アメリカの大学の入試業務。世界中から優秀な学生を集めるために

アメリカの大学のAdmissions Office

コロナの影響でしばらくキチンと開催していませんでしたが、久しぶりにアメリカの大学のAdmissions Officeの担当官が東京にやってきて、対面で面接をして、数日のうちに決定を出してくれる「出張入試」というものを実施しました。

6校の大学が来日してくれて、あと12校の大学がオンラインで参加してくれました。

アメリカの大学にはAdmissions Officeと呼ばれる、入学審査を司る専門のオフィスがあり、小さな大学でも10人くらい、大きい大学ですと40人くらいのスタッフが在籍しています。

彼らは、このオフィス専属のスタッフです。教授と兼務なんていうことはありません。

アメリカは「入学試験」というものがなく、書類審査なので、このような専属のスタッフが書類を吟味し、場合によっては面接をしながら、入学の決定をします。

自分の大学の価値をちょっとでも高めてくれそうな学生を集めること、そして多様性に富んだ学生層を築くことが重要とされています。

奨学金の額を決定するのも彼らの仕事です。

Admissions Officeのスタッフは、アメリカ各地の高校を訪ねたり、卒業生に人を集めてもらったりして、自分の大学を売り込みに行きます。

また、アメリカの共通試験(SAT®︎やACT)のスコアを見て、この学生はいいんではないかと思うと、「うちの大学に来ないか、あなたになら○○ドルの奨学金が出せるよ」などといったメールを打ったりします。

もちろん、そうしたからといって必ず入学が許可されるわけではありませんが、少しでもたくさんの人に自分の大学をアピールすることがとても大切なのです。

海外でのリクルーティングも盛ん

多様性が大切なアメリカの大学では、全米各地はもちろん、海外の学生を入学させることにも熱心です。

海外へリクルートに出かけるスタッフもいます。大学によっては海外専門のスタッフを抱えています。

コロナの前は、ワンサと中国へ出かけて行っていました。

何しろ巨大市場ですし、アメリカに行きたいと考えている学生はいっぱいいました。

トランプ前大統領が「中国人学生はアメリカの大学院や研究室で学んだことをみんな盗んで中国に持って行っている」と言って中国を嫌いました。

オバマさんの時代、中国は発展を遂げて、アメリカにいる中国人の学者や学生に「帰国すればよい待遇を与える」と言ってどんどん呼び戻し、深圳という町はそういった人たちであっという間に世界トップクラスのハイテクの町になりました。

トランプ前大統領の影響と、コロナの元凶が中国にあると信じているいまのアメリカでは、中国人学生へのビザが厳しく、また、中国でも習主席がアメリカに行くなとか言っているようで、中国の巨大マーケットが冷え込んでしまいました。

世界を飛び回る大学スタッフたち

今年は、Admissions Officeのスタッフも中国に行く人は少なくなっていますが、訪問する国があまりにも広がっているので驚きました。

ベトナムあたりは、まあね、と思うものの、ネパールのカトマンズからエジプトまで、もう世界一周の旅です。

SNSのおかげで世界中の人がいろいろな情報を得られるようになり、また、共通言語として英語がさらに広まっています。

ヒマラヤの奥地の人にだってアメリカの大学の情報は届くのです。

アメリカの大学はますます、世界の隅々まで出かけて行って、優秀でおもしろい学生を見つけて獲得していくことと思われます。

オンライン化が進む入学審査

Admissions Officeのスタッフはみんなタフですね。

外国人学生専門のスタッフは、1年のうち半分は世界をグルグル回っています。

もう何でもオンラインでできるので、大学には年に2回くらいしか行かず、自分の気に入った国に住んでいるという人もいます。

今回の出張入試でも、書類はほとんどオンラインになりました。

もともとアメリカでは、1,000校以上の大学が使用している「コモン・アプリケーション」(共通願書)というものがあって、これ1通で、オンラインで何校にでも出願できます。

成績表や推薦状、エッセーなどもスキャンして保存できます。

コロナ前までは、すべてペーパーで、1人ひとりの学生のファイルが重くて、持ち歩きに大変でした。

いまや、パソコン1台でOKです。

これからAIがどんどん加速度的に発展していくなかで、アメリカの教育業界の事務処理の仕方が大きく変わり、ある意味、生産性が高まります。

日本の受験はどうでしょう。

相変わらず「○月○日の消印まで有効」ってやっているんでしょうね。

先進国の中でAIの活用が遅れている日本は、なかなか生産性が上がりません。

これからの時代、固定電話より先に携帯電話が広まった発展途上国のように、どこの国がどのような発展をするか、いままでの歴史通りにいかない可能性があります。

それでも日本の若者は、安全でおいしくて、みんな一緒であればいい、ぬるま湯的日本が大好きで、外国に出ようとはしません。どうする日本!!


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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