トランプさんのつぶやきがマスコミに勝つのはなぜか?
トランプ大統領が誕生
いよいよトランプさんのアメリカが始まりましたね。何もかもてんやわんやの大騒ぎで、世の中どうなるのかさっぱりわかりません。
ここで振り返ると、前大統領オバマさんが在任中のスピーチはいずれも優しいスピーチでしたね。心のこもった、人間愛に満ちたスピーチばかりでした。
オバマさんのスピーチがあまりにきれいなので、白人のおじさん達に反動の気持ちが湧いたのかもしれません。
トランプさんのスピーチは激しくてえげつないけれど、「けっこうおもしろい」と思う人もたくさんいるんじゃないでしょうか?
その発言が及ぼす影響はさておき、「次は何を言い出すかしら?」と、ちょっと意地悪な期待をしてみたりします。
アメリカで学ぶスピーチコミュニケーション
さて、アメリカには小学校からスピーチのクラスがあって、子どもたちは小さい頃からスピーチ術を身につけていきます。
大学にはコミュニケーション学科があり、マスコミや映像などと共に、スピーチコミュニケーションという分野があります。
大学院になると、コミュニケーション学は、映像分野と新聞・雑誌分野とに分かれていき、スピーチは、スピーチ&インターパーソナル・コミュニケーションという分野になります。
スピーチは、プレゼンテーションや講演会など大勢の前でしゃべる技術。そしてインターパーソナル・コミュニケーションとは個人間での話術ということです。
これらは、日本ではあまり知られていない分野ですね。
肌の色から文化、宗教、考え方など全て違う人々で構成されるアメリカ社会だからこそ、相手のことを理解し、自分のことを理解してもらえるようにしっかり会話術を習うのだと思います。
日本人は英会話も会話も苦手なの理由
一方、日本では弁論部(※こういう部自体も珍しいものですが)にでも入らない限り、スピーチのやりかたなんて学校で習わないですよね。
日本人は英会話が下手だと言われますが、よく考えたら日本語でしゃべっていても会話が下手な人が多いじゃありませんか。
言語そのものよりも、コミュニケーションのほうに問題があるような気がします。
一般的に、日本でコミュニケーション能力が高い人というのは、人とうまくやっていける人、みんなと仲良くできる人を指しています。
そして就活の際には、よくコミュニケーション能力が話題となるようです。
要は、採用する側に立てば「会社の中で上司や同僚とうまくやれそうな人」とか、「営業がうまそうな人」を求めるのは当然ですよね。
でも、そういった人物になることや、そういった人物だと一時的にでもみせかけることはなかなか難しいもの。
だって学校できちんと学ぶ機会すらないのですから。
だから、みんな自己流で必死に空気を読んで、なんとかこなしていくしかなくなるのでしょう。
社会に出たら真っ先に必要となるコミュニケーション力を学校が教えないのは本当におかしな話ですよね。
マスコミがソーシャルメディアに追いつけない
話は戻りますが、トランプさんのスピーチは、人をあおるのが超うまいでしょう。
あれはビジネスの駆け引きをやっているようなものです。かなり強引な形ですが。
そんな彼をマスコミが必死で叩こうとしていますが、そう上手くはいきません。
記者や編集者は取材をし、文章を構成し、ストーリーだててきます。
どんなに仕事が早くても情報の裏どりや取材、文書作成に数時間は必要ですし、マスコミは各社のスタイルやスポンサーのことまで考えて記事を作らなければいけませんよね。
そんなことをやって時間が経っているうちに、トランプさんはどんどんつぶやいて、それをフォローする人たちがさらに拡散するものですから、マスコミが追いつけない状況になっているわけです。
まぁそもそも、コミュニケーション能力が高い米国人の間で一流のビジネスマンだった彼が、話術や交渉、自分の見せ方が下手なわけないですよね。
SNS時代のスピーチコミュニケーション
マスコミの取材を受けたことのある人は、書かれたことが事実と違うパターンが多いので、みんなマスコミ嫌いになっていきます。
例えば、1時間取材を受けても実際に使われるのは1分、2分の世界。
それもこちらの発言の一部を極端に切り取って、あたかも別の意図でそういう発言をしているように仕立てるときもあるので注意が必要です。
そういう意味でもトランプさんは非常に強いですね。
だって一言二言のつぶやきで全てひっくり返しちゃいますもの。マスコミなんかに全然負けていません。
こういう端的で力強いコミュニケーション力が次世代のやり方なのかもしれません。
ツイッターのつぶやきも、音声入力に対応するようになってきていますし、これからもこういったSNSはどんどん進化して手軽に、そして一般的になっていきます。
アメリカの大学でも、スピーチコミュニケーションの授業内容は、ソーシャルメディアの使いかたを含めて教えいくようになっていますね。
日本では、一体いつコミュニケーションの授業が一般的になるのやら。
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。