アメリカのトップ大学に生徒を送り込む、中国の高校の「留学戦略」

カリフォルニアの大学と中国の高校が密約?

カリフォルニア大学アーバイン校およびリバーサイド校と、中国のハイスクールとの関係が、いまちょっとした注目を集めています。

中国にあるペガサス・カリフォルニア・スクール(Pegasus California School)という学校から、アーバインとリバーサイドの2校に優先的に入学できるというシステムがつくられているというのです。

アーバイン校では、ペガサスの生徒のためのサマースクールが行われています。

そこでは、大学出願に有利になるような、いろいろなことが教えられます。

また早くから入学希望者の名前が両校に伝えられて、生徒の成績や英語力の伸びかたを観察し、かつ出願期限が過ぎても入学審査をしてくれるということです。

カリフォルニア大学(University of California)の出願期限は全米でも早く、11月です。

それまでにSAT®やTOEFL®スコアが間に合わない生徒もいるでしょうから、待ってくれるというわけです。

アメリカのトップ大学へ「必ず」入学できます

この2つの大学とペガサスとの関係が、Inside Higher Ed(メディア会社)に記事にされ、カリフォルニア大学側は、そんなことはしていないと反論しています。

サマースクールを設けていたことは事実だが、それはどこに対しても要請があれば開設するもので、大学入学とは何の関係もないと言っています。

まぁ、日本の高校や大学も、アメリカのいろいろな大学でサマースクールを開校してもらっているでしょうから、その通りだと思います。

アメリカの大学では、教室を貸したり英語の集中講座を開いたりしてお金を儲けるのは、ごく一般的なことです。

ペガサス・カリフォルニア・スクールは、すべての卒業生がアメリカのトップ100大学のいずれかに入学することを、両親に書面で確約しているということです。

中国は一人っ子の教育に熱心で、大変なお金をかけます。

また、契約というのも大好きで、この学校で勉強すればアメリカのトップ大学に入学できると期待をこめて契約し、高い学費を支払っているのだと思います。

親だって本当は心の中でかなり疑っていると思いますが、それでも子ども可愛さにお金を出すのです。

どうやら真相は、UCの学長室に勤めていたことのある、ある職員がアーバイン校とペガサスの両方で働いて、両者をとりもち、早くから生徒のリストをアーバイン校のスタッフに提供していたようです。

この人物は、この方法によってペガサスでは質の高い生徒を養成し(「UCに入れるからもっと勉強しろ」とでも言うのでしょうか)、大学側は質の高い生徒を求めているのだから、よいではないかというようなことを言っています。

もちろんUC側は、サマープログラム以外はすべて否定しています。

中国における「アメリカ留学」の考えかた

アメリカ側も、中国ではエージェントやリクルーターがすごく活躍(暗躍?)していることをよく知っています。

中国では、留学はエージェントを通してするものだと考えられています。

また今回のペガサスのような、アメリカの大学に行かせるためのインターナショナルスクールも盛んで、猛勉強させています。

ともかくトップスクールに行かせることが大切なのです。

一方で、日本のエージェントはみんなコミュニティ・カレッジ(公立の二年制大学)に留学生を送り込みます。

TOEFL®テストやIELTS™の指導をする学校も、コミュニティ・カレッジに留学生を紹介しています。

これは他の各国からアメリカへ留学する方法とかなり違います。

日本以外の国では、基本的にアメリカへの留学は四年制大学か大学院、あとは語学留学です。

中国人にコミュニティ・カレッジはあまり理解されていませんし、またホームステイもそれほどポピュラーなものではありません。

「留学といえばホームステイ」の誤解

戦勝国アメリカが、戦争に負けた日本の若者にアメリカを紹介し、民主主義を知らせるためにAFSというホームステイ・プログラムをつくりました。

1ドル360円の時代はアメリカ留学といえば、このホームステイかフルブライト奨学金をもらって大学院に留学するくらいしかできませんでした。

そのため日本人はすっかりホームステイ好きになって、アメリカの大学教育は本来は寮生活が基本になっていることを今でも知らない人が多いのです。

もともとのAFSのホームステイ先は、もちろん選ばれたアメリカの家庭です。

しかし、いまではたくさんの人がアメリカにでかけることができるようになり、また、アメリカも女性の社会進出が進み、もう昔のようなホームステイを期待することができず、部屋を貸してくれるだけという、いわば日本の昔の下宿になりつつあったのですが、コロナ感染症のことで、これからどうなることやら。

日本の多くの留学エージェントは、曲がり角に来ているようです。

 

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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