留学のデメリットを心配する君へ。まず行動してごらんなさい

アメリカの小学校の授業をオンラインで観覧

アメリカの小学校で学んでいる私の孫は発達障害児です。

そのことに気づいた我が家では、嫁が発達障害児の教育について勉強したほうがよいということになり、この分野が一番進んでいるアメリカの大学院に入学しました。

Special Educationと呼ばれる分野で、大学院レベルにしかありません。

嫁はフランス語学科出身で、教育学についての知識がないため、2年ほど放送大学で教育学の授業をとり、2人の子どもをもったこともあって、たいへん興味を抱いたようです。

孫は日本では特別支援学級というクラスに入学していたのですが、アメリカの小学校にはそういうものがありません。

普通のクラスに、発達障害児も、身体に障害をもつ児童も入っています。

一足先に渡米した嫁は、アメリカの小学校に「英語はまったくわからない、発達障害児だ」と伝えると、No problem. という返事でした。

また入学後には、孫のために特別編成チームが作られ、心理学者やカウンセラーや発達障害の専門家などが集まって、どのようなカリキュラムを孫のために用意するか、作戦会議をしてくれました。公立ですからすべて無料です。

いまは本当に便利で、あらゆる写真やビデオがこちらまで送られてきて、孫の特別授業(1対1)のビデオも、学校から嫁を通して送られてきます。

まぁ、ともかくいつも楽しそうにしている孫です。

みんな1人ひとり違う

つい先日、私も後で(あっ、余計なこと聞いた!)と思ったのですが、嫁に、「孫は他の2年生の子と比べて、どのくらい遅れてるの」とついついオンラインで聞いてしまいました。

次の日、嫁が先生に聞いたところ、「みんな1人ひとり違うから」という返事でした。

そうなんです。

そういう返事になることはわかっていたのに、つい聞いてしまったのです。

反省、反省。

前の学期(今年の1月から6月)は、コロナ感染症の影響で週に1度、オンラインの授業があったのですが、その様子もこちらにすべて送ってくれていました。

児童たちは家から授業を受けているのですが、親はみんな仕事に行ったり家の用事をしたりしていて、だれ1人オンラインには登場しません。

そのため児童ではなく天井が写っていたり、カメラに向かってベロベロバーばかりしている子がいたり、まぁどうなるのっていうくらい混沌としています。

先生は平気で「ジョン、顔が見えないよ」とか、うちの孫は日本から来ているから「『おはよう』と言うんだよ」とか喋って、授業を進めていきます。

教材はちょっとゲームのようで、なかなかしっかりしたものが用意されていました。

留学のメリット・デメリットは何ですか?

さて、東京のある中学生のクラスが、「留学についてオンラインでお話ししたい(授業の一環)」と言ってきて、30分ほどお話ししました。

中学生ですから小学生とは比べものになりませんが、ともかくピチッと統一がとれていて、始まりと終わりに「礼」があって、アメリカの学校とはまるで雰囲気が違います。

また、質問も、留学のメリット・デメリットのことでした。

日本の会社に入社する時期が合わないとか、学年が1年遅れるとか、たしかにそんな話もよく聞きますが、それこそ日本特有のものでしょう。

デメリットなんてないのよ。

人間は行動したら、どんな成功した行動でも後悔はあるの。でも行動しなかった後悔はもっと大きい。

「した後悔は1、しなかった後悔は3」と言うの。と、ちょっとむずかしい話をしてしまいました。

これだけ規律正しく同じ行動をして、中学生でもう、何か特別な行動をすることにメリット・デメリットを考えるか。

この中にうちの孫はとうてい入れないなと思ったことでした。

バーモント州の小さな町で

孫が発達障害だとわかったときに、よくよく考えてみるとその父親である私の息子と、その父親である私の夫も発達障害だと思い当たりました。

夫にもちょっと信じられないようなことが多々あったのです。

それでも、育ちが違うからねぇー、とか自分で勝手に納得していて、気がつきませんでした。

孫が保育園の最後のお遊戯を、やっぱりやらなくて、嫁が「最後もダメだったねぇー」と話していると、夫が「お前はエライ。わしは、高校のときフォークダンスが嫌いで発表会の日は休んだ。お前は保育園に行くだけエライ」とか言っているので、みんなでやっぱりおじいさんの遺伝だわ、と大笑いしたものです。

アメリカでは生まれてすぐから、いろいろ調べて、なるべく早い段階で訓練しようというシステムになっています。

ちゃんと訓練すれば、何の問題もないそうで、訓練ができるカウンセラーもたくさんいます。

嫁のクラスには、普通の先生もたくさん学びに来ています。

どの学級にもいろいろな子どもがいるからです。バーモント州の小さな町で、塾などはありません。

受験なんて言葉もまったく聞こえてきません。

平和ですよ。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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