新型コロナがアメリカで猛威を振るう中、留学生たちはいま?
前回、カンザス州の小さな大学が、「新型コロナウィルスで騒がしくなっているから、留学生をみんな集めて、今後どうするか話し合うよ。授業をオンラインにするかもしれないけれど、寮はちゃんと開けておくから、何なら夏休みも開けようかと思っている」というのんきなEメールを出してきていたので、その話を書いたら、次の日にもうアメリカでコロナ感染症が爆発的に増えてしまって、私の書いたものが何だかちぐはぐで、続きをすぐ書くか、違うものを書くか、と言っているうちに、世界中がメチャクチャになってきて、とうとう1回分の原稿が飛んでしまいました。
寮を出て行け!?
ニューヨークやシアトルは、新聞でも報じられている通り、外出禁止令まで出ています。
ボストンも大変な騒ぎで、とくに天下のハーバードがパニックになって、教室も寮も閉鎖するのでみんな出て行けみたいなことになって、とてもリーダーを養成する大学とは思えない有様でした。
アメリカでは高校を卒業すると、完全に親から独立して生計を立てる若者もいて、奨学金や教育ローンに大学構内でのアルバイトなどで生活している人たちもいるのです。
ハーバードでも20%くらいの学生が大学から全額の奨学金をもらって、日常のお小遣いや教科書代などをアルバイトでまかなっています。
寮を出て行けと言われたら、そういう人たちは、生活する場所を失うのです。
泣く泣くスーツケースに荷物を詰める学生の姿が、ニュースで世界に発信されました。
コロナ・パニックの温度差
それに比べて当研究所から留学している人の多くが学んでいる小さな町の小さな大学は、「寮は開けているから心配しないで」とか、「4月13日からはまた普通の授業になるよ」とか、「別に帰国しなくてもいいよ」とか言っていて、優しいというのか、のんきというのか、何しろ日本の25倍もある大きな国ですから、ニュースの伝わりかたも地域によってまったく違うのです。
オハイオ州は、クリーブランドという大きな町でコロナ感染症のパニックが起き、いち早く州知事が州全体の学校に対して、授業をオンラインに切り替えるよう指示を出しました。
当研究所ではそれを受けて、在米中の数百人の留学生に、オンライン授業に切り替わったら、日本でも受けられるので帰ってくるように呼びかけました。
それに応じて帰ってきた人たちもいましたが、
「帰らなきゃいけないんですか」
「大学が、帰らないで寮で勉強しろと言ってます」
「日本でコロナ感染症が蔓延しているので、日本に帰ったら、次にアメリカに入国できなくなるかもしれないから残れ、と言われています」
など、まぁさまざまな、のんきで危機感のまったくない連絡が来るのです。
幸いなことにだれも感染していないので(いまのところ)少しは安心ですが、とうとう、アメリカから帰国したら14日間の隔離処置が要請されるなんてことになってしまいました。
コロナに負けない若さ
まぁたしかに、いまの状況では、どこにいるのが安全なのかまったくわからないし、それにいつも当研究所の留学生には「自分で考えて行動しなさい」と言っているので、こちらも強制はできません。
おまけにGoogleで共有されている全米の大学情報を見ても、4月13日ごろから授業を再開すると言っている大学がたくさんあります。
若い人は、感染しても重症にならないというデータがあるので、大丈夫と思っている人もたくさんいるのです。
でもそういうことも裏返せば、若い人のエネルギーの強さですよね。
いずれにしてもだれもパニックにならず、冷静に(のんきに)対処してくれているので、英語でI’m proud of you.と言いたいところです。
コロナが突きつける人類の課題
今回の騒ぎはどこまで続くのかわかりませんが、そもそもWHOのおじさんが怪しいではありませんか。
顔からして怪しいので、あの人の言うことはだれも信じないでしょう。
したがってWHOは、ずいぶんその権威を落としたと思います。
製薬会社も、薬の数がすごく大きくないと儲からないので、はじめは静観でした。
ここに来て、ベンチャーも含めてスワと動き出した感があります。世界のリーダーも、経済政策にばかり言及しています。
日本のリーダーも経済と面子ですか。何か、みんなどこかおかしいですよね。
私の夫はもともと獣医なので、どんなに新しい薬ができても、またそれを上回るウィルスが出てくるのが自然界というもんだ、なんて常々言っていますが、地球温暖化といい、今回のウィルスといい、私たちは「人間とは何なんだ、何をしたいんだ」と突きつけられているような気がします。
ハーバードの件に戻りますが、当研究所の関係者は博士課程に2人いるのみで、2人とも大人ですから問題はないと思います。
また、他のハーバードの学生たちも、アメリカの民間の人たちがやっぱり強くて、あっという間にボランティアが集まって、部屋を提供したり何だかんだで、ちゃんと助けています。
ここのところあまり楽しい話もないので、ちょっと期待できるようなニュースをいくつか紹介しておきましょう。
【臨床試験中の新型コロナワクチンは早ければ今秋にも提供か】
【米国のCDCが同国向けに新型コロナの自己チェックボット「Clara」をローンチ】
【コロナ治療で「神からの贈り物」とトランプ氏、医師ら慎重の抗マラリア薬】
https://www.afpbb.com/articles/-/3274967
【15分で終わる新型コロナ家庭用テストをScanwellが開発、FDAの承認待ち】
【Googleが米国向け新型コロナ情報ページ新設、他地域にも拡大へ】
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。