「卒業がむずかしい」アメリカの大学。ハーバード大の卒業率は?

ルームメイトが退学になった!

アメリカの大学は卒業がむずかしい、ということを、日本の人たちはあまり具体的にわかっていないと思います。

私の息子が9月にアメリカの大学に入学して、冬休みに帰国したとき、「自分のルームメイトがあまり勉強しない」という話を私にしました。

私や当研究所のカウンセラーが、よい成績をとらなければならないことを口を酸っぱくして言っていたのに、「ルームメイトは勉強しないし、ときどきタクシーを呼んで町まで遊びに行く。自分を勉強させるために脅したの?」みたいなことを言ったことがあります。

1月早々にアメリカの大学に帰って息子から電話があり、「大変、大変。ルームメイトが退学になった。明日、お父さんが荷物を取りに来るって。本当に退学になるんだ!」と興奮していました。

それから息子はずいぶん勉強に身を入れたので、ルームメイトには申し訳ありませんが、息子にはよかったわけです。

奨学金の額も成績次第?

アメリカでは、将来のことを考えている学生たちや、奨学金をもらっている学生たちは、成績をたいへん気にしていて、いつもよい成績をとることに一生懸命です。

アメリカの大学は、2学期続けて70点平均を割ると基本的に退学です。また、成績が悪いと奨学金も止められます。

スポーツ選手として試合に出ることもできず、練習もできません。

就職や大学院進学のときも、成績がとても大きな要素になります。

大学院への進学は、最低限B平均以上が必要ですが、現実には限りなくオールAに近くなければなりません。

就職のときも、履歴書にGPA(成績の平均値。4.0が最高点)を書かなくてはなりません。

アメリカはレベルの高い専門的なことは大学院で学びます。

医学や法学などは大学院からしか学ぶことはできません。

大学でよい成績をとっていなければ、医学や法学を学ぶ機会は失われます。

大規模大学では、日本の大きな大学と同じように、1クラスが100人・200人規模になります。

ただアメリカの大学はディスカッションがあるので、大学院生の助手が30人くらいずつに学生を分けて、ディスカッションをさせ成績をつけます。

悪い成績がつくと将来にかかわるので、学生が助手に文句を言うなんてこともあります。

スポーツでいかに活躍していても、成績が悪いと試合に出られないので、コーチや監督は何人もチューターを用意して、花形選手に必死に勉強させます。

一流企業に就職するのにGPA3.5以下だと、ちょっと履歴書に書きづらいと思います。

大学の名前を考慮に入れないわけではありませんが、ハーバード大卒でGPA2.5なんて、ちょっとおかしくない?って思われます。

田舎の小さな大学でもGPAが4.0だと大いに気に入られますし、名門の大学院に進学する際にも、とても有効です。

名門大の卒業率とコミカレの卒業率

アメリカの大学は単位制ですので、必ずしも4年で卒業するとは限りません。

最近はアメリカの大学の学費があまりにも高いので、3年で卒業しようなんてことがちょっとしたブームになっています。

アメリカの各大学は「卒業率」というデータを公表していますが、これは4年ではなく、入学して6年以内の卒業率になっています。

アメリカの学生たちは、1年外国に行ったり、専攻を何回も変えて時間をかけたり、1年間休んだり(その間は学費を支払う必要はありません)、まぁいろいろあるわけです。

ハーバード大学の卒業率は96%です。やっぱりすごいですねー。

UCLAは91%、UC Davisは85%です。

日本人に人気のコミュニティ・カレッジ、サンタモニカ・カレッジの卒業率は7.1%です(3年以内)。

コミュニティ・カレッジを日本の短大だと信じている人が多いようですが、基本的には職業訓練所のようなものです。

四年制大学の学費が高いので、州内の人には学費が安いコミュニティ・カレッジで単位を稼いでから四年制大学に進むという人もいますが。

ほかにも、日本人がよく知っている大学の卒業率を見てみましょう。

コロンビア大学                96%
マサチューセッツ工科大学(MIT)        93%
ニューヨーク大学(NYU)            85%
ボストン大学(BU)                87%
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校        66%
カリフォルニア州立大学ノースリッジ校        50%
ニューヨーク市立大学クイーンズ・カレッジ    60%
オレゴン大学(University of Oregon)        72%
オレゴン州立大学(Oregon State University)    63%
ワシントン大学                84%

アメリカでは、何をするにも大学生である限り、勉強することがとても大切です。

また、ディスカッションやプレゼンテーションが多いので、つねに自分で意見を言えるように、頭を働かせていなければなりません。

入学しさえすればいい、という日本の大学とはまるで違う世界なのです。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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