会場の地域格差など、さまざまに検討することになっているようですが、この件に深くかかわっている人たちは、一度、自分で受けてみるべきです。

多くの人はセンター試験(旧・共通一次)や英検は受けた経験があっても、他のテストはよくわからないはずです。

まず申込方法からして、どのように違うのか、実際にやってみなければわかりません。

少なくとも私などは、いまのTOEFL®テストは、まず申し込むときからしてギブアップしてしまいます。

経験はとても重要なので、「高校生のために」云々などと口先で言っていないで、自分たちで経験してみるべきだと、みなさん思いませんか?

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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