神は存在するのか!? アメリカの大学の哲学の授業
こんにちは! 留学生ブログライターのあんです! 9日間のながーいサンクスギビングブレイク(感謝祭休暇)が終わり、今学期の授業も残すところあと9日となりました(2018年11月時点)。
振り返ってみると、今学期は「哲学」のクラスに1番苦戦しました。そこで今回は、アメリカの大学で学ぶ哲学の課程と、私がいま履修中のCritical Thinkingというクラスについてお話ししたいと思います!
授業の様子
教授がホワイトボードにびっしり書き込みます
もくじ
1.アメリカの大学で学ぶ哲学とは?
1-1.哲学はどのような学生に向いているのか
1-2.アメリカの大学の哲学のクラスとは?
2.大苦戦! Critical Thinkingってどんなクラス?
2-1.Critical Thinkingの授業内容
2-2.成績はどうつくのか?
2-3.レポートの課題
3.アメリカの大学で学ぶ哲学のおもしろさ
4.まとめ
1.アメリカの大学で学ぶ哲学とは?
哲学は英語でPhilosophyといい、私の大学では哲学を専攻することも可能です。大学がどのような学生を哲学専攻として好ましいと思っているのか、どのようなクラスがあるのか、見ていきましょう!
1-1.哲学はどのような学生に向いているのか
私の大学の哲学課では、哲学に向いている学生とは、
- 真実、知識、現実、そして道徳的善について私たちは何を信じるのか
- どのような理由でそれを信じるべきか
- これらの疑問に対する回答への道筋を論理はどれほど手助けしてくれるのか
- 論理の本質について
といった論点について取り組みたい、ディスカッションしたいという学生だと説明しています。
もちろん、哲学を専攻しなくても、一般教養科目や自由選択科目として哲学の科目を履修することは可能です。実際に私は心理学を専攻していますが、今学期は哲学を履修していますし、初級レベルクラスは哲学を専攻していない学生のほうが多いくらいです。
1-2.アメリカの大学の哲学のクラスとは?
私の大学でどんな哲学のクラスが開かれているのか紹介したいと思います。
まずは1年生や、哲学専攻以外の学生でも履修できるクラス。
INTRODUCTION TO PHILOSOPHY
名前の通りイントロダクション(入門)のクラス。哲学を勉強する上でメインとなるテーマや問題を幅広くたくさん学び、学生が哲学の全体像をつかめるようになることをめざします。
CRITICAL THINKING
現在、私が履修しているクラスです。この記事の後半に詳しく説明します。
CONTEMPORARY MORAL ISSUES
中絶や安楽死、死刑や貧困など、現代社会での道徳的問題について学ぶクラスです。
ENVIROMENTAL ETHICS
汚染、地球温暖化、人口爆発、動物の権利、将来の世代への責任などといった環境問題を倫理的な観点から学ぶクラス。
次に2年生より上、または哲学専攻の学生が学ぶクラスを紹介します。
ANCIENT PHILOSPLHY
前ソクラテスから始まり、プラトン、アリストテレスといった古代ギリシア哲学をメインに学びます。歴史的な観点からだけでなく、「現実とは」「幸福の本質とは」「倫理は神の存在によるのか」といったトピックにも取り組みます。
ZOMBIES AND CONSCIOUSNESS
私たち人間には五感がある。ではコンピュータには意識があるのか? コンピュータは人格権をもつのか? 脳や身体として機能するが意識のないゾンビのような形而上のマシーンはありうるのか? といったトピックを切り口として、「意識とは物質的なものなのか」「肉体と魂」などの大きな課題に挑みます。
ASIAN PHILOPOSHY
ヒンドゥー、仏教、道教といったアジアの哲学的宗教について、また、これらが普及した歴史的背景やしきたりについて、西洋の哲学と比較しながら学びます(私は来学期このクラス履修します!)。
2.大苦戦! Critical Thinkingってどんなクラス?
課題のリーディングにメモ!
それでは、今学期に私が履修しているCritical Thinkingのクラスについて紹介しましょう。日本語では「批判的思考」と訳されます。最近、耳にする人も増えてきたかなとも思います。
2-1.Critical Thinkingの授業内容
授業では、基本的に前の授業で配布されたリーディングの解説が行われます。
アメリカ人の学生は、
そんなことまで聞く!?
さっきそれっぽいこと教授説明したよね!?
あんまりそれ関係なくない!?
ってことまでバンバン質問するので、ついついわかった気になって流してしまう癖のある私にとって、初めは衝撃的でした。
2-2.成績はどうつくのか?
このクラスは4つのエッセー(レポート)と2つのテストをベースに成績がつけられます。
とくにライティングの強化を図るクラスなので、エッセーの比重が大きいです(成績の約半分)。
テストはTake-home Examと呼ばれるもので、教室で受けるのではなく、各自が部屋に持ち帰って教科書やノートを見ながら解くテストです。
内容としては、哲学・論理に関する文章が正しいかどうか答えるものや、文章を分解して論理的な道筋を立て、ダイアグラムを描くものなどです。
2-3.レポートの課題
今学期はこれまで、“Seven Reasons Why a Scientist Believes in God”(Cressy Morrison著)、“Ethical Relativism”(Walter Stace著)、“The Meaning of Life”(Thomas Nagel著)の3つを読み、要約してまとめ、彼らの主張は論理的に道筋が通っているか、自分の考えを書きました。
「僕はこの仕事をウン10年やってるから、ライティングセンターの学生(作文をチェックしてくれる学生)よりちゃんとしたアドバイスをあげられる」という教授の方針のもと、クラスのルールとして、ライティングセンターに行くことや友だちにチェックしてもらうことは禁止されています。また、授業でのリーディングと、授業中にとったノート以外を、エッセーの材料として使うのも許可されません。
科目名がCritical Thinkingであるように、リサーチ能力ではなく、いかに論理的に自分でアイデアを導き出せるかというところに焦点が置かれています。
「このクラスを履修した学生のライティング力が他の学生に比べて格段に高い。どんな指導をしているのか?」と他の学科の教授から聞かれるほど、基礎的なところから論理的な考えかたを教わることができ、何度も何度も書き直しさせられます(笑)。
エッセーは、だいたい1週間から1週間半の期限が与えられ、その期限までは何度でも教授にドラフト(下書き)を送ってよいことになっています。私は、毎回5〜10回はドラフトのやりとりを教授としました。毎回びっしりコメントを添えて返してくれるし、文法のチェックもしてくれるので本当にありがたいです。このやりとりを18人の学生全員としていると思うと、教授の苦労は計り知れません……。
授業中は、ダイアグラムを使って著者のアイデアをこと細かく説明してくれますが、やはり哲学は理解するのに時間がかかり、日本語で読んでも意味がわからないだろうというものばかりです。
アメリカ人の学生ですら、「まったく理解できない!」と手こずる問題に取り組むわけですから、わからない・理解できないことは、恥ずかしがらず、正直に教授に伝えるようにしています。
3.アメリカの大学で学ぶ哲学のおもしろさ
私のノート
後から見直してもゴチャゴチャしてわかりにくい(笑)
哲学は、本当にむずかしい学問です。日常では使わないような単語も出てきますし、それを日本語で調べても日本語の意味や漢字さえ見たことなかったりして、英語で理解したほうが早いこともあります。
それでも、「神は存在するのか」「生きる意味」など、だれもが生きているうちに1度はふと考えるような疑問を考え、意見を共有し、文字に書き起こし、まとめ、徹底的に向き合う機会を与えてくれたこの授業は気に入っています。
たとえば「神は存在するか」の議論では、現実的な観点から少し離れて「もしこういう想像をしてみたら神はいないって証明できるのではないか」という、想像力を働かせてエッセーを書くことが求められたので、かなり苦労しましたが、おもしろかったです!
4.まとめ
キャンパスにも冬がやってきました
期末のレポートは“The Meaning of Life”についてです。締め切りはあと1週間後! 今学期はこのクラスのレポートのおかげで、毎晩2時頃までパソコンとノートと向き合う日が続きましたが、これで最後だと思うとがんばれそうです(笑)。
また、確実に書く力がついた気がします。
哲学に興味のある人、論理的に物事を考える力を身につけたい人、道徳・倫理に携わる職をめざしている人、ぜひ留学して哲学のクラスに挑戦してみてください!
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