インターナショナル・スクールの流行に思う日本人の英語コンプレックス
生徒は日本人だけ、でも「インターナショナル」
インターナショナル・スクール流行りです。
何だかあちこちにどんどんできている気がします。
アメリカ系・イギリス系・カナダ系のみならず、インド系のインターナショナル・スクールもあって、日本人がけっこう入っているようです。なかなかおもしろいですね。
なかには名前はインターナショナル・スクールなのに、生徒はみんな日本人なんていう学校もあります。
また、株式会社で、ちゃんとした学校組織になっていないものもあります。
いまは過渡期で、そのうち少しずつ淘汰されていくのかもしれませんね。
トレンドは、シンガポールへの母子留学
海外のインターナショナル・スクールをめざす人もいます。
マレーシアやシンガポールが、日本人の受け入れ先としてはポピュラーです。
アメリカの小・中学校へ入学するのはビザの問題などでむずかしく(アメリカの公立校は親の駐在などの理由がなければ、そもそも受け入れてくれません)、また物価も学費も高いためあまり例がありません。
アジアはビザも取りやすく、また学費も欧米と比べて安くつきます。
アジアの学校も、日本からたくさん人を呼び込もうとけっこう宣伝しています。
母子ともどもシンガポールに行って、小学生からインターナショナル・スクールに入学させるなんて、ちょっとしたブームです。
学費は年に200万円くらいかかりますが、それでも欧米よりは安く、またアジアなので、どこか親しみやすいということなのでしょう。
シンガポールは、お金持ちの人が、日本の税金があまりに高いため、節税のために移住する国としても有名です。
世界が小さくなって、いろいろな人がいろいろなところへ行くことができるようになりました。
さらにインターネットでいつでもどこでもつながる世の中です。いい時代になったものです。
インターナショナル・スクールへの留学は「英語」のため
さて、日本のお父さんお母さん(とくにお母さん)たちが子どもをインターナショナル・スクールに行かせる最も大きな理由は、「英語力をつけさせる」ことです。
小さいときから英語を身につけさせて将来は困らないように、というわけです。
こういうお母さんは、きっと、自分自身が英語で困った経験があるんでしょうね。
シンガポールの英語は「シングリッシュ」と呼ばれています。独特のなまりがあります。
アメリカ英語かイギリス英語か、はたまたオーストラリア英語かという議論は、まだときどき耳にします。
でもシングリッシュの議論はあまり聞きません。
見直したい、日本の豊かな風土
ところで、私たち日本人の独特の感性をはぐくんでいるのが、日本の四季です。
春夏秋冬、季節ごとの天気の移り変わりや、四季折々の野菜や果物、魚介類、そして自然の景色などが、日本人の感性をとても豊かにしてくれています。
脳の発達にも大きな影響を与えていると思います。
和歌や俳句なども、気候がいつも一定の場所では、なかなか生まれないものです。
私は子どもも孫も公立の保育園に通わせましたが、みんなよく園から出て、公園に行き、さまざまな木々や草花に親しむ機会を与えられました。
ランチやおやつにも、四季折々の野菜や果物を献立にとりいれてくれます。和風、洋風、中華風、韓国風、インド風などなど、世界のあらゆる味も楽しめます。
私がアメリカの大学院に留学していたときのことですが、あるアメリカ人の友人のランチはいつもハムとチーズのサンドイッチでした。
日本のお母さんたちの手のこんだお弁当はやりすぎだと思いますが、保育園のランチは本当に日本の季節や食の豊かさを感じるものです。
英語の試験、やめてみたら?
そんなすばらしい風土を捨てて、たかが英語のためにシンガポールに行くなんて、はっきりいってあまりにもバカげています。
小さい子どもには、英語以外にもっと大切なものがあります。
英語は大きくなってからでも大丈夫ですが、日本のこの環境に囲まれて、おいしいバランスのとれた、見た目にも楽しい食事をできることは、本当に本当に、世界のなかでもとてもラッキーなことなのです。
もちろん、英語はとても大切です。
帰国子女なんかが英語を流暢にしゃべっているとかっこいいと思いますよね。
でも、もし日本で受験や入社のときに「英語を試験しない」となったら(こんなに英語をとことん試験する国なんてありませんよ)、きっとシンガポールやマレーシアのインターナショナル・スクールを考える人は減るんでしょうね。
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。