受験に失敗したから留学? それでイイじゃない!

新年度を目前とした留学相談の傾向

3月になると、新年度が始まる前に留学を含めた進路の相談をしたいという人がたくさん来ます。 中には、日本の大学受験に失敗したという人もいます。

最近は、さすがに大学すべて落ちたという人は少なく、すべり止めしか受からなかったのだけど、どうも納得いかないといった人のほうが一般的です。

もともと日本の大学に入学してから留学しようと考えていたので、それならいっそのこと、最初から留学しようと思うがどうだろう、という相談もあります。

親子の留学に対する思いの違い

大抵の場合は親子で相談に来られますが、なにしろ、ちょっとした悲劇の後だけに、親子の間に微妙な温度差があります。

例えば、本人はやる気満々だけど、親の方は「逃げなんじゃないの?」 と思っていたり、金銭的負担が大変だという理由で、心から留学に賛同しないケースがあります。

たしかにアメリカの大学の学費は年々高騰していますし、1ドル120円を乗り越えそうですから、たいへんな金銭的負担です。

日本の大学からの交換留学であれば、あまりお金はかかりません。それに、『どうしてやる気をもっと早く(※すなわち日本の大学受験のときに)出せなかったわけ? 』という気持ちもあります。

「アメリカの大学に放り込めば・・・」という期待

逆に親御さんのほうが「グズグズしてないでサッサと留学したら?」と言うこともあります。

とくに体の大きな男の子の場合、先が決まらないままに家でゴロゴロして予備校にダラダラ通うなんて、親からすればそれだけでも精神的負担です。

思い切ってアメリカの大学に入れて、現地の学生寮に放り込んだら、本人も少しは目が覚めて真剣に勉強してくれるだろう、4年も留学すればなんとか英語だけでも身につくだろうと信じたいわけです。

ところがこういう場合に、子どものほうがグズグズしていることが多いのです。

青春の一場面である受験

英語もできないのにアメリカの大学で勉強するなんて怖くてできない、みんなと違う道に行くなんて想像することができない、そもそも勉強して合格するはずだったのになんだか運が悪くて落っこちた、なんで俺がこんな目に遭わなきゃならないんだ、とふてくされている子さえいます。

まさに、青春の辛い場面の真っただ中です。

多くの人は、日本の大学受験に失敗したら、もう人生に先がないというくらい深刻に悩みがちです。

なにせ、周り全員がそういう価値観ですから無理もないと思います。

18歳の勝ち負けで人生が決まるわけない

でも、長い目で見たら、本当にたいしたことのない出来事なのです。

人間の平均年齢が100歳になるとか、あと20年もすれば150歳まで生きられるとか言われている時代です。いまの若い人は、少なくとも100歳以上まで生きる可能性がとても高いのですから、18歳で人生のすべてが決まってしまうなんてありません。

よく勝ち組・負け組なんていうのも聞きますが、18歳で勝ち組だからといって、何の保証にもなりません。

だいたい70歳くらいになって周りを見れば、みんな定年で、長い老後の過ごしかたに迷っていて、振り返れば一流大学でも二流大学でも同じようなサラリーマン生活だったと思うような人ばかりです。

受験失敗を留学のチャンスと捉え直そう

長い人生、どの人にも何かのキッカケで、『えいっ!』と火の中に飛び込むようなときがあります。

みんなと同じような人生ではなく、もっと深くおもしろい生きかたをしてみたいと思ったら、そういうときを見定めて決行しなければなりません。

本来、勉強したり本を読んだり人の話を聞いたりするのは、自分ならではの楽しい人生を送る方法を知るためのものです。

受験に失敗したときが、その人にとって、大海に飛び込むチャンスかもしれません。頭の中を180度切りかえて、挫折をものともせず、それを乗り越えて、最後に笑ってやろうじゃないかと決心できるかどうか、です。

受験勉強に真剣に取り組めば、負けたとしても、いさぎよしとして開き直れるかもしれません。

アメリカの大学でアメリカ人の学生と一緒に生活し、すべてを英語で勉強するのは大変なことです。言葉も通じなくて恥のかきっぱなしになり、頭の中はパニックになります。

でも、なにかに失敗したからこそ、自分を究極まで追い込めるということもできるのです。

人生をエンジョイした多くの人たちは、自分が大きな方向転換をするとき・重大な決断や行動を起こすときの「今でしょう!!」というときを、本能的にキャッチしていると思われます。



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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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